どんな場面でも常に高いリターンを上げられる金融商品はありません。どんな金融商品にも必ず「得意な局面」と「苦手な局面」があります。現役証券アナリストの佐々木達也さんが、今人気の金融商品や注目セクターの「とくい」と「にがて」を徹底分析する連載。第4回は、株式投資の代表的なスタイルである、成長(グロース)株と割安(バリュー)株を見ていきます。
- 売上や利益が成長している「グロース株」、実力に対し株価が割安な「バリュー株」
- 個別株はPERやPBRでグロース・バリューを判断。難しい場合は投資信託を活用
- グロース株は金利低下局面、バリュー株は金利上昇を伴う景気回復局面が得意な傾向
2025年の日経平均株価は昨年から約2割ほど値上がりしました。実はこの値上がりをけん引したのはアドバンテスト(6857)やソフトバンクグループ(9984)などのハイテクの成長(グロース)株です。

株式投資の銘柄選びには、大きく分けて2つの「選び方の軸」があります。それが成長(グロース)株と割安(バリュー)株です。
年金やヘッジファンドなどプロの機関投資家もこの分類を意識して株式を売買しています。今持っている株、投資しようとしている株がどちらにあたるのかは、相場の流れを知る上では非常に重要です。
グロース株、バリュー株の特徴
成長(グロース)株とは?
売上や利益が市場平均よりも大きく伸びている企業に投資するスタイルです。AIやITなどの最先端技術を持つ企業が代表的です。「未来」を重視した投資と言えるかもしれません。
期待通り利益が成長すれば株価の値上がり(キャピタルゲイン)による大きな利益を狙うことができる反面、このような株は人気になりやすく、株価が割高になりがちです。
割安(バリュー)株とは?
企業の「持っている資産」や「稼ぐ力」に対して、株価が安すぎる水準にある銘柄に投資するスタイルです。収益をきちんと稼いで、株主に多くの配当を支払っているのにもかかわらず成熟産業と見なされて、割安に放置されているような銘柄を対象とします。「現在」の状況を重視した投資と言い換えることもできます。
日本株は米国株などに比べて割安な株が多いとされています。一般的には銀行株や商社株、自動車株など景気敏感な業種や紙・パルプ、倉庫業など業績が安定している株がこれにあたります。
なおややこしいですが、東証にはプライム市場とスタンダード市場、グロース市場があります。今回のグロース株とは成長株を指しており、グロース市場に上場している銘柄という意味ではありませんので注意してください。
グロース株、バリュー株に投資する方法は?
具体的にグロース株、バリュー株に投資するにはどのような方法があるのでしょうか?
個別株投資
もっとも一般的なのは証券会社の口座で個別株を選んで買う方法です。
グロース、バリューの定義は明確には存在せず、基準は人それぞれですが、PER(株価収益率)、PBR(株価純資産倍率)や配当利回りなどの株式指標から判断することが多いでしょう。例えば利益に対する株価倍率のPERが高く、配当利回りは低い株であればグロース株という判断をすることができます。また、PBRが1倍を割っている銘柄はバリュー株とみなされることが多いです。
投資信託を通じた投資
個別株を選ぶ知識や経験がないといった方は、投資信託経由での投資もおすすめです。
投資信託の説明書である目論見書には、グロース、バリューの運用のスタイルが明記されています。また、『フィデリティ世界バリュー株式ファンド』『アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信』など、ファンド名にも運用スタイルを示すワードが入っていることも多いです。
ETFを通じた投資
銘柄を選ぶには自信がないが、より機動的に売買したいという方はETF (上場投資信託)を通じた売買もおすすめです。
例えばバリューという名前ではありませんが、高配当利回りの割安株に投資するETFでは 『NEXT FUNDS 日経平均高配当株50指数連動型上場投信』(1489)というものがあります。
なお、『東証グロース・コアETF』(1563)などグロースと名のつくETFはほぼ、グロース市場銘柄を投資対象としています。成長株なので間違いではありませんが、東証プライム市場のグロース株と比べて変動率が大きくなることもあります。
グロース株、バリュー株の得意な局面・苦手な局面は?
グロース株の「とくい」と「にがて」
グロース株は、セオリーとして景気後退期など金利が低下する局面で上昇しやすいという側面があります。また株式相場が活況な時には、バリュー株に比べて値上がりしやすい傾向です。
苦手な局面として、成長株は相場の過熱する局面で人気化しやすく、その後の値下がりリスクも高くなりがちな点には注意が必要です。
バリュー株の「とくい」と「にがて」
バリュー株は金利の上昇を伴うような景気回復局面で上昇することが多いと言われています。また割安なため相場が下落した場合でも株価の下落余地が小さい点は評価できます。
苦手な局面としては株価が割安であっても業績が悪化していたり、成長性が乏しいとみられている場合はなかなか上昇する機会が訪れないこともあります。割安であるのも大切ですが、「なぜ割安なのか」は投資の際にきちんと理解するようにしましょう。
| 成長(グロース)株 | 割安(バリュー)株 | |
|---|---|---|
| 活用法 | 企業の成長力に期待して、大きなキャピタルゲイン(値上がり益)を狙う。「未来」を重視した投資 | 企業の稼ぐ力に対して株価が割安な企業に投資して、株価が適正な水準に戻る際のキャピタルゲインを狙う。「現在」の状況を重視した投資 |
| 得意局面 | ・景気後退期など、金利が低下する局面ではバリュー株より上昇しやすい ・株式市場が活況なときは、値上がりがバリュー株より大きくなりやすい |
・金利の上昇を伴うような景気回復局面で上昇することが多い ・株式市場の下落局面では、もともとが割安のため、グロース株と比較して下落余地は小さい |
| 苦手局面 | ・株式市場が過熱する局面では人気先行となって株価が実力以上に値上がりしやすく、その後の値下がりリスクが生じる | ・株価が「割安」ではなく、業績悪化や成長性の乏しさによる正当な評価であることも。その場合は値上がり益を期待しにくい |
次回(12月23日公開予定)も株式投資をテーマに、時価総額の規模で分類した「大型株」と「中小型株」の“とくい”と“にがて”を見ていきます。
















