米国では、1月20日にトランプ氏が第47代目の大統領に就任しました。トランプ大統領の経済政策の中で、世界経済に影響を与えるものとして関税政策があります。この記事では、日本の関税制度を参考に、その概要や目的、関税率の種類などについて見ていきます。
- 関税は国が輸入品に対してかける税金で、国内産業の保護などを目的とする
- 関税率は、法律に基づく税率と条約に基づく税率の2種類に大別される
- 条約に基づく税率には、WTO加盟国・地域が対象の協定税率と、EPA税率がある
関税とは
関税とは、輸入品にかけられる税金のことです。一般的に、輸入する業者が輸入する国に対して納税します。
関税の課す機能としては、以下の3点が挙げられます。
- 国内産業の保護
- 国家収入の確保
- 貿易歪曲効果是正機能(制裁機能)
それぞれ、詳しく見ていきます。
・国内産業の保護
価格などで国際競争力が劣る国内企業を保護するために競合する輸入品に関税をかけ、それにより輸入品と国産品の価格差を縮小し、該当する国内産業を保護します。
・国家収入の確保
輸入品に関税をかけることで、税収アップを図ることができます。ただし近年先進国では、他の目的に比べ国家収入の確保に対する重要度は下がっています。
・貿易歪曲効果是正機能(制裁機能)
貿易歪曲効果是正機能(制裁機能)として、輸出国のダンピングに対抗して行われるアンチダンピング関税や輸入国の国内産業に損害を与える補助金に対する相殺関税などがあります。
以上が関税の機能になります。次に関税率の種類について見ていきます。
関税率の種類
ここでは、税関のホームページを参考に関税率の種類と税率適用の順位について見ていきます。
関税率は、法律に基づいて設定される税率と条約に基づいて設定される2種類に大別されます。
法律に基づいて設定される主な税率
法律に基づいて設定される主な税率は以下の3つです。
- 基本税率
- 暫定税率
- 特恵税率
・基本税率
基本税率は、国内産業の状況などを踏まえた長期的な観点から、内外価格差や真に必要な保護水準を勘案して設定される税率です。
・暫定税率
暫定税率は、一定の政策上の必要性などから、基本税率を暫定的に修正するため、一定期間に限り適用される税率です。
・特恵税率
特恵税率は、開発途上国・地域を支援する観点から、開発途上国・地域からの輸入品に対し、原産地証明書の提出などの条件を満たすことにより適用される税率です。
条約に基づいて設定される税率
条約に基づいて設定される税率は、以下の2つです。
- 協定税率
- 経済連携協定等に基づく税率(EPA税率)
・協定税率
協定税率は、WTO(世界貿易機関:World Trade Organization)加盟国・地域に対して一定率以上の関税を課さないことを約束(譲許)している税率です。
WTOは、WTO協定で定めた貿易に関する国際ルールの実施・運営と貿易・通商の解決機関などの役割を担う国際機関です。1995年1月に発足し、2024年6月現在は164か国が加盟しています。
・EPA税率
EPA税率は、経済連携協定(EPA)などを締結している国からの商品を対象に、それぞれの協定に基づいて適用される税率です。
また、税率適用の順位は、特恵税率、協定税率、暫定税率、基本税率になります。
ただし、暫定税率や基本税率が協定税率より低い場合は、低い方の税率が適用されます。
まとめ
以上、関税制度の概要や目的、関税率の種類について見てきました。
米国トランプ政権の関税政策は、世界経済に大きな影響を与える可能性があります。また、第1次トランプ政権の時は、WTOを軽視する発言などもありました。関税政策によって株式市場が大きく変動した時に、冷静な投資判断を行えるように、関税について基本的な知識を持っておくようにしましょう。
参考サイト
- 経済産業省「2024年版不公正貿易報告書 第II部 第5章 関税」
- 税関「1105 関税率の種類(カスタムスアンサー)」
- 財務省「WTOの概要」