レポート提供:ニッセイアセットマネジメント(2019年6月19日)
- 米国は6月5日、貿易障壁により米国の輸出に悪影響を及ぼしているとして、インドとトルコを一般特恵関税制度(Generalized System of Preferences:GSP)の適用から除外。インドは対抗措置として、米国からの約30品目の輸入品に対する関税の引上げを実施。
- 米国のGSP適用除外の措置は対象金額が相対的に小さく、インド株式等への影響は限定的か。
(1)米国がインドを一般特恵関税制度から除外
トランプ米大統領は5月31日、貿易障壁が米国の輸出に悪影響を及ぼしているとして、米国通商代表部(USTR)が3月4日に発表したインドおよびトルコをGSPの対象から除外する措置に関する大統領布告を発表しました。当措置は6月5日から適用が開始されました。GSPとは新興国の発展を促すために設けられた制度で、対象となった国からの輸入品の一部にかかる関税を免除する仕組みです。USTRによると、2018年のGSPの対象となったインドからの輸入額は約62億ドル(約6,800億円)で、前年比約10%増加しています。インドは米国の最大のGSP対象国(2017年時点)です(図表1)。
【図表1】米国GSP適用の対象輸入額の構成比
出所:USTR、CEICデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成
(2)インドが米国からの輸入品の関税引上げ
インド政府は6月16日、米国が昨年実施した鉄鋼やアルミニウムの輸入制限に対抗し、米国からの輸入品のうち、鉄鋼製品やリンゴ、アーモンド等の農産物を含む約30品目に対する関税の引上げを同日から実施すると発表しました。インド政府は、今回発表した追加関税の対象品目の輸入額は明らかにしませんでしたが、米国の鉄鋼等の輸入制限による損害額(インド政府によると約2.4億ドル(約260億円))を前提とした金額になるものと見られています。
米国からの鉄鋼製品等の輸入品に対する関税引上げは、当初は昨年8月から実施される予定でしたが、両国での協議が続き、延期されてきました。今回の発動の背景には、米国がトルコと共にインドをGSPの対象から除外したことがあるものと見られています。
(3)インド株式等への影響は限定的か
以下の点を考慮すると、今回の出来事がインド株式等に与える影響は限定的なものに留まるものと思われます。
① 2018年のGSP対象額約62億ドルは同年のインドの全輸出額(モノ・サービス計)(約3,200億ドル)全体の2%未満であること(図表2)。
② トルコも同様にGSP適用除外を受けており、インドを狙い撃ちしたものではないと思われること。
③ 軍事面での協力等、米国はインドとの関係強化に取り組んでおり、米国が貿易面において中国に対するような強硬姿勢に転じる可能性は小さいと見られること。
④ モノの取引に関し、米国の対インド貿易赤字額は減少傾向をたどっていること(図表3)。
【図表2】インドの米国GSP対象輸出額と比率
出所:USTR、CEICデータをもとにニッセイアセットマネジメントが作成
【図表3】米国の対インド貿易赤字額と比率
出所:米商務省データをもとにニッセイアセットマネジメントが作成
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