2021年は「東日本大震災から10年」の節目の年です。予測できない自然災害への備えは常に万全にしておかなければなりません。日本の社会インフラは老朽化が深刻になっており、そこには大きなビジネスチャンスが存在します。国内のインフラを取り巻く現状と注目銘柄について、株式アナリストの鈴木一之さんに解説していただきました。

  • 2060年までの50年間で、社会資本の更新費用が190兆円にのぼる
  • 社会インフラに関する維持・補修工事が大きなビジネスチャンスに
  • 橋梁関連、測量関連など社会インフラの保守点検を担う企業に注目

予測できない自然災害に対して事前の備えが肝心

月が替わって12月になりました。2020年のカレンダーも残すところあと1枚になりました。今年ほど「時の過ぎる速さ」を実感した年もありません。本当に早いものです。

まもなく2021年を迎えます。コロナ危機を克服して東京オリンピック・パラリンピックをみごとに成功させることが日本の悲願となっていますが、同時に2021年は「東日本大震災から10年」の節目の年でもあります。

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あの大震災から10年が経ちました。亡くなられた方、行方不明の方が23,000人を超え、阪神・淡路大震災の6,400人を大きく上回りました。建物の被害も、全壊が12万棟、半壊が28万棟、一部損壊が74万棟にのぼります。福島第一原発事故は幾重にも張られた防護システムが打ち砕かれ、原発の絶対的な安全性が完全に否定されました。

目下のところはコロナウイルスへの対処に万全の体制で臨むのが最優先ですが、忘れてならないのは前触れもなく襲いかかる大地震や豪雨です。予測できない自然災害に対しては事前の備えが肝心です。

老朽化が深刻な日本の社会インフラ

わが国ではたび重なる自然災害により大きな被害がもたらされてきました。宅地開発が進み、山のふもとまで住宅地が広がったこと、地球規模の気候変動の影響で集中豪雨が局地的に発生しやすくなっていることが原因とされています。全国の土砂災害警戒区域は、2015年の45万か所から2020年2月には61万か所まで増加しています。

東日本大震災を経験して、2013年には「国土強靭化基本法」が施行され、2014年には国土強靭化基本計画が閣議で決定されました。それによって都道府県と市町村が主体となって、防災・減災に必要な地域計画を策定することとなりました。

日本の社会インフラは全国一斉に老朽化が深刻になっています。

東日本大震災の直後、2012年に中央自動車道の笹子トンネルで天井板の崩落事故が発生しました。2019年の台風15号では、千葉県の送電線の鉄塔が倒壊して付近の10万戸が停電するという被害が起きました。

水道の漏水と破損は全国で毎年2万件も発生しています。2018年に起きた大阪北部地震では、水道管の破裂により広範囲にわたって断水が発生しました。

2014年から2018年にかけて、国土交通省と地方自治体がインフラ老朽化の点検を行ったところ、全国の64,000カ所の橋、4,400カ所のトンネル、6,000カ所の歩道橋が5年以内に修繕が必要と判定されました。

トンネルは健全な状態のものが全国で2%しかなく、4割のトンネルは5年以内に早急な修繕が必要となっていました。

水道は市町村が水道料金を徴収し、独立採算で事業を行うことが原則とされています。ところが人口減少によって料金収入が減り、全国の1割の自治体が赤字となっています。規模の小さな自治体ほど経営状態が悪く、十分な設備更新ができないのが現状です。

全国で73万橋ある道路橋のうち、建設後50年以上が経過する割合は、2018年に25%ですが、2023年には39%、2033年には63%になります。

建築後50年を経過するインフラの割合
建築後50年を経過するインフラの割合出所:国土交通省

同じように全国で1万1000本あるトンネルのうち、建設後50年以上が経過したものは、2018年に20%ですが、2023年には27%、2033年には42%に達します。

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