「企業価値」と「株価」の違いを理解しよう


福沢 隆雄
若葉マークの株式投資 代表

「株は安いところで買いたい」。

株式に投資する多くの方がこのように思っているのではないでしょうか。株式の買付けに当たっては、投資対象企業の「企業価値」と「株価」の違いを理解することが大切です。株式投資の本質である企業価値を見つめ、株価の日々の動きに惑わされないようにしましょう。

「安定成長企業」は、企業利益が年々増加し、企業に蓄えられる財産も増大します。その結果、企業価値は年々増大していきます。一方、「株価」は短期的に見ると上下を繰り返すものです。例えば、東日本大震災や米中貿易戦争などの出来事の際は、多くの銘柄が売られ、市場全体で下落しています。これは企業業績が安定して成長している安定成長企業であっても同じです。

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安定成長企業の「企業価値」は年々増大するが、「株価」は短期的に上下を繰り返す

このように、「株価」と「企業価値」は短期的に別の動きをすることがよくあります。企業価値を評価し、安い時に株を買うようにしましょう。

「企業価値」を評価して「安値圏」を算出しよう

では株式の買付けにあたり企業価値を具体的にどう評価すればいいのでしょうか。安定成長企業に投資する場合は、その特性から買値のメドとなる「安値圏」を算出する方法があります。

安値圏とは、株価の「安値」から「底値」の範囲をいいます。安定成長企業の安値を算出する方法は、第6回で説明しました。計算式は、「1株当たり利益(予想)×過去3年間の安値平均PER」です。これでピンとこない方は、第6回の記事を読んでみてください。

会社に蓄えられた財産=底値と見る

底値とは「もうこれ以上下がらないだろう」と思われる水準をいいます。安定成長企業の場合は、企業に蓄えられた財産(一株当たり純資産)を底値と見ることができます。純資産とは、企業が借りている借金を返済し、保有する工場などの資産をすべて処分して会社に残る財産のことです。このため解散価値ともいわれ、企業が解散した場合に株主に返される財産となります。

1株当たり純資産の数値が高いほど、会社の安定性が高いと評価されます。上場会社の1株当たり純資産は会社四季報などに掲載されています。

株式の底値を知ることはとても大切なことです。株式を保有している場合、1株当たり純資産を把握していないと株価が暴落した際どこまで下がるか判断できずに怖くなります。

例えば、保有している株式の株価が1,200円として、その1株当たり純資産が800円とします。その後、マーケット全体が大幅に値を下げ、その企業の株式が900円に下がったとします。するとそろそろ底が見えてきた、などという検討ができます。また、買付けの際も同様に底値が参考となります。

株価は気まぐれ。「安値圏」を買値の参考に

安定成長企業の安値圏を表にしたのが下図です。この会社の2019年3月期の1株当たり純資産は800円、1株当たり利益は90円とします。また、来期2020年3月期の1株当たり利益(予想)は100円、安値平均PERは10倍です。この場合、株価の底値は800円、安値は1,000円(100円×10倍)となります。株価は気まぐれです。安定成長企業の企業価値から評価を行い、「安値圏」を買値の参考としてください。

安定成長企業の企業価値を評価し、安値圏を算出

企業を見る目を養い、投資企業の成長を見守ろう

大きなニュース(例:米中貿易戦争)があった時など、安定成長企業も他の銘柄同様に株価が下がります。しかし、株価が下落しても「企業価値」がただちに下がるわけではありません。安定して成長する企業であれば「企業価値」は変わりません。また、その後、企業収益が堅調であれば企業価値が増加していきます。

あなたが何か品物を買う場合、その価値とおおよその値段がわかっていると、大きな失敗はありません。株式も同じです。1,000円で買った株式を1,100円になったらすぐに売ることばかり考えている内は「企業価値や企業成長を見逃す」ことになります。まず、企業を見る目を養い、安定成長企業の「企業価値」に注目して、株価が安い時に買い、株式を保有し投資企業の成長を見守りましょう。

安定成長企業投資のポイント

~企業の価値と買い時を見極め、投資企業の成長を見守りましょう~

次回(7月17日予定)は、得意銘柄について説明したいと思います。安定成長企業のなかから自分の得意銘柄を作りませんか。

第6回 「PER」を株価評価のものさしに

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