宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。今回は、円安や利上げなど世界経済が激しく動いている今、どうやってお金の価値を増やしていけばいいかを考えます。

  • マーケットに悪材料が出ているときは、安値で積立投資をできるチャンス
  • この1年で金利上昇と円安が進み、外貨建てMMFや外貨預金の利回りが大幅上昇
  • 株価は下がったが、安く買えるため長期積立投資には有利な状況

投資、運用、積立は早めにやったもん勝ち

【質問】
昨年だったかな、銀行に行ったら、お金を増やすためNISA、iDeCoしませんか?と勧められましたが、無知な私には意味もわかりませんでした。その時は断ったのですが、つい最近も銀行で言われました。今の時代、お金を増やすことがマジにできるんですか? 借金もあるし、損が出ると困るんですが、本当に始めてもいいんですか?

今回の問題は、第1回第2回のマネー相談室でも述べています。絶好な買い場が出始めた今だからこそ、NISAやiDeCoを考えるべきです。

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初心者が向き合う投資戦略において、何が一番必要なのか? さあ、いよいよリスクと向き合うことで「お金の価値」を高めるチャンスがめぐってきたかもしれません。特につみたてNISAなど、投資信託が安値圏で買える環境にあるからです。

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普段はほったらかして、必要なときはすぐ換金できるつみたてNISA

あと2、3年は続くと思われる不透明な世界経済。ロシアによるウクライナ戦争、隣国中国の領土問題、燃料や資源の高騰による急激なインフレ、金利上昇による景気後退懸念など、悪材料は目白押しです。各国とも、景気と財政のバランスを考えながらの経済政策を強いられています。

一方で、悪材料が多くなったということは、コツコツと安値で積立投資をしていけば、やがて花開く結果となる可能性は大といえるでしょう。5年、10年、20年先を見据えた「お金の価値」を考えると、今は株式や投資信託などの金融商品を、間違いなく安く買えます。

私も資産運用の相談を受けるときは必ず言わせてもらうのですが、「投資、運用、積立は、なるべく早めにやったもん勝ちですよ」。この言葉、なかなか投資初心者には響かないのですが……。

トラリピインタビュー

そこで今回は、相談者が最初に銀行から勧められた1年前に投資を始めていたら、1年経った今「お金の価値」がどうなってるのかを、代表的なリスク商品を当てはめながら検証していきます。1年前に100万円を預けて、儲けはいくらになったか? 無理やりですが、直近1年間とその前の1年間の「利回りの差」を、実際の市場環境をもとに独断と少しの偏見で設定してみました。

短期投資なら外貨建てMMFや外貨預金が有利

以下の検証はあくまでイメージであり、実際にお金を預けた場合の利益とは異なりますが、一部の商品で利回りが大きく変わっているのは事実です。私の「早めにやったもん勝ち」の意味が少しでも理解できれば幸いです。ちなみに、今日本で100万円を1年の定期預金に預けたら20円(0.002%)の儲けで、これは1年前と変わっていません。

こちらが商品別の検証結果です。

①外貨預金
通貨 直近1年間の
利益(利回り)
昨年までの
1年間の利益(利回り)
米ドル 40,000円
(4%、為替差益を除く)
1,500円(0.15%)
豪ドル 35,000円
(3.5%、為替差益を除く)
500円(0.05%)
②投資信託
種類 直近1年間の
利益(利回り)
昨年までの
1年間の利益(利回り)
米ドルMMF 310,000円
(2.2%以上、
為替差益30%含む)
1,000円(0.1%)
バランス型
投資信託
20,000円
(2%以上)
20,000円
(2%以上)
株式型投資信託
アクティブ運用
-1,000円
(-0.01%)
40,000円
(4%程度)
③個人向け国債
種類 直近1年間の
利益(利回り)
昨年までの
1年間の利益(利回り)
3年・5年満期 500円(0.05%) 500円(0.05%)
10年満期 1,700円(0.17%) 500円(0.05%)
④株式投資
銘柄 直近1年間の利益(利回り)
コメダホールディングス 200,000円(20%)
アンジェス -600,000円(-60%)
トヨタ自動車 -10,000円(-1%)
⑤不動産投資
種類 直近1年間の
利益(利回り)
昨年までの
1年間の利益
不動産投資信託
(Jリート)
配当金30,000円 30,000円
マンション投資
(現物)
家賃収入40,000円~
(4%以上)
40,000円~
アパート経営
(現物)
家賃収入70,000円~
(7%以上)
70,000円~
⑥確定拠出年金(iDeCo)
種類 直近1年間の
利益(利回り)
昨年までの
1年間の利益
元本確保型商品で
運用
所得税減税効果
3~7%
3~7%

どうですか? 結果は独断ではありますが、1年でもこれだけの変化があるのが経済です。特に最近は、米国でインフレ抑制のための利上げにより、マーケットの動きが非常に大きくなっています。

①の米ドル外貨預金や②の米ドルMMFだったら、この1年で40,000円以上の利回りを確保できた結果になります。特に②米ドルMMFは何度か話してきましたが、短期金利の上昇と為替効果もあり、昨年から圧倒的なパフォーマンスを得ています。

MMFは、直近7日間の分配実績を年換算した利回りが運用会社のホームページで公表されています。米ドルMMFは、足元では年利2%を超えるまで上昇しています。仮に1年前ですと、1ドル=110円で投資していたら、3月の利上げ以降の日々得られる分配金の増加だけでなく、現時点の為替レートは1ドル=約148円なので、38円(110円に対し30%以上)の為替差益も得たことになります。

現時点の投資には米ドル建てMMFや、価格変動リスクがない外貨預金は欠かせないと思います。今後も利上げが続くと予想できるので、利回りが相対的に低くなっていく米国債券や、価格が下がるリスクがある米国株式にまとまったお金を投資するのは、短期的には慎重になった方がいいでしょう。

長期の資産形成なら、安く買える株式が狙い目

④株式投資の例もあげましたが、新型コロナワクチンの開発を中止したアンジェスの下げ、物価上昇をうまく価格転嫁できているコメダホールディングが上げと、株価に大きな差ができました。株式の価格変動リスクの怖さでもあります。トヨタ自動車も、輸出と原材料高騰のバランスが保てていない状況が見えています。

相対的に利回りが安定しているのが⑤不動産投資ですが、現物不動産については現物投資の難しさ(借入金、メンテナンスなど)も考えないといけません。

検証結果を見ると外貨建て運用商品の一人勝ちに見えますが、裏を返せば、今なら株式投資は安値で買えるチャンスともいえます。利上げの影響で、株価はさらに下がっていくかもしれません。短期投資なら株式は危ないですが、長期の資産形成を目指す積立投資では、安値圏で継続して買っていくことが大事なので、株式や株式型投資信託への積立を継続することをおすすめします。

そう考えると、⑥確定拠出年金(iDeCo)みたいに解約できない仕組みでの運用商品の積立は、メンテナンスさえ怠らなければ長期の資産形成には絶対ありです。

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