テレビ、ラジオ、動画配信も含めて様々なコンテンツの台本や脚本を執筆する放送作家&脚本家が700人以上所属する日本放送作家協会がお送りする豪華リレーエッセイ。ヒット番組を担当する売れっ子作家から放送業界の裏を知り尽くす重鎮作家、目覚ましい活躍をみせる若手作家まで顔ぶれも多彩。この受難の時代に力強く生き抜く放送作家&脚本家たちのユニークかつリアルな処世術はきっと皆様の参考になるはず! 
連載第23回は、ドラマ「救命病棟24時」などでおなじみの脚本家、飯野陽子さん。

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近居のすすめ

飯野陽子さんの写真飯野陽子
脚本家、日本放送作家協会会員

夫の実家のとなりに家を建てて18年になる。互いの生活リズムやペースをつかむのに少し時間がかかったけれど、いまはこの暮らしが本当に快適になった。

私のまわりで、お舅さんお姑さんと近居しているひとの話は、なかなか聞かない。相性さえよければ、ぜひチャレンジしてみたら新しい発見もできるし楽しいと思う。

気持ちよく義実家のとなりで暮らすため、大切にしたことがいくつかある。

その1 言いづらいことこそ自分で伝える。

妻が言いたいことなのに、都合よく夫をつかって義実家に話してもらおうなんてやりかたは、トラブルの原因になると思う。

私の夫が、600世帯のお世話役である町内会長を一年間引き受けたことがあった。私は言いたいことを、自分で義実家に伝えに行った。それまで町内会長はリタイアした方が、夫婦単位で引き受けることがほとんどだったように思う。現役世代の我が家が、いままでと同じ勢いで同じ役割をはたすには、なかなかハードルが高かったからだ。

その2 10年つづけられないことは最初からやらない。

ふだんはお姑さんが「お仏壇のお世話(!)」を、しているのだけれど日曜の朝だけは、私がお仏壇のお供えをつくって届けている。どうにもつづけられそうになくて最初からごめんなさいしたことは多いが、これだったら10年楽しんでつづけられそうだと思ったからだ。

その3 せっかくだから見習う。

お舅さんもお姑さんも、きれい好き。まじめで几帳面。特にお姑さんは家事全般、完璧をめざす努力のひとだ。50年以上家計簿をつけつづけて、家計をきっちり把握している。

見習いたいのは1年の終わりに毎日書き込んだ家計簿を、いさぎよく処分していることだ。ものに執着しない。

家計簿のイメージ画像
50年以上、毎日、家計簿をつけ続けているお姑さん。1年の終わりにその家計簿をいさぎよく処分している

その4 正直に自分で申告。

お舅さんもお姑さんも、季節の行事を大切にしている。特に年末は、やり残したことの始末と、お正月の準備にいそがしい。

私は7年前からおせち料理づくりを、お姑さんからすべて引き継いだ。出来は散々で一昨年はお煮しめのハスがかたすぎたし、八つ頭に味がしみてなかった。昨年は数の子の塩抜きが、いまひとつだった。私は「来年に、ご期待ください!」と、正直に反省点を明るく申告する。

お姑さんと比べない。悪びれない。

お舅さんを見送る

5年前、お舅さんを在宅介護で見送った。亡くなるまでの最期の3か月は、お姑さんも私も、記憶があいまいになるほど激動の日々だったのだが、あの月日を一緒に乗り越えたことで、お姑さんと団結できたような気がしている。

義実家と近居で暮らすことがあまり流行らないのは、介護をひきうける覚悟が必要だからかもしれない。

でも互いのパーソナリティが理解できたうえでの介護なら、なんとか落としどころをみつけられるような気がしている。好きなことや嫌いなこと、どこにお金をかけたいのか、なにを無駄だと思っているのか予想がつくし相談しながらすすめていけるからだ。

介護のイメージ画像
お互いのパーソナリティを理解できたうえのでの介護なら、相談しながらなんとか落としどころを見つけられる。

私の場合は、義実家に恩義があることも大きい。

ひとり息子の子育て中、夫は単身赴任で週末に帰宅する生活だった。それでも私が脚本の仕事を手放さずにいられたのは、お舅さんやお姑さんが心から応援してくれて全面的にサポートしてくれたから。それを思えば、介護がんばろうという気持ちになれる。

この暮らしは経済的にも助かっている

屋根や庭木のメンテナンスは、親世帯と子世帯まとめて発注。かなり節約できたと思う。夏でも冷たくて美味しい井戸水を、ふんだんにつかわせてもらっている。

でもこの暮らしの一番のメリットは、たくさんの人との出会いがあり、交渉したりお願いしたり、たまにもめたり、笑える経験をさせてもらったことかもしれない。

近所を歩くだけで、あちこちから声をかけてもらえる。最近は、お姑さんから影響を受けて、仕事命だった私がボランティアにまで顔をだすようになった。

物書きは机にしがみついて、あきらめずに書きつづけることでしかない。ハードな仕事だけれど、実体験があると心強い。この暮らしが支えてくれる物語を大切に、書きつづけていきたいと思っている。

次回は放送作家の木崎徹さんへ、バトンタッチ!

是非、読んでください!

フジテレビで放送された「救命病棟24時」第5シーズンの小説版。ノベライズではなく、登場人物ひとりひとりにスポットをあてたオリジナルの物語です。よろしければ、ぜひ。

救命病棟24時 -5th series- TOKYO SYNDROME(扶桑社刊)

救命病棟24時 -5th series- TOKYO SYNDROME 表紙
一般社団法人 日本放送作家協会
放送作家の地位向上を目指し、昭和34年(1959)に創立された文化団体。初代会長は久保田万太郎、初代理事長は内村直也。毎年NHKと共催で新人コンクール「創作テレビドラマ大賞」「創作ラジオドラマ大賞」で未来を担う若手を発掘。作家養成スクール「市川森一・藤本義一記念 東京作家大学」、宮崎県美郷町主催の「西の正倉院 みさと文学賞」、国際会議「アジアドラマカンファレンス」、脚本の保存「日本脚本アーカイズ」などさまざまな事業の運営を担う。

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