「預金なら安心」って本当なの? 「元本保証」って、実際に何を保障してくれるの? 実は、現金にもリスクが潜んでいるのです。本連載ではそんな「現金のリスク」を切り口に、お金のほんとうの価値を守るための資産運用について考えていきます。今回は、これから投資デビューをする方に向けて、どの金融機関で投資を始めればいいかを判断するポイントについて考えます。

  • 株式に投資するなら証券会社。海外株式は投資したい地域に強みを持つ会社を選ぶ
  • 売買手数料も重要。手数料は高いけれどサポートが手厚い証券会社を選ぶ手もある
  • 株式などに投資しないなら銀行も選択肢。なじみの店舗なら信頼感がある

皆さん、こんにちは。まん延防止等重点措置は解除されましたが、コロナ禍が収束したわけではありません。また、ロシアによるウクライナ侵攻も止まりません。(いずれも、本稿執筆時)。

さて、本来なら本稿では「コモディティ投資」の成果についてお話し申し上げようと思っていたのですが、暮らしを守るためとはいえ、「戦争を利用した投資は、いかがなものか?」という、読者ではない方からご指摘がありました。
そこで、4月ということもあり、「投資デビュー」をしたい人、させたい方に向けた記事にしてみました。

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株式にも投資をしたいなら

上場企業の株式の取引(売買)は証券取引所で行われています。しかし、個人や法人を問わず、証券取引所で株式の取引を行うことはできません。証券取引所にて株式の取引を行うことができるのは、証券取引所の会員になっている証券会社です。

例えば、東京証券取引所(以下、本稿では東証)でしたら、多くの証券会社が会員になっています。ですので、東証に上場している株式やETF、REITに投資をしたい、ということでしたら、まず取引を希望する証券会社を選ぶことから始まります。

ところで、東証の会員になっていない証券会社もあるようです。しかし、東証の会員ではない証券会社でも「東証の会員証券会社に取り次ぐ」カタチで、株式の取引を承っていることがあります。取引を希望する証券会社が見つかったら、東証の会員か否か、東証の株式の取引ができるか否か、オフィシャルサイトなどで確認すると良いでしょう。

株式の取引を受け付けていない証券会社もあります。例えば、復活した山一證券は公式サイトを見る限り、M&Aや企業財務のアドバイスに特化しています。

ところで、我が国には、東京の他に札幌や名古屋、そして福岡にも証券取引所があります。例えば、札幌証券取引所(以下、本稿では札証)に上場している株式に投資したい場合は、どうしたら、良いでしょうか?
札証会員になっている証券会社は19社となっています。札証に上場している株式に投資したい場合には、札証の会員になっている証券会社から選ぶか、「札証の会員証券会社に取り次いでくれる」証券会社と取引するかの、いずれかでしょう。いずれにせよ、証券会社のオフィシャルサイトなどで確認しましょう。

日本取引所グループ
東京証券取引所に上場している株式を売買できる証券会社は東証の会員か、もしくは会員に取り次ぐことができる会社に限られる
yu_photo / Shutterstock.com

海外の株式への投資を考えるなら

さて、お若い方を中心に、アメリカの株式投資に関心が高まっているようです。アメリカに限らず、中国(上海や香港)、欧州など、海外の株式に投資を希望される場合、やはり取引を承っている証券会社を選ぶことになります。

証券会社によっては「中国株に強い」や「アメリカ株ならお任せ」など、特定の国の株式に注力していることもあります。では、特定の国や地域の株式に注力している証券会社には、どのようなメリットがあるのでしょうか?
例えば、特に注力している国もなく「アメリカ株式あります」くらいな感じですと、5,000を超えるアメリカ上場株式のうち、わずかに100社程度に限った取引になっている場合もあります。しかし、注力している証券会社なら「ほとんどのアメリカ株式の取引を承ります」という具合です。品揃えと申しますか、選択肢の数の違いがあります。

そして、品揃えが異なれば、当然、情報の収集力も異なります。注力している証券会社なら、カラーの図やグラフをふんだんに載せたレポートはもちろん、動画や対面セミナーなども充実しています。が、注力してない証券会社による情報提供は、重要事項説明くらいなものではないでしょうか?

ニューヨーク証券取引所
米国株を取り扱っている証券会社でも、品揃えや情報提供で会社ごとに差がある

やっぱり気になる手数料……安いに越したことはない?

証券会社を選ぶ時に気に留めておきたいのは、やはり売買手数料です。売買手数料は株式を買う時と売る時とそれぞれ必要ですし、消費税も掛かります。同じ株式に投資をするのでしたら、売買手数料が少しでも安い方が良いのは、言うまでもありません。これまでの連載で「ネット証券会社なら、手数料が安い」と書かせていただきました。

PBRという投資尺度を活かした株式投資こそ王道?

