本連載では、税理士に寄せられた相談者からの質問をもとに、主に「おひとりさま」の相続に関するさまざまな疑問に答えていきます。第14回は、配偶者も子どももいない末っ子のおひとりさまが、法定相続人がいなくなった後で他人に財産を遺贈する場合の「相続税対策」について考えます。

財産を引き継ぐ相手に、事前に遺志を伝えておく

「遠くの親戚より近くの他人」などということわざが日本にはありますね。

私は自分と同じ年代の親類が少なかったこともあり、従妹など親戚と一緒に遊んだ思い出があまりありません。そして自分に子どもがいないため、会社時代の後輩たちが子供服売り場やおもちゃ売り場に行くときに同行してみたり、夏休みに戦隊モノのイベントに一緒に行って他の親子に交わり、くじ引きの長い行列に並んだこともありました。
子供連れで外出するのがどんなに大変か身をもって知ることができて、楽しい思い出です。

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Q.
私は15年前に離婚をしました。子どもはおりません。兄妹も独身で子どももいません。
末っ子の私は、年の順で考えると相続人がいなくなるため、私の財産は今住んでいる自宅不動産と投資信託や株式、1千万円程度の預貯金がありますが、財産をかつての同僚の子どもたちに遺贈したいと考えています。
そんな場合でも、相続税の節税の方法はあるでしょうか?

A.
不動産など、後の管理や手間を考えれば、受け取っても喜べない場合もあります。
血縁関係のない他人への財産の遺贈では、相続税対策以上に、引き継ぐ側がメリットを感じられる財産にすることが大切です。具体的には、より利便性の高い不動産に転換する、不動産を現金化するなどの方法があります。

今回の相談者は、離婚を経ておひとりさまになったとのこと。良い縁に恵まれなかった相談者に対して、かつての同僚がいろいろと気づかってくれたそうです。バーベキューや子どもの運動会などにも同行させてもらい、同僚の小さい子どもたちに懐いてもらったことが、今でも楽しい思い出として残っているようです。

現在も良い関係を保ち続けている元同僚の子どもたちに対して、もしもの時には財産を遺贈したいということ。ただし、現在保有している不動産や預貯金などを調べてみると、どうやらある程度の相続税がかかってしまうようです。
法定相続人ではない他人に対する遺贈において、節税するためにはどうすればいいのでしょうか?

トラリピインタビュー

まず、相続税の節税を検討する以前のこととして、血縁関係のない他人に遺贈を考えている場合、事前にその意思を相手方に伝えておくことが望ましいといえます。
以前の回でも書きましたが、遺贈の場合、受贈する側が「NO」と言えば、遺贈の遺志が叶わないこともあります。多少の財産をもらっても、その財産の後の管理や手間を考えると、欲しくないと考える方も多いからです。

おひとりさまの遺志を確実に伝える遺言書の手続き

例えば不動産の遺贈を受けると、相続税のほかに、その後に不動産の名義を変更するための登録免許税や不動産取得税という税金がかかります。また、その不動産をそのまま持っていれば毎年、固定資産税の納税義務が出てきます。もらう側としたら直接「現金」をもらうのはうれしいけれど、「現金」はもらえないのに「不動産」をもらったら、逆に手持ち資金が減ってしまうことになります。いらないと考えるのも仕方ないでしょう。

自分の生きた証となる財産を、少しでも生前に付き合いのある、気持ちの通じる誰かに引き継いでもらいたいと考えるならば、その財産を受け継いだ側にもメリットを感じられる財産として遺さなければなりません。

資産を転換し、遺贈財産の総額を引き下げる

今の財産をメリットのある財産に転換するために資金を使ってしまい、遺贈財産の総額を引き下げてしまうのが相続税の対策として第一に考えられる方法です。

例えば売却の難しい、立地の良くない不動産をお持ちならば、土地の面積が半分、1/3以下になってしまったとしても、後の賃貸や売却のために有利な利便性の良い不動産に買い替えてしまう。
あるいは、現在住んでいる不動産を売却し、財産を現金化しておき、自分は介護付き有料老人ホームに入居する。
このように、引き継ぐ財産の総額は少なくなってしまったとしても、受贈者が喜んで引き継いでくれる方法を選択することが望ましいでしょう。

田舎の家屋
利便性が良くない地域の不動産を遺贈されても受贈する側が困ってしまうため、受贈する人にとってメリットがある形にする

最近では「死」について話をすることを「縁起が悪い」などと躊躇することが少なくなってきました。自分の「死」について、後に残る人にしっかりと意思を伝えることが、前向きな老後の生き方と考えられるようになってきています。

引き継ぐ相手が血縁関係のない他人ならばなおさら、事前に意思を伝え、どのような形にして引き継ぐことがお互いにメリットあるのかをよく検討してください。

受贈者をあらかじめ養子にむかえるなどの方法が流行った時代もありますが、よほどの財産家ではない限り、私は戸籍を変えてまでもの節税はお勧めしていません。その前に検討すべき方法はたくさんあるからです。
財産の遺贈について、どんな方法があるのかわからないという場合には、その遺贈者、受贈者がごいっしょに、税理士など相続の専門家に相談されることをおすすめします。

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