中国・武漢で発生した新型コロナウイルスの感染はおさまる気配を見せず、全世界に広がりを見せています。その影響は世界経済にもおよび、2月末から3月にかけて世界の主要株価指数が大きく下落しました。今回のマーケットの急変動は、2008年のリーマン・ショックをも思い起こさせます。株式や投資信託で資産運用をしている方にとって、株価の急落はウイルスの感染拡大と並ぶ不安材料かもしれません。
そこでMonJaでは、著名なエコノミストやファイナンシャルプランナー、当サイトの執筆者などを対象に、下記の内容でアンケートを実施。個人投資家のみなさまが新型肺炎にどう向き合えばいいか、アドバイスをいただきました。

〈質問〉
① 「新型コロナ」に端を発する今回の調整局面で、個人投資家からはどのような相談が増えていますか?

② 大きな調整局面で、個人投資家がやってしまいがちなミスややってはいけない行動には何がありますか?

③ 個人投資家は現状にどう向き合い、どのような行動をとるべきでしょうか?

④ こんなタイミングだからこそ、注目したい金融商品や投資手法はありますか?

水への投資 世界的に不可欠な資源への投資機会 BNPパリバ・アセットマネジメント

⑤ ご自身の資産運用やお金の使い方で見直した点はございますか?

⑥ 投資を継続しようかどうか迷っている個人投資家にメッセージをお願いします。

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鈴木一之さん

回答者⑪ 鈴木 一之さん
株式アナリスト
1961年生まれ。1983年千葉大学卒業後、大和證券に入社。1987年に株式トレーディング室に配属。2000年よりインフォストックスドットコムに場を移し、日本株チーフアナリストとして相場を景気循環論でとらえるシクリカル銘柄投資法を展開。テレビ、ラジオ、マネー誌で活躍中。

トラリピインタビュー

損失を抱えてしまった時こそ、保有銘柄をしっかりと吟味

② 大きな調整局面で、個人投資家がやってしまいがちなミスややってはいけない行動には何がありますか?

株式投資に関して言えば、大幅に下落したことで評価損を抱えた保有株式をチェックしなくなってしまうことです。それが最大のミスです。株式を買えば、首尾よく値上がりする時もあれば、思いに反して値下がりしてしまうこともあります。値下がりはミスではありません。そういうこともあります。

本当のミスは、値下がりしてしまった時に、その事実を受け入れられず、株式を買ったことをなかったかのように無視してしまうことです。誰だって損失を抱えた保有株式は見たくないものです。できれば目の前から消えてしまえばよいと願いながら、株を買ったという現実から逃避して、避けて通るようになってしまいます。しかしそれではいけません。

損失を抱えている、という現実を受け入れるのはつらいことですが、じっとしていてもあまりよいことはありません。事態がよい方向に向かえばよいのですが、そういう時に限って悪いことが重なるものです。避けることができないのであれば、ここは勇気を出して、現実を直視して、評価損を抱えた保有株に早く向き合った方が得策です。

投資した株式と真摯に向き合って、まず現実を受け入れて、その上でどの銘柄を保有し続けるべきか、反対に、損失を覚悟してロスカット、売却すべきかを吟味すべきです。そのような苦労の先に株式投資の果実が待っています。

③ 個人投資家は現状にどう向き合い、どのような行動をとるべきでしょうか?

最初の問いかけとも重なる部分がありますが、損失(評価損)を抱えてしまった時こそ、保有銘柄をしっかりと吟味すべきです。じっくりと長期で保有するべき銘柄なのか。それとも見切りをつけて損失を覚悟して売却するべき銘柄なのか。その判断を下すタイミングです。

逆境の時に手を差し伸べてくれる友が真の友、とも言います。株式投資もそれと同じで、順調な時はどれもこれも上昇していて、本当に投資妙味のある銘柄が埋もれてしまいます。反対に、値下がりしている局面は、下がっていてもそのまま保有していたくなる銘柄か、そうでない銘柄かの選別がしやすくなります。こうなってくると好みの問題が前面に出てきます。

損失を覚悟して売却すると、それはそれで精神的には厳しい瞬間でもありますが、どこかの時点で必ず折り合いを付けることができます。株式投資は想像以上に心理的な要素の強いゲームでもあります。実務的にも投資資金に買いの余力が空くことになるので、また新たな投資の機会がやってきます。

そしていったん保有を継続すると決めたならば、そこから先はあまり株価のことは気にせずにじっくりと成果が出るまで待つべきかと思います。(その後も時々は株価をチェックして、あまりに値下がりするようだと考えなくてはなりませんが)

日本の企業にとって大きな成長の機会となる

④ こんなタイミングだからこそ、注目したい金融商品や投資手法はありますか?

株式アナリストとしては、やはり株式投資が魅力的だと思います。企業は株主に対して、配当の支払いをこれまで以上に厚くする方向で行動するはずです。また「社会的責任投資」やESG投資が拡大しており、企業は選ばれた企業として認められるためにも、社会に対してよき企業市民の一員であろうとこれまで以上に努力することになります。

金利はまだしばらく、現在の「ゼロ金利」に近い状態が続くと見られるため、利回りを得ようとしてもむずかしい時代です。世界経済はこれまでのようなグローバルな成長やプラットフォーマーが独り勝ちを続けられる状況が徐々に見直され、その分むずかしい局面に入りつつあります。そうなってくると逆に、日本の足元の安定感を見直そうという機運が高まるとも考えられます。

日本には厚みのある豊かな内需経済が、手つかずのまま横たわっているように見えてきます。農業に代表されるように、昔から存在する伝統的なビジネスを新しいテクノロジーで改良し、生産性を高めてゆくような若く新しい企業がここからたくさん出てくるのではないかと期待できます。

伝統的な大手企業にもチャンスは十分にあります。日本の企業にとっては国内市場に意外と大きな成長の機会と位置付けてよいのではないでしょうか。株式投資には大きな魅力が感じられてなりません。

⑤ ご自身の資産運用やお金の使い方で見直した点はございますか?

あまり意識しては変えておりません。変わってもいませんが、やはり新型コロナウイルスの感染拡大に伴って、家族全員の外出の機会が減っています。

そこで週末など、家の中で過ごす時の楽しみのために、以前であればどなたかへの手土産としてでしか買ったことのなかったスイーツの詰め合わせなどを、自宅用に買って帰るようになりました。単価としては2000円くらいの、ささやかなスイーツ詰め合わせです。ほんの小さな変化ですが、大きいと言えば大きいですね。

⑥ 投資を継続しようかどうか迷っている個人投資家にメッセージをお願いします。

何ごともそうですが、最初の一歩を踏み出すことは勇気がいります。たいへんです。しかし何ごとも、そのような最初の一歩がないと始まりません。株式投資に限らず、およそ世の中の物事すべてが、自分で決めて自分で実行する、という作業が必要です。そのひとつに投資(私の場合は、株式投資)が位置づけられます。

「世の中」のあらゆる物事が株式投資に集約されると思います。それくらい奥の深い世界です。ぜひとも思い切って、最初の一歩を踏み出してみてください。広大な世界の広がりにドキドキ、わくわくすること間違いなしです。

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