特にETFに投資をするのでしたら、売買手数料が高額な場合は要注意です。証券会社によっては「手数料の最低額」を設けていることがあるからです。ETFの中には、1株から、つまり数千円から投資できるものもあります。投資元本よりも手数料売買手数料が高くなってしまう、ということもあり得ます。

ところで、年配の女性客から、こんなお話も聞きました。
証券会社の担当者の指示通りに株式の取引をしているので負けたことがない。4人いる孫の学費や習い事の費用は、全て株式から得た利益で、十分に賄うことができた」と。
そこで、気になる売買手数料を伺うと、いやあ、声を出して驚くほどに高い! しかし、この女性は「ネット証券では、ここまで思い切った投資はできなかった」とも続けます。

なるほど、ネット証券では担当者がおらず、自身で判断し、決断しなくてはなりません。そして慎重を期すために、どうしても少額な投資になってしまいますからね。手数料の額を遥かにしのぐ利益を得ることができれば、価値ある手数料とも言えますね。

投資デビューを果たしたいが、なかなか踏み切れないという方。手数料を授業料だと割り切って、担当者がしっかりサポートしてくれそうな証券会社を選ぶのも良いかもしれません。もっとも、腕の良い担当者に恵まれるか否かと言う、新たな課題も生じますが。

また、先述の「東証の会員ではない」証券会社の話ですが。
「東証の会員になっている証券会社」に取り次ぐカタチですので、証券会社を2社、利用しているイメージですね。つまり、株式の売買手数料が割高なイメージを持ってしまいそうです……が、筆者の過去の経験では、必ずしもイメージ通りではなかったです。手数料については先入観によらず、見極めた方が良いでしょう。

株式やETF、REITに投資をしない場合は銀行も視野に

【図表】証券会社と銀行が取り扱う金融商品の比較
  証券会社 銀行
東京証券取引所の
株式・ETF・REIT
取引OK なし
札幌・名古屋・福岡の
各証券取引所の株式
会社による なし
アメリカや中国などの
外国株式
会社によるが
注力している
会社がお薦め
なし
投資信託 あり あり
外貨MMF あり なし
外貨預金 なし あり

※外貨MMFや外貨預金については、次回(4月18日予定)でお話しします

株式の取引をせず、投資信託(以下、本稿ではファンド)のみの取引でしたら、証券会社だけでなく、銀行での取引を検討しても良いのではないでしょうか? お給料をお受け取りの、お馴染みの銀行でも、投資信託の販売を行っていることもありますね。

お馴染みの銀行なら、何と言っても安心と信頼があります。そして、ネットバンクも操作や画面に慣れていたりもしますね。

ちなみに、筆者の投資デビューも、実は給料を受け取っていた銀行でした。
当時は、まだ三和銀行だったと思います。普段、窓口に出かけるなんてことはなかったのですが、給料の受け取りだけでなく、公共料金の引き落としや定期預金など、自分なりに「厚く付き合って」いたつもりでした。その「つもり」が功を奏したのか、投資信託を選ぶのに、とっても親身にレクチャーいただきました。叶うことなら、当時レクチャー頂いた方に、お礼を言いたいくらいです!

過去の稿でも申し上げましたが、筆者は今、ネット証券で取引しています。投資信託の購入時手数料はゼロです。が、実は銀行でも積み立てで投資信託を買っています。口座開設時と定期預金の残高、そして投資信託の購入時の、それぞれにクレジットカードのポイントが付与されるからです。

もう数か月前だと思いますが、ある証券会社がグループのポイント付与率を下げる旨を表明しましたね。ポイント付与などの付加サービスは、なくなったり、付与率が下がったり、などの不利益な変更の可能性は常に付きまといます。しかし、いったん受け取ったポイントを「返しなさい」とまでは言わないでしょう。あるものは、あるうちに利用しておいた方が良いでしょう。将来の、不利益な変更の可能性を思いつつ。

近くにお店がある

今や、近くにお店がある、という視点で、証券会社や銀行を選ぶ時代ではないかも知れません。ATMも含め、お店はどんどん減っていますからね。
仮にお店があっても、一つの建物の中に、複数の支店や営業所があったりもします。筆者も若い時は、職場の近くにある証券会社のお店に顔を出しては、窓口の綺麗な女性から投資の話を聞いたりしたものですが、今後は難しくなるでしょうね。

まとめに代えて

さて、証券会社や銀行を選ぶポイントとして「株式の取引の有無」、「外国株式への注力」、「手数料」、「筆者の投資デビュー」、「近くのお店」という視点で、お話してまいりました。
では投資デビューをしたいという方が証券会社や銀行を選ぶに当たり、ポイントを一つに絞ると、それは何でしょうか?

これまでの自身の経験(自らの投資経験とお客様へのアドバイスの経験)を振り返ると、やはり「親しみやすさ(例えば本稿では、筆者の投資デビュー)」ではないかと思います。そして、特にこれからはウェブサイトへの親しみやすさですよね。
また、もし担当者が付いてほしいということですと、規模の小さな証券会社や地域密着な証券会社が良いかもしれません。

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