どんな場面でも常に高いリターンを上げられる金融商品はありません。どんな金融商品にも必ず「得意な局面」と「苦手な局面」があります。現役証券アナリストの佐々木達也さんが、今人気の金融商品や注目セクターの「とくい」と「にがて」を徹底分析する連載。第3回は、高市政権の誕生をきっかけに5万円の大台を突破した「日経平均株価」を見ていきます。
- 日経平均株価は、TOPIXと比べて半導体株などの値がさ株の影響を受けやすい
- 日経平均株価に投資する主な方法は投資信託とETF。レバレッジ型商品などもある
- 半導体株の上昇局面に強く、円高・株安に弱い。米国株式との比較では割安度に期待
日経平均株価はどんな指数?
日経平均株価は2025年10月27日、史上初めて5万台の大台に乗せました。連日ニュースなどで日経平均株価の上昇が報じられていたのを目にした方も多かったと思います。
日経平均株価は、日本経済新聞社が日本を代表する225社を選び、これらの企業の株価を平均して調整して算出する株価指数です。
株価指数とは、株式市場の全体の動向を示す指標です。日経平均株価では毎年、定期的に取引のしやすさ、業種などのバランスを考慮して定期入れ替えが行われています。


日経平均株価の特徴と、ほかの指数との違い
日経平均株価は、個人投資家だけでなく一般にも幅広く知られており、ニュースでも4万円や5万円などの大台替えの際には見出しに多く使われています。
基本的に225の構成銘柄の株価を単純平均して調整し、算出されます。そのため最近では東京エレクトロン(8035)、ソフトバンクグループ(9984)などの株価の大きい値がさ株の影響を受けやすくなっています。
たとえば10月29日の日経平均株価は前日比1088円高と大幅に上昇しましたが、アドバンテスト(6857)ほぼ1社の急騰によるものでした。
これに対して、東証株価指数(TOPIX)は原則として東証プライム市場のすべての銘柄を対象とし、時価総額を元に算出されます。トヨタ自動車(7203)やソニーグループ(6758)、銀行株や商社株など、時価総額の大きい大型株の影響を受けやすい特徴があります。
また、機関投資家(プロの大口投資家)などはベンチマーク(指標)として、日経平均株価ではなくTOPIXを用いることが多いです。
日経平均株価に投資する方法は?
日経平均株価に投資する方法は様々で、それぞれメリットやデメリット、税制などが異なります。
投資信託を通じた投資
日経平均株価に投資する方法として一般的なのは、日経平均株価に連動するように運用される投資信託に投資する方法です。NISA(少額投資非課税制度)も活用でき、証券会社だけでなく銀行でも投資することができます。
ETFを通じた投資
ETF(上場投資信託)による投資も有効です。証券会社を通じ取引所で売り買いができるため、投資信託よりも機動的に売買できます。
代表的な銘柄には『NEXT FUNDS 日経225連動型上場投信』(1321)や『上場インデックスファンド225』(1330)などがあります。
レバレッジ型はリスクリターンをよく理解して
個人投資家に人気の日経平均型のETFとして、「レバレッジ型」というものがあります。これは日経平均の値動きに対して基準価額が2倍動くよう設計されたETFです。つまり値上がりも2倍なら値下がりも2倍というリスク・リターンが大きい点が特徴です。
レバレッジ型には値動きが大きいリスクのほかにも、価格の逓減リスクなどがあります。
レバレッジ型での投資は、ある程度通常の日経平均ETFや個別株式で投資経験を積み、リスクについてもきちんと理解した方におすすめです。
先物取引・CFDは取引ルールや税制も異なる
さらに日経平均先物取引やCFD(差金決済取引)であれば、日経平均株価を10~20倍のレバレッジで取引をすることができます。
少ない資金で大きなリターンを狙うことができますが、値下がり時の損失も同様に大きくなります。
また、投資信託や現物の日経平均ETFなどとは異なり、NISAの対象外です。現物株式や投資信託などと損益通算ができない点も注意が必要です。取引ルールや決済期限にも違いがあります。
日経平均型の投資の得意な局面・苦手な局面は?
値がさ株が上昇する局面は日経平均が有利
日経平均型の投資が得意とするのは、2025年のように人工知能(AI)への期待で値がさの半導体株などが上昇する局面です。対して世界や国内の景気が回復し、幅広い日本株が上昇するような局面ではTOPIX型のほうがリターンを得やすいと言えます。
世界の景気が悪化し、円高に向かう局面には弱い
世界経済が悪化して、リスク回避の動きで低金利の円が買われるような株安の場面には、日経平均型の投資は弱いと言えます。
米国と比較して割安の評価。改善の余地に期待
また、よく米国株投資とも比較されますが、現状における日本株の優位な点として、米国に比べて企業利益から見る割高さ(PER=株価収益率)が低く、割安である点が評価されています。
すでに株主資本主義が行き通った米国の企業に比べて、資本効率や生産性がいまだ低く、改善の余地のある日本企業が多いと言われています。逆に言うと、今後改善の余地がある銘柄が多いことも、日本株に投資する理由の一つとなっています。
日経平均株価型投資の活用法
- 個別銘柄を選択することなく、日本を代表する225社に一度に投資することで、日本経済全体の成長を享受できる
日経平均株価型投資の得意・有利な局面
- 日本の景気が拡大するとき
- 値がさ株が上昇するとき(2025年であれば半導体株など)
- 米国株式との比較で、相対的に割安で成長余地ありと評価されるとき
日経平均株価型投資の苦手・不利な局面
- 世界経済の悪化で円高・株安が進むとき
- 景気拡大局面で幅広い銘柄が上昇する場合は、相対的にTOPIXが有利な場合も
次回(12月9日公開予定)は、株式の代表的な分類法であるグロース株・バリュー株の“とくい”と“にがて”を見ていきます。
















