資産形成に対する関心が世代を超えて広がっており、学生で資産運用を始める人が増えています。資産形成の手段としてiDeCoを利用する大学生もいるようです。iDeCoの最大の魅力は所得控除ですが、収入が少ない学生にとってiDeCoの加入はメリットがあるのでしょうか。

  • 20歳以上の大学生でも、国民年金を納めていればiDeCoに加入できる
  • 年収が103万円以下の大学生は、iDeCoの所得控除の恩恵を受けられない
  • iDeCoで若いうちに投資を学べるが、働き始めてから加入しても遅くない

国民年金を納めていれば学生もiDeCoに加入できる

大学生でも20歳以上であれば、iDeCoに加入できます。大学生は国民年金の第1号加入者にあてはまることが多く、その場合の掛金の上限は月額6万8000円(年間81万6000円)です。

もちろん、iDeCoは、必ずしも上限金額を毎月拠出し続ける必要はありません。最低5000円から、利益がすべて非課税の積立投資を始められます。

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ただし、国民年金を納めていない人はiDeCoに加入できません。国民年金の保険料が未納の場合や、学生納付特例を使って猶予を受けている場合はiDeCoに加入する資格がないので、大学を卒業して、保険料を支払うまで待つことになります。

所得税を払っていなければ税制面でのメリットはない

iDeCoのメリットは、投資信託などの運用で得られる利益に税金がかからないこと。もうひとつは掛け金が全額所得控除の対象となることです。将来の年金のためにiDeCoの掛金を毎月支払い続けるだけで所得税の節税になり、長期的にはかなりの優遇を得られることになります。

例えば、年収500万円の人が毎月2万円を積み立てた場合、所得控除の対象となる額は24万円となり、実際に節税できる金額は年間4万8000円です。30歳の時に始め、65歳まで継続した場合、168万円の節税となり、大きな効果が生まれることがわかります。

しかし、いくらiDeCoが所得控除の対象といっても、収入が103万円以下であれば、そもそも所得税を支払う義務がありません。年間103万円以上稼ぐ大学生は多くないでしょう。iDeCoの最大のメリットである所得控除の効果がないということは、iDeCoを利用する意味が薄れるということです。

大学生のアルバイト
大学生のアルバイトの収入だけでは、iDeCoのメリットである所得控除の恩恵を受けにくい

若いうちから投資を学ぶためにiDeCoは有効

iDeCoの最大のメリットである所得控除の恩恵は受けられないものの、学生がiDeCoを利用することが全く無駄なわけではありません。学生がiDeCoを利用するメリットの1つは、若いうちから投資について学べる点です。

投資というと、FXや株式のデイトレードのように、短期的に値動きの大きい商品で利益を狙うことを思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、資産形成の基本は長期的な分散投資です。分散投資を長期にわたって行うことで、値動きを安定させる効果が期待できます。

iDeCoは原則60歳まで出金することができないため、iDeCoで毎月お金を積み立てていくだけで自ずと長期投資につながります。iDeCoの運用商品も、バランス型の投資信託など分散投資に資するものも多くありますので、長期的な分散投資がやりやすいというメリットがあります。

さらに、iDeCoは毎月一定額を積み立てていくことになりますので、投資信託を購入するタイミングが分散されます。iDeCoでは投資対象の分散だけでなく、時間の分散も実現できるのです。

iDeCoは毎月5000円が拠出額の下限です。最低金額でも積み立てを継続することで、若いうちから投資のことを学べるよい機会になるでしょう。特に老後資産のように、長期間かけて大きなお金を貯めたいときは、できるだけ長い運用期間をとったほうが有利です。

少しでも早く投資を始めるという意味では、大学生のうちからiDeCoに加入するのは良い試みといえるでしょう。

大学生
若いうちから投資を学ぶことは、将来の資産形成にもつながる

iDeCoの加入は働き始めてからでも遅くない

大学生からiDeCoに加入すれば、若いうちに投資に慣れることができます。しかし、投資を学ぶのであれば、必ずしもiDeCoでなければいけない理由はありません。

非課税で投資をするのであればNISAも利用できますので、収入が少なく所得控除のメリットを得られないのであれば、無理にiDeCoを活用する必要はないでしょう。

下限である毎月5000円の拠出でも、学生にとっては小さい負担ではありません。まだ、若い学生にとって60歳まで解約できないというデメリットは、社会人に比べて大きなものとなります。働き始めてからiDeCoに加入しても決して遅くありません。

まだ就職もしていない学生にとって、今後の結婚や出産、住宅購入を見越してiDeCoの掛け金をいくらにすればいいかを判断することは難しいでしょう。学生は学生時代にしかできない経験をすることも大事です。iDeCoのために手持ちのお金がなくなってしまうより、旅行など学生生活を楽しむために使うほうが有意義かもしれません。

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