金融と最先端のテクノロジーが交わることで、これまでにはなかった新しいサービスや商品が日々生まれています。本連載では、金融業界の最新動向や新たな分野の金融サービスを紹介していきます。

新進気鋭のスタートアップが、フリーランスの“資金繰り”の悩みを解決

複業やクラウドソーシングなど、個人の働き手の間に「正社員でフルタイム勤務」以外の就業スタイルが広まりつつあります。会社員からフリーランスへと転身する人も、ひと昔前に比べて増えてきました。

業種を問わず、多くのフリーランスに共通の悩みが資金繰りです。「手元に運転資金(現金)が無くて材料を仕入れられない……」、「大きな案件が取れたけど、請求できるのは2カ月後だ……」など、仕事を受注できても、お金で困っているフリーランスは多くいます。

支払いタイミングについて交渉したくても、難しいケースも多々あることでしょう。そうした資金繰りの悩みを、報酬即日払いサービス「yup 先払い」なら解決できるかもしれません。なんと、入金前の案件の請求書を登録することで、本来なら数カ月後に受け取るはずの報酬を即日受け取れるんです!

フィンテック業界に一歩を踏み出したばかりのスタートアップ企業「yup」(ヤップ)の創業者で、代表取締役社長の阪井優さんにサービスの特徴や起業における苦労、フィンテックの力で今後実現していきたいことなどを伺いました。(取材日:2019年10月3日)

阪井優氏
阪井 優(さかい・ゆう)
yup株式会社 代表取締役社長
1989年大阪府堺市生まれ。智辯学園高等学校、大阪教育大学卒業後、NTTドコモ、コイニー(2018年に「hey」のグループ化)を経て、2019年2月にyupを創業。友人のフリーランスの資金繰りの大変さに衝撃を受けたことを原体験として、フリーランス向け報酬即日払いサービス『yup先払い』を開発・提供している。

書類不要&オンライン完結型の「ファクタリングサービス」

「yup 先払い」の概要と特徴を教えてください。

阪井 個人事業主や法人を作って活動しているフリーランス向けの報酬即日払いサービスです。取引先に送った請求書データを「yup 先払い」にアップロードしていただくことで、ユーザーは本来の入金期日より前に報酬や売掛金を受け取れます。

本来の支払日より早く現金が必要になった際、以下の4つのステップで「yup 先払い」をご利用いただけます。

① クライアントに請求書を送る
② 「yup 先払い」に請求書をアップロード⇒最短で即日現金が振り込まれる
③ ①の請求書の支払期日に、クライアントから報酬が振り込まれる
④ ユーザーは受け取った報酬を「yup」に振り込む

また、サービス利用時には氏名、住所、電話番号などの個人情報のほか、事業種別や業種、平均月間売上などの事業者情報と本人確認情報を登録いただきます。本人確認が完了すれば、最短で請求書データをアップした当日中にユーザーの指定する口座に現金が振り込まれます。

報酬を即日受け取る
「yup 先払い」の利用イメージ

「yup 先払い」の特徴はなんでしょう?

阪井 最大の特徴はサービスの利用にあたって必要な手続きが、決算書や確定申告といった書類が不要で、すべてオンライン上で完結することです。現状、そのような書類が不要で、ユーザーの情報取得や管理、本人確認、審査などをオンライン上で完結するサービスは当社の「yup 先払い」だけです。

「yup 先払い」が提供するのは、専門的な言葉で言うと、未回収の売掛金を買い取る「ファクタリング」というサービスです。ファクタリング自体を提供する事業者は日本にも多くありますが、利用する際に決算書や確定申告書の控えなどが必須だったり、銀行の通帳をスキャンしたデータが求められたりと、けっこう手続きが煩雑です。

しかも、その多くは零細~中小企業向けにサービスが提供されており、フリーランスでも利用できるサービスは今までありませんでした。

フリーランスの方は、ある日突然、思いもよらないことで資金繰りが厳しくなります。例えば、クライアントの都合で支払い期日が先に延びることは珍しくないです。ものづくりに携わる方は、材料の仕入先の都合で予定より先に支払いをしなければいけないこともあるでしょう。

そうした状況を踏まえ、スピーディーかつシンプルな方法で、フリーランスの方でも運転資金を調達できる方法を提供したいと考えて、「yup 先払い」をリリースしました。

無料登録ユーザー登録代表者情報の入力

「yup 先払い」のアカウント登録画面。入力情報と運転免許証やパスポートの画像データを基に、本人確認と審査を行う

サービス利用時の手数料について教えてください。

阪井 「yup 先払い」で申請した金額(請求書の請求金額)の10%をサービス利用料として受け取っています。初期費用や月額費用はかかりません。現状のサービスはβ版で、今後運用が軌道に乗ってきたらユーザーへのヒアリングを行い、利用実績に応じて手数料が下がっていくなど、新しい手数料体系も検討していきたいです。

※ 申請金額からサービス利用料(申請金額の10%)、振込手数料(250円)を差し引いた金額が振り込まれる

「審査」では、どんなことをチェックするのですか?

阪井 具体的には、自社で開発した独自のアルゴリズムで、請求書登録時のデータを基に、ユーザーと取引先の情報を解析し、与信判断を行っています。

2019年10月からは、本人確認をすべてオンラインで完結する「eKYC(Know Your Customer)」サービスを提供する「TRUSTDOCK」と業務提携し、本人確認を委託しています。同社のサービスを活用することで、本人確認にかかる手間を省け、審査スピードの短縮にもつながりました。

与信チェックに関しては、まだ完全に機械化できてはいなくて、人の手が関わっていますが、ITを活用して完全自動化することで、審査時間のさらなる短縮を目指します。