どんな場面でも常に高いリターンを上げられる金融商品はありません。どんな金融商品にも必ず「得意な局面」と「苦手な局面」があります。現役証券アナリストの佐々木達也さんが、今人気の金融商品や注目セクターの「とくい」と「にがて」を徹底分析する連載。第10回のテーマは「積立投資」と「一括投資」です。それぞれの投資手法がどのような場面で有効なのか、あるいは不利なのかを見ていきます。
- 一括投資は大きなリターンが狙える。積立投資は投資経験が少ない方も始めやすい
- 暴落局面では心理的側面から積立投資が有利。右肩上がりの相場は一括投資が有利
- 老後資金は積立投資、余剰資金でリターンを狙う一括投資というハイブリッドも有効
株式など変動率の大きい金融商品への投資は、「いつ」「どれだけ」の資金を投じるかがその後のリターンに非常に大きい影響をもたらします。そのため、「毎月コツコツ積み立てるべきか」それとも「手元の資金を一度に投入すべきか」という選択に迷いを感じる方も多いと思います。最近の日本株の変動を見てもわかるように「今が一括投資のタイミングなのか、それとも暴落を待つべきか」という迷いは尽きません。
今回は、投資の心理的な側面も踏まえて、それぞれの特徴について見ていきます。
「積立投資」と「一括投資」とは?
「一括投資」とはまとまった資金を任意のタイミングで一括で投資する方法です。手元にある余剰資金を一度に市場に投じることで、より長い期間、大きな金額を複利運用に回せます。そのため、上昇相場においては大きなリターンを得ることができます。
これに対して「積立投資」は毎月3万円など、あらかじめ決めた金額を定期的に買い続ける手法です。価格が高い時には少なく、安い時には多く買うことになります。定額の積立投資は「ドル・コスト平均法」と呼ばれており、投資の経験が少ない方でも抵抗なく、投資を始めやすい方法として知られています。
積立投資の始め方
ネット証券などでは、一回注文を設定すれば自動的に積み立ててくれる注文方法が使えます。株式・投資信託などで利用でき、新NISAの枠を利用することもできます(投資信託はNISAの対象商品のみ)。
ポイントは「一度設定したら、あえて見ない」くらいの心持ちでいると良いでしょう。長期投資のつもりが、日々の株価の上下に一喜一憂して売ってしまうこともあるため、こうした心理のブレに惑わされない仕組みづくりと言えるでしょう。
一括投資の始め方
一括投資は、証券口座での通常の注文により、まとまった資金を投入することになります。資金を動かすインパクトが大きいため、一時的な下落に動じない覚悟と、ある程度の余裕資金の確保が前提となります。
積立投資と一括投資の「得意」と「苦手」な局面
一括投資の「とくい」と「にがて」
相場が右肩上がりで推移する局面では、一括投資が圧倒的に有利です。また、市場全体が冷え込んでいるタイミングを的確に捉え、うまく下落時に買ってその後、株価が上がれば大きなリターンを得ることができます。
一括投資は、逆に高値圏から下落トレンドに入るような相場を苦手としています。下落局面で買い増す余力がないため、心理的にもプレッシャーになってしまいます。
積立投資の「とくい」と「にがて」
そして積立投資が真にその真価を発揮するのは、誰もが投資を辞めたくなるような暴落時です。理論では安いとわかっていても下げ続ける株価を前に躊躇してしまうのが、人間の心理です。しかし機械的な積立設定であれば、感情を無視して淡々と資金を投下し続け、結果として安値で買うことができるのです。

逆に上昇トレンドが続くような相場には不向きとされています。買いのタイミングが遅くなるほど株価が上がってしまうため、一括投資に比べたリターンは悪くなってしまいます。
積立投資と一括投資を両方活用する
ちなみに、「積立」か「一括」か必ずしもどちらか一方でなければならない理由はありません。現在のような不透明な市場環境では、両者のメリットを組み合わせた「ハイブリッド投資」も有効といえるでしょう。老後の資金のような長期で運用するコア資金は、積立投資で守りながら運用する。さらにまとまった余剰資金は手元においておき、上昇が見込めそうな相場展開のときに一括で投入するという方法もあります。
人それぞれ最適な投資のタイミングや手法は違います。両者を試してみて、少しずつご自身の投資スタイルをチューニングしてみてはいかがでしょうか。
| 積立投資 | 一括投資 | |
|---|---|---|
| 方法 | 毎月3万円など、あらかじめ決めた金額を定期的に買い続ける手法。多くの金融機関では自動で積立投資ができるサービスを提供している | まとまった資金を任意のタイミングで一括で投資する方法。証券口座での通常の注文によって行う |
| 得意局面 | ・相場の暴落時は「投資をやめたい」「売ってしまいたい」という感情に左右されず、機械的に買い続けることで、結果的に安値で買うことができる | ・上昇トレンドが続く相場では、一括投資の方がリターンは大きくなる ・下落のタイミングを捉えて一括投資できれば大きなリターンを得られる |
| 苦手局面 | ・上昇トレンドが続く相場では、リターンが一括投資に比べて悪くなる | ・高値圏から下落トレンドに入る局面では、買い増す余力が少ないため戻り相場でのリターンを狙いにくい |
次回(3月24日公開予定)は、中東情勢の緊迫化で価格が急上昇している「原油」を、投資対象として見た場合の「とくい」と「にがて」を考えます。
















