宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。今回のテーマは「インフラファンド」。現在は東証に5銘柄上場しているインフラファンドについて、その仕組みや特徴、NISAを活用する可能性について深掘りしていきます。

  • インフラファンドは、太陽光発電施設などに投資するREITと同じ仕組みの商品
  • インフラファンドは約5万~10万円で投資でき、分配金利回りは6~8%
  • 最初はインカムゲインを重視した投資が賢明。NISAの活用も選択肢に

「インフラ」に投資する投資信託

【質問】
マネー雑誌で、インフラの投資信託が有効と出ていました。確かに今のインフレ経済には良いかもと考えています。NISA制度で、インフラの投資信託の購入はありでしょうか?

NISAでREITに投資するなら単体か投資信託か

前回まで上場投資信託(ETF)不動産投資信託(REIT)について考察していきましたが、ここにきて本記事の執筆中に、来年度から日銀が保有するETFとREITを市場で売却する話が舞い込んできました。

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やっぱりこのタイミングしかなかったかもしれません。経済と景気を両立させようと、株式市場を下支えするためETFなどを日銀が購入した「禁断の買い入れ」は、市場原理からかけ離れたものでした。これからは株価を急落させることなく売却を進めていく手法に、日銀は神経をとがらせなければなりません。

今までのところ、日銀がETFとREITを一気に売却するわけではないことから市場は良しとしているようですが、株式市場もここからは一本調子でなく、ある程度の急落も頭に入れておく必要があるでしょう。9月の金融政策決定会合で、金利据え置きを決めたのも苦肉の策といえます。

さて今回の相談、日本のインフラにも株式市場の影響は避けられないと思いますが、そもそも「インフラ」が直面する課題としては主に、道路や水道、電力網といった社会インフラの整備が挙げられます。特に先進国においては設備の経年劣化などインフラ整備の必要性が急速に高まっています。

インフラは投資信託の中では「テーマ型」に当てはまり、多くの商品が販売されています。ただ、多くの商品群は、海外の新興国の急成長に対するインフラへの投資が主なものになっているようです。日本などの先進国群のインフラについては、NISAを活用できる商品はその選択肢自体が狭く、リスクも高いものが大半ではないかと思っています。

相談者がマネー雑誌で読んだインフラの投資信託は、私も現在運用している「インフラファンド」と言われる商品ではないでしょうか?

REITと同じ仕組みのインフラファンド

この「インフラファンド」とは、東京証券取引所で上場されている、主に太陽光発電システム施設や港湾施設などのインフラを投資対象とする投資法人となります。

太陽光発電などのインフラの整備や運営は、地球温暖化対策として化石燃料に頼らないエネルギーを確保する国を挙げての政策でもあります。そのため、経済動向や景気変動などの影響を受けにくく、長い期間安定的な収益を得ることが可能なアセットクラスと言われており、投資家の関心が高まっています。

インフラファンドの上場の基準と仕組みは、基本的にREITと同様です。多くの投資者から資金を調達してインフラを保有し、そこから生じる収益などを投資者に分配します。また特筆すべきは、安定した収益分配を実現するために、例外もあるようですが、新規に建設するインフラではなく、すでに完成・稼働して継続安定的な収益が見込める施設だけが対象となっているようです。

インフラファンドの価格と利回り

ここからは、一般的に多く販売されているインフラ関連の投資信託と比べて、手数料が安価で比較的リスクが低めと思われるインフラファンドについて、現在上場されている5商品を見ていきます。

【図表1】インフラファンドの投資口価格一覧
銘柄名 投資口価格 利回り 上場時期
いちごグリーンインフラ投資法人 47,450円 7.46% 2016年12月
カナディアン・ソーラー・インフラ投資法人 95,700円 6.69% 2017年10月
東京インフラ・エネルギー投資法人 50,500円 6.83% 2018年9月
エネクス・インフラ投資法人 57,700円 6.93% 2019年2月
ジャパン・インフラファンド投資法人 55,600円 7.19% 2020年2月

※投資口価格は2025年9月24日の終値。利回りは同日の予想分配金利回り

購入価格は1株約50,000円~100,000円です。スポンサー企業も多種多様で、④エネクス・インフラ投資法人は風力発電施設にも投資を行っています。チャート分析で見る④の長期トレンドラインは下降トレンドから上昇トレンドへとなりつつあり、短期中期トレンドラインは底値をつき上昇傾向にあるのが見えてきます。一方で、1株あたりの価格は①いちごグリーンインフラ投資法人と②カナディアン・ソーラー・インフラ投資法人以外は、上場の価格を下回っているのが現状です。

分配金の利回りは、約6~8%になっています。

【図表2】エネクス・インフラ投資法人の投資口価格とトレンドライン
(週足、2023年6月2日~2025年9月19日)
エネクス・インフラ投資法人の投資口価格とトレンドライン

個別商品の実績からインフラファンドを深掘り

もう少し深掘りするために、私が長期投資し、安定して分配金を出している①いちごグリーンインフラ投資法人の決算・運用状況報告書(資産運用報告)が手元に届きましたので、説明していきます。

  • スポンサー企業は、いちご株式会社という不動産運用を行う会社。
  • 資産的には5商品の中では小規模だが、2016年12月1日に上場と運用実績は一番長い。
  • 直近の分配金利回りは約8%。
  • 保有物件は発電所が15か所。北海道から沖縄まで各地に所在。
  • 10か年分配金予想は、9年連続達成。

いちごグリーンインフラ投資法人 第10期 決算・運用状況のご報告(資産運用報告)PDF

ただ今年度予想・実績発電量と売電収入の推移は、パネル不具合、出力制御、天候不良の影響を受けて予想比-3.3%に落ち込んでいます。この中には、物価上昇による運営管理費用の増加と、多発するケーブル盗難被害による防犯対策費用などもあるようです。運用が10年を超えてくると想定外の案件も出てくることがわかります。

私の場合、長期で保有したことで1株あたりの購入価格は購入時から約19%上回っており、分配金を足すと、約60%以上は収益が出たことになります。結論として、長く保有したことが、安定した収益が出たことにつながっています。

NISAを含めたインフラファンドの活用法

長期運用の目線で言うと、キャピタルゲイン(値上がり益)とインカムゲイン(分配金)のうち、キャピタルゲインは利益と損失がある一方、保有することで得られるインカムゲインの収益もあることから、どちらに重点をおいて投資するのかを決めておく必要性があります。

最初にインフラファンドの特性を踏まえた上で投資を開始するなら、インカムゲインを重視して投資した方が賢明でしょう。最近ではメガソーラーに対して、生態系への影響や土砂災害のリスク、パネルがまぶしいなどといったネガティブな報道がなされていますが、周辺住民への説明会などが義務化されていることもあり、インフラファンドは透明性の高い金融商品とも言えます。

金融庁が資産運用立国を目指すため、2025年8月に上場インフラファンドの税制優遇要件を緩和すると発表したのもプラス要因となるでしょう。

そしてNISAの活用は、商品によっては株主優待もありますので、NISAのポートフォリオに含めるのもありと思います。