現役証券アナリストの佐々木達也さんが、株式市場で注目度が高い銘柄の強みや業績、将来性を解説する本連載。第90回は、東京電力系列の大手電気工事会社で、電力や情報通信、空調などの設備の設計・施工やメンテナンスを手がける関電工(1942)をご紹介します。

  • 関電工はインフラ整備や建築設備で確固たる地位。情報通信部門は今後の伸びを期待
  • 主要資格の保有数は業界トップ。人材育成と省人化で生産性の向上に取り組む
  • 株価は中長期の上昇トレンドが続く。割高感はなく、米国の関税の影響も限定的

関電工(1942)はどんな会社?

関電工は東京電力系列の大手電気工事会社です。空調や情報通信設備、電力設備などの設計、施工、メンテナンス、リニューアルまでを一貫して請け負うエンジニアリング事業を展開しています。

部門別では工場や商業施設、環境設備向けの「屋内線・環境設備工事部門」の売上高の比率が多く、約6割を占めています。次いで、家庭や店舗向けの配電線、工場・発電所内の電気設備の「電力設備部門」が約3割となっています。「情報通信部門」は残りの1割と現状の規模は小さいものの、LANネットワーク、光ファイバーケーブル網の整備や携帯電話基地局、CATV放送設備・伝送路といった今後の伸びが期待できる事業内容です。

アート投資を資産形成に!

同社は終戦直後の1944年9月に複数の電気工事会社の統合で「関東電気工事株式会社」として設立されました。戦後の国鉄や日本電信電話公社などの事業を請け負い、インフラ整備や建築設備の分野で確固たる地位を築くとともに技術力を活かして、戦後の日本の復興にも大きく貢献しました。 首都圏を中心に全国にネットワークを広げ、東京スカイツリー、羽田空港、東京ドームなど日本を代表する建築物・施設で多くの施工実績があります。

電気工事
関電工は電力インフラの構築・保守など、社会インフラを支えるさまざまな事業を行っている(写真はイメージです)

技術を持った多くの人材による施工能力が強み

関電工の強みは、技術を持った多くの人材による業界トップクラスの施工能力が強みです。グループ人材の電気主任技術者や土木施工管理技士などの主要資格の保有数は2023年3月末時点で業界トップです。

さらに世の中で人材不足が続くなか、SNSなどを活用して多様な人材を採用し、専門性、組織力を備えた人材を育てるための研修やサポートを充実させています。同時に現場管理システムの開発やロボット技術の活用による現場の省人化にも取り組み、生産性の最大化を進めています。人工知能(AI)を活用した設計・積算の自動化、安全リスクの提言などの最適化も進めています。

関電工(1942)の業績や株価は?

関電工の今期2026年3月期決算は売上高が前期比5%増の7030億円、営業利益が8%増の630億円と、ともに過去最高を見込んでいます。足元では民間の工場向け、官公庁工事などの需要が旺盛です。EV(電気自動車)充電設備や風力・太陽光など再生エネルギー向け電力インフラの受注も伸びています。

5月9日の終値は2918.5円で投資単位は100株単位となり、最低投資金額は約30万円、予想配当利回りは3.1%です。株主優待は実施していません。

【図表】関電工の株価(2022年10月7日~2025年5月9日、週足)
関電工の株価(2022年10月7日~2025年5月9日、週足)

足元の好調な需要を受け、同社は2027年3月期までの現行の中期計画の業績目標を上方修正しました。新たに27年3月期に売上高は7160億円、営業利益は670億円を見込んでいます。利益に占める配当の割合を示す配当性向も「段階的に40%まで引き上げ」の目標を達成したことから「40%程度を維持」としています。

株価は中長期の上昇トレンドが長い期間続いています。4月からの米国の関税政策を巡る相場下落からもいち早く株価は出直りをみせ、4月28日に上場来高値2994円まで値上がりしました。全体の約3割を占める東京電力グループからの受注は安定的に推移しており、その他7割のグループ外からの受注も良好です。

株価は上昇傾向にありますが、利益に対する株価の割安さを示す予想株価収益率(PER)は13倍、純資産に対する株価の割合の株価純資産倍率(PBR)は1.6倍と過去に比べて上昇しましたが、市場平均などと比べると割高さは感じられません。足元の日本株市場は建設や電気設備工事、ゲームといった米国の関税政策の影響を受けにくい好業績銘柄が上昇傾向にあり、引き続きの株価上昇に期待しています。