「預金なら安心」って本当なの? 「元本保証」って、実際に何を保障してくれるの? 実は、現金にもリスクが潜んでいるのです。本連載ではそんな「現金のリスク」を切り口に、お金のほんとうの価値を守るための資産運用について考えていきます。今回は「積立投資」だけでなく「個人年金保険」の活用についても考察します。
- 若い方におすすめしたいのは積立投資と個人年金保険の「併走」
- 個人年金保険は「受給額が決まっている」という安心感があるが、課題もある
- 積立投資の利益を個人年金保険の前納に充てるという方法もある
本稿執筆時点(5月24日)では、首都圏は未だ警戒宣言が解かれていません。多くの方がご苦労をなされていることと思います。衷心よりお見舞い申し上げます。
さて、今日は『見せてもらおうか!積立投資の実力とやらを~その3 オールレンジ投資』です。特に、20歳代~30歳代のお若い方にお伝えしたいです。
もちろん、「自称お若い方」や「元お若い方」にもお読みいただけるとうれしいですが、実践することができるか否かは別ですよ。
やはり認めたくないものですね。若さゆえの特権というものを。
積立投資と個人年金保険の「併走」
今回、筆者が特にお若い方(20歳代~30歳代)におすすめしたいのが、積立投資と個人年金保険の「併走」です。
(なお、本稿における「積立投資」とは「つみたてNISA」に限定するものではありません。「積立投資」には「つみたてNISA」を含むとご理解いただいても差し支えありません)
「併走」の前に、個人年金保険と積立投資の、それぞれの特徴を見ていくことにしましょう(下図)。「比較を試みることに無理があるのでは?」と言いたくなってしまうほど、似ても似つかないものですね。
とはいえ、どちらもその目的は「将来の向かっての資産形成」という点では一致しているハズ(と信じたい)です。
【図表】積立投資と個人年金保険の比較
積立投資 | 個人年金保険 | ||
---|---|---|---|
目的 | 将来に向かっての資産形成 | 将来(老後)に向かっての資産形成 | |
税金 | 積立額 | (何もなし) | 個人年金保険料控除 |
運用期間 | 普通分配金は配当所得で、他は非課税 | 非課税 | |
受取時 | 譲渡所得 | 雑所得 | |
積立 | 金額 | 金融機関ごとに下限のみ | 生年月日と性別、払込期間、受取開始の年齢、将来の受給額で決まる |
期間 | 原則としてなし | 年齢等で決まる | |
支払い | 銀行引き落としが多い | 銀行引き落としorクレジットカード | |
頻度 | 原則として毎月 | 月払い・年払い・前納 | |
できない時 | 積立をやめるだけで、問題ない | 失効になってしまうこともある | |
前納 | できない | できる。前納割引もあり。 | |
中断 | ファンドのまま取っておける | 10年超なら払済保険に変更できる | |
解約 | 損失もあれば得することもある | たいてい損をする | |
特徴 | 将来の金額 | 予測することすらできない | 見積書を作れる |
インフレ | 対応できるかもしれない | 弱い | |
元本割れ | 大いにあり得るが、いつかは分からない | 元本保証の保険なら、解約さえしなければない | |
最大のメリット | 「大きく増えるかもしれない」という期待 | 「積み立てる期間と将来の受給額が決まっている」という安心 |
個人年金保険の利点と課題
個人年金保険の毎月の積立額に相当する保険料は、生年月日と性別、払込期間、受取開始の年齢、(個人年金保険の)将来の受給額で決まります。つまり、契約の段階、いえ、契約する前のお見積りや設計(プランニング)の段階で将来のことが分かってしまう、もとい決まってしまいます。
この「将来が決まっている」というのは、契約する方にとっては大きな安心といえるでしょう。
特に、「公的年金」といわれる老齢基礎年金や老齢厚生年金は、「将来、どのように改正されるか分からない=何歳から、毎年いくらもらえるのかが分からない」という不安が付きまといますから、いかに保険会社の商品に過ぎないとはいえ、「将来が決まっている」という安心感は何ものにも代え難いでしょう。
「将来が決まっている」、つまりマラソンと同じですね。マラソンはゴールがあり、ゴールが見えるから走ることができるんですよね。
とはいえ、現在の金利情勢では、個人年金保険を契約できるのは30代までの若い方に限られていたり、無理のない積立額(=保険料)で契約することができるのも、やはりお若い方だったりします。
ところで、個人年金保険の特徴は「将来の受給額が決まっている安心感」ばかりではありません。個人年金保険には、お若い方ならではの2つの課題があります。
一つ目は、本稿の連載当初から筆者が繰り返し述べているインフレという課題。
保険会社の経営破たんのようなよほどのアクシデントがない限り、将来の受給額は、契約時のお約束通りの「決まった金額」を受け取ることができるでしょう。しかし、その受給額の「価値」は、現在と同じ「価値」なのか?という課題。
そして二つ目。
個人年金保険の保険料を払い込む期間が決まっている、つまりゴールが定められているとはいっても、その払い込む期間が「長~い」という課題です。
その払い込み期間の長さゆえ、「自身の将来について、何がどうなるのか分からない」と、個人年金保険の必要性を感じながらも、契約をためらっていらっしゃるお若い方が多いのではないでしょうか?
分かりますよ。そのお気持ち。