「預金なら安心」って本当なの? 「元本保証」って、実際に何を保障してくれるの? 実は、現金にもリスクが潜んでいるのです。本連載ではそんな「現金のリスク」を切り口に、お金のほんとうの価値を守るための資産運用について考えていきます。今回は、NYダウを超える“フェイクミート”みたいなインデックス「配当貴族」について見ていきます。

  • 米国の株価指数「S&P500配当貴族指数」のパフォーマンスはNYダウを上回る
  • 配当貴族には、配当が毎年増えている(増配を続ける)銘柄が採用される
  • 配当貴族の銘柄は、資金調達など財務面で安定している企業が多い

その名も「貴族」?

最近の報道を見ていると、「高値更新」のドルと、29年ぶりに「回復」した日経平均の話でもちきりですね(笑)。

前々回は、アクティブ運用を「肉食系」、パッシブ運用(インデックスファンド)を「草食系」にたとえて、アクティブとインデックスの違いについて説明しました。そして前回は、「インデックスなのに、まるでアクティブのような“フェイクミート”」として、アメリカのNYダウの例を紹介しました。

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ところで、もしNYダウを超えるパフォーマンスの可能性を秘めた「フェイクミートみたいなインデックス」があったとしたら……いかがでしょうか? 日本や欧州、中国などに比べて歴史が浅いアメリカに、「貴族」は存在したのでしょうか?

そうです。実はアメリカには、「S&P500配当貴族指数」というインデックスがあります。リーマン・ショック直前の2008年からのグラフをご覧いただくと、新型コロナウイルス感染症が流行するまでは、NYダウを超えるパフォーマンスを描いています。
(グラフは実際の指数ではなく、各指数に連動する海外ETFの価格の比較ですが、配当貴族のETFはNYダウやS&P500のETFより分配金を多く支払う傾向があり、分配金の分だけETFの価格は下がるため、配当貴族の指数自体のパフォーマンスは下記のグラフよりさらに高いと考えられます)

【図表】米国株価指数に連動するETFの価格の推移
米国株価指数に連動するETFの価格の推移
※比較に用いたETFは下記のとおり。
S&P500:SPDR S&P 500 ETF Trust(SPY)
NYダウ:SPDR Dow Jones Industrial Average ETF Trust(DIA)
S&P500配当貴族:SPDR S&P Dividend ETF(SDY)
2008年1月2日の価格を100として指数化、2020年11月30日まで

筆者は大学では日本文学を学んでいたので、「貴族」という響きにはアメリカとはかけ離れた「雅」なイメージが浮かびます。その上、「配当」貴族ですよ! 配当金から収入を得る、優雅な暮らしを思い描いてしまいそうです。

はてさて、言葉が発するイメージだけを追ってしまいましたが、肝心の中身を垣間見ていくことにしましょう。

S&P500配当貴族指数(S&P 500 Dividend Aristocrats)とは

S&P500配当貴族指数(以下、配当貴族)とは、アメリカの株式を対象としたアメリカで発表されている株式指数(インデックス)の1つです。
インデックスである配当貴族の対象となる株式、つまり構成銘柄となるための条件は以下の通りです。

  • S&P500の構成銘柄であること
  • 大型企業であること
  • 25年以上にわたり連続して増配を実現していること

配当貴族の構成銘柄のうち、日本にいる私たちにも馴染みのありそうな銘柄(=企業)をいくつか挙げてみましょう。いずれも、少なくとも名前くらいはご存じの会社ではないでしょうか? ちなみに会社名の後のカッコ内の数字は「増配の年数」です。

  • P&G(63年間)
    衣料用洗剤や柔軟剤などで著名ですね
  • Coca-Cola(57年間)
    そうです! あのジュースなどでご存じの会社です
  • McDonald’s(44年間)
    お馴染みのマックですが、アメリカの企業です
  • Aflac(37年間)
    がん保険で有名なアフラックですが、やはりアメリカ企業です

増配とは、単に「毎年、コンスタントに株主に配当金を支払い続けている」だけではありません。「株主に払う配当金の額が、毎年、コンスタントに増え続けている」という意味です。何十年と、中には半世紀を超えて配当金の額が増え続けている会社もあるのです。

ハンバーガーとコーラ
日本でもおなじみの会社も配当貴族に採用されている(写真はイメージです)

配当貴族の構成銘柄は、2020年時点で64銘柄。うち50年以上にわたって連続増配しているのは15銘柄です。最も長きにわたり増配しているのは、総合工業製品メーカーのDoverで、64年間です。

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