現役証券アナリストの佐々木達也さんが、株式市場で注目度が高い銘柄の強みや業績、将来性を解説する本連載。第23回は、都市型の土木工事に用いられる小型のミニショベルやローダーなどに強みを持つ中堅の建設機械メーカー、竹内製作所(6432)を取り上げます。

  • 1971年に世界発のミニショベルを開発。ベルリンの壁を壊すのに使われた
  • 強みは「高品質」。受注生産方式のため、余剰在庫を抱えるリスクが少ない
  • 業績見通しの上方修正などをきっかけに見直し買い。株価の戻り余地は大きい

竹内製作所はどんな会社?

竹内製作所は中堅の建設機械メーカーです。

特に都市型の土木工事に用いられる小型のミニショベルやローダーなどに強みを持っています。小型のミニショベルは機動性が高く、小回りが効くことからガス管や水道管などの生活インフラの工事や住宅建設の基礎工事に用いられています。

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竹内製作所は1963年(昭和38年)に長野県の坂城町に資本金300万円で設立されました。当時の日本は高度経済成長時代の真っ只中で、各地でインフラ工事が進められていました。当時のインフラ工事は作業員がツルハシで手作業で行っていた部分もあり、取引先からの要望を受け、1971年(昭和46年)に開発したのが世界発のミニショベルでした。性能が高く使いやすい竹内製作所の超軽量のミニショベルはその後全国の建設現場で広く用いられるようになり、米国などに輸出を開始し欧米で普及が加速しました。

竹内製作所のミニショベルがさらに有名になったのは、1989年(平成元年)のある事件がきっかけでした。この年の11月、東ドイツの共産主義政権が崩壊し、ベルリンの壁が壊されました。実はこの時に用いられたのは竹内製作所の40台のミニショベルでした。


ベルリンの壁を壊すのに竹内製作所のミニショベルが使われた

竹内製作所の強みは?

竹内製作所の強みは「高品質」です。海外子会社や代理店などから拾いあげたユーザーの声をスピード重視でいち早く取り入れて製品に反映させています。

また、製品はユーザーと仕様やオプションなどをきめ細かく設定してから生産する受注生産方式となっています。これにより例えばバックモニターやシートヒーターなどユーザーそれぞれのニーズに合わせた製品を提供でき、余剰在庫を抱えるリスクが少ない点も強みといえます。

竹内製作所の製品は高い品質で支持する顧客も多く、大手メーカーの低価格モデルと価格競争にならないブランド力を維持しています。

竹内製作所の業績や株価は?

竹内製作所の2023年2月期は売上高が前期比17%増の1650億円、営業利益が9%減の161億円を見込んでいます

売上高は米国でコロナによる住宅需要の増加でミニショベルなどの販売が伸びています。欧州では、老朽化した上下水道管、ガス管や道路などのインフラ補修のための建設機械の需要が高水準で推移しています。

これを受けて7月12日の3〜5月期決算(第一四半期)の発表と同時に通期の業績見通しを上方修正しています。また、円安による業績の押し上げ効果も見込んでいます。

営業利益は減益見込みとなっています。インフレによる資源価格高騰、人件費や輸送費の増加、米国の工場立ち上げの費用などの影響です。一方、こうしたコスト上昇を反映させた値上げも浸透しつつあり、採算も改善が期待されます

7月22日の終値は2509円で投資単位は100株単位となり最低投資金額は約25万円です。

竹内製作所(6432)の株価(2021年7月~、月足、終値)

欧州など先進国では老朽化したインフラの整備需要が続いています。EU諸国などでは財政規律のため、公的な支出をこれまで抑えていたこともあり、こうした需要は今後もさらに続くと見られます。

さらに拡大する需要に対応するため2022年内から米国の新工場、2023年8月からは長野県青木村の新工場が稼働を開始する予定となっています。

株価は景気敏感株として見られていたこともあり、年初からは弱含みの展開が続いていましたが、通期の業績見通しの上方修正などをきっかけに見直し買いが入っており、戻りの余地は大きいと見ています。

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