現役証券アナリストの佐々木達也さんが、株式市場で注目度が高い銘柄の強みや業績、将来性を解説する本連載。第86回は、玩具メーカー大手で、「プラレール」や「リカちゃん」、「ベイブレード」など数多くのロングセラーのブランドを持ち、海外にもファンを拡大中のタカラトミー(7867)をご紹介します。
- タカラトミーは多くのヒット商品を生み出し、有力IPを数多く保有している
- 広範なメディア展開や海外事業、「キダルト」路線などで収益力を強化
- 株価は調整局面だが、IPを活用したキャラクター展開に期待して押し目買いを検討
タカラトミー(7867)はどんな会社?
タカラトミーはグローバルで事業展開するおもちゃメーカーです。主な事業として、おもちゃや乳幼児製品の玩具事業と、カプセルトイやおもちゃ菓子、鉄道模型などを展開する玩具周辺事業を国内外で展開しています。
同社は2006年に「ベイブレード」などの旧タカラと、おもちゃメーカーの旧トミーが合併して誕生しました。「トミー」は1924年に創業者富山栄市郎が、前身となる富山玩具製作所を創設しました。1964年には現在の社名にも残るトミーなどに商号変更しています。「タカラ」は佐藤安太が1955年に設立した佐藤ビニール工業所を前身として、1966年にタカラに商号変更。タカラとトミーは日本の高度成長とともに事業を拡大し、「プラレール」(旧トミー)、「リカちゃん」「人生ゲーム」「チョロQ」(旧タカラ)など、様々なヒット商品を生み出してきました。

プラレールの誕生は1959年。現在に至るまでタカラトミーの看板商品のひとつとなっている
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有力IPを多く保有し、収益力を最大化する複合展開
タカラトミーは有力IP(知的財産)を多く保有しています。例えば、「ベイブレード」「リカちゃん」「トミカ」「プラレール」などのブランドがあり、これらは国内だけでなく海外でも人気があります。さらに、アニメや映画とのタイアップを積極的に行い、玩具に限らず広範なメディア展開などを行っています。例えば「ベイブレード」では、大会も盛り上がっており、アジアチャンピオンシップや国内大会のほか2024年からは欧米でも本格展開を始め、ファン層の獲得や知名度向上などにつながっています。
「キダルト」 の広がりも同社の追い風です。「キダルト」は「キッズ」と「アダルト」を組み合わせた造語で、主に大人が子ども向けの商品や遊びを楽しむことを指します。子どもだけでなく大人もターゲットにした商品展開を行っています。
タカラトミー(7867)の業績や株価は?
タカラトミーの今期2025年3月期決算は売上高が前期比15%増の2400億円、営業利益が22%増の230億円を見込んでいます。今期は欧米や北米では「ベイブレードX」の販売が伸びています。国内ではインバウンド効果や「ちいかわ」などのキャラクター人気で、玩具・雑貨などの小売りを行う子会社のキデイランドを始め各事業が好調です。そのほかぬいぐるみなど年齢軸が拡大しており、主力ブランドも好調です。
3月7日の終値は3455円で投資単位は100株単位となり、最低投資金額は約35万円、予想配当利回りは1.6%です。

株主優待は保有株数に応じており、オリジナルの「トミカ」や「リカちゃん」などの自社商品が進呈されます。さらに保有株数に応じて「タカラトミーモール」で利用できる10%~40%の割引券ももらえます。3年以上保有で割引率が40%と非常にお得になるため、小さい子どものいる家庭などで人気の株主優待です。
同社は現行の中長期経営戦略で、2030年3月期の業績目標を売上高が3000億円、営業利益300億円、営業利益率10%と設定しています。玩具メーカーから「アソビ」メーカーへの成長をスローガンに、ブランド戦略として年齢軸の拡大と地域軸の拡大を主眼としています。年齢軸の拡大ではコアファンのための高付加価値、多品種展開を進めると同時に、ライトファン獲得のために既存ブランドを生かしたすそ野拡大を図ります。海外展開による事業地域の拡大も進め、地域軸についても広げる算段です。
株価は2月7日に上場来高値5119円まで値上がりしましたが、その後は利益確定売りで3000円台まで調整局面となっています。2月12日に発表した24年4~12月期決算で直近の四半期の利益の伸びが鈍化したのも嫌気されました。しかしIPを活用したキャラクター人気はさらに広がりを見せる中、アソビメーカーとしての同社の事業機会も今後拡大が予想されます。株価も下値を固めた後は、再度の高値トライの可能性も高いとみて押し目買いのタイミングを考えたい場面かと思います。