宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。今回も前回までに引き続き、「定期預金でお金が増えない」と悩む相談者に対するアドバイス。株式投資の利回りの考え方や、銘柄を選ぶポイントについて説明します。
- 株式投資は配当や優待の「利回り」を重視。利回りが年7%を超える銘柄もある
- 利回りが高く、将来性を見込める銘柄を「PER」や「PBR」を参考にして探す
- 株式投資では値上がりの誘惑に惑わされず、焦らずに待つことも大切
株式投資は配当と優待を合わせた「利回り」が重要
【質問】
銀行に預けていた100万円定期預金! 1年後に満期になるけど、金利を見て愕然……。利息がたったの100円。これじゃ自動販売機のコーヒーも買えん。しかも、そこから税金も取られる。100万円預けて利息が100円って、何かのミス? ありえんわ! 窓口で頼まれたから預金したのに。いまの時代、もうちょっとましな商品はないですか?
現在、100万円を銀行に1年間預けると、定期預金(0.002%)でも金利はわずか20円。定期預金の利息を基準としたときに、ほかの運用商品ならどれだけ増やせるか? 私が独断で作成した下記の運用商品別利回りランキングの中で、私的に運用のメインと考える、⑤株式投資=30,000円~(3%以上)について解説していきます。
【予想利回りが低い順のランキング】
①債券=500円~(0.05%~)
②外貨預金=500円~1,500円(0.05%~0.15%)
③投資信託=1,000円~50,000円(0.1%~5%)
④不動産投資=30,000円~70,000円(3%~7%)
⑤株式投資=30,000円~(3%以上)
⑥確定拠出年金=30,000円~(3%~)
⑦外貨建て終身保険
⑧金
※2020年8月末現在の利率・市場動向に基づき筆者作成
まずは、⑤株式の儲け(利回り)の仕組みについて説明していきます。
株式に「利回り」といっても、なかなかピンと来ないかもしれません。株式投資における「利回り」は基本、配当金を指しています。利回りの中にはいわゆる「株主優待」も含まれます。
株式を購入するということは、その企業にお金を出す、つまり出資することになります。出資者である株主は配当金を受け取れるだけでなく、「株主総会に参加できる」などさまざまな特典があります。その特典のひとつとして、株主に自社の商品やサービスを提供する「優待」の制度を持つ企業もあります。この優待と配当金を合わせたものが、株式の利回りとなります。このほかに、株式自体の値下がり・値上がりがあります。
配当とは、出資した企業が利益を出したとき、その利益を現金として株主に分配することを指します。配当には3種類あります。決算期に出る「普通配当」(多くは年1~2回)、企業の創立記念日に出る「記念配当」、特別な利益が出た時に配られる「特別配当」があります。この配当金に注目して株式投資の損益を考えることが大切です。
「株は怖いもの」というイメージを持つ方も多いですが、最近では多くの企業が株主への利益還元を積極的に行っています。デフレ不況時でも、頑張っている企業の株式なら、年3%以上の利回りを見込める場合もあります。
状況によっては、売却益を狙う方法も可能性としてあります。しかしながら、売却益はあくまで「おまけ」と思ってください。
株式投資は、購入時期により値上がり・値下がりがつきものです。購入時期によっては、株価が下がって含み損を抱えてしまう。ここが「株は怖いもの」というイメージにつながる理由です。値下がりして含み損が発生しても、株式を持ち続けていられるか? それとも売却して損を確定させるのか? どうすべきか判断が必要ですが、保有しているのが「頑張っている企業」の株式ならば、これまで安定して配当金を株主に分配してきたので、今後に向けた安心材料になります。値下がりのリスクについても、売却せずに長期で持ち続ければ、値下がり分を配当金によって吸収することが期待でき、損失を抑える、さらには利益を上げることも可能です。
私も数社の株式を持ち続けています。株価の値動きはそれなりに大きく、時には値下がりもありますが、安定して3~5%以上の配当金を出し続けているうえ、優待制度もあるので、トータルでは利回りが年7%を超える株式もあります。どうですか? この私の経験が、「株は怖いもの」という印象を少しは払拭できるキッカケになればとは思うのですが……。
投資初心者の方にもうひとつお伝えするとしたら、株式を選ぶ基準として、まずは誰でも知っている企業に注目することです。具体的には、東京証券取引所の1部上場企業がいいでしょう。
東証1部上場で、安定した配当を出している企業はプロの投資家からの信用も厚く、株式の買い手も確保されています。そんな企業で配当金の利回りが3%以上なら、ぜひチェックしましょう。
利回りが高く、将来性のある銘柄を選びたい
ここからは、銘柄選定の方法について考えたいと思います。
今までは配当金の利回りについて話してきましたが、直近の配当金が高いからといって飛びついて、株価が大きく値下がりして痛い目に合い、損をすることもあるのが株式投資です。
配当金で吸収できないほど株価が低迷してしまうのは、投資する人がその企業の将来性を見誤った時に起きることです。逆に、将来性のある事業を手掛け、かつ安定的に配当を出している企業を見つけることができれば、その投資は成功の可能性が高まります。
では、そんな成長力のある高配当の銘柄を探すには、何に注意すればいいのでしょうか?
どの企業の株式も値動きがあるので、どうせ買うなら安い時に買った方がいいに決まっています。配当狙いで株式を買ったら、高値の時に買ったために大きく値下がりしてしまい、結局損切りした、という失敗も株式投資にはつきものです。私も値下がりしたまま放置(塩漬け)して、値上がりを待つ株式もあります。塩漬けですめばまだましで、中には上場廃止となって価値がほぼゼロになった銘柄もありました。今思えば勉強不足でした。
株価と利回りの関係を、数字で見てみましょう。たとえば、1株当たりで年30円の配当を出す企業の株式を、1200円で買うと利回りは2.5%。しかし配当が同額で、800円で買えることができたら、利回りは3.7%に上がります。株価が安ければ、利回りも高くなるということです。
PERとPBRで株価が割安かどうかを判断
現在の株価が割安か割高かをみる指標として、「PER」(株価収益率)や「PBR」(株価純資産倍率)があります。
PERは、企業が1年で上げた利益を株式の発行数で割った「1株当たり純利益」を分母、株価を分子とした数値で、PERの数値が小さいほど、株価は割安とみなされます。PERはよく同業他社の間で比較され、低いほど割安株という判断になります。また、成長が期待される企業はPERが高くなりやすいようです。
PBRは、企業の利益ではなく資産、つまりは企業そのものの価値に着目した指標です。企業の資産価値(解散価値とも呼ばれます)を株式の発行数で割った「1株当たり純資産」が分母で、株価が分子です。PBRの数値もPERと同様に、小さいほど株価は割安だと判断できます。
PBRが1倍以下だと、株価が1株当たり純資産に近づいたということであり、その企業の株価と資産価値が同水準にあるということになります。ただし、PBRがあまりにも低すぎる場合は倒産リスクが高まるといわれます。注意しましょう。
株価チャートが動いても焦らず、待ってみる
株価のチャート、配当金の額や利回り、PERやPBRなどの指標は、証券会社などのサイトで検索できます。これらの指標を参考に銘柄を選べばいいのですが、実際の株式投資は、過去の指標だけで決まるような単純なものではないのも承知ください。
当初は配当金狙いのはずだったのに、値上がりを続ける株価チャートを見ていたら、値上がり益の誘惑にかられて同じ銘柄を買い続けてしまい、やがて大きく値下がりして損が膨らんでしまった、など普通にあることです。投資信託などと違って、個別の銘柄に投資をするわけですから、どうしても目先の株価の動きが気になってしまい、日々の株価のチェック回数が増えていきます。毎日株価を見るたびに欲望がかき立てられ、心が大きくなり、待てばいいのに待ちきれず、さらなる値上がりを期待して、結果的に高値で買ってしまった。私もよくあります。
「焦らない、あわてない、待ってみる」
株式を購入するときは、ぜひこれを肝に銘じてくださいね。株式投資では、マイナス50%以上の損失も普通にありますので。
そして、配当金が出たら、現金配当は別口座に移しておきましょう。口座を一緒にすると、いくらの儲け(利回り)が出たかわかりにくくなってしまいます。ここは厳格にしてください。
次回は、ランキングの番外編として⑥確定拠出年金、⑦外貨建て終身保険や⑧金について考えていきます。
(次回は11月6日を予定しています)