テレビ、ラジオ、動画配信も含めて様々なコンテンツの台本や脚本を執筆する放送作家&脚本家が700人以上所属する日本放送作家協会がお送りする豪華リレーエッセイ。ヒット番組を担当する売れっ子作家から放送業界の裏を知り尽くす重鎮作家、目覚ましい活躍をみせる若手作家まで顔ぶれも多彩。この受難の時代に力強く生き抜く放送作家&脚本家たちのユニークかつリアルな処世術はきっと皆様の参考になるはず! 
連載第18回は、放送作家の松田敬三さん。

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赤字を続ける黒歴史

松田敬三松田敬三
放送作家、日本放送作家協会会員

恥ずかしい話、僕は金が大好きだ。病的なぐらいお金が好きで困る。おそらく、「この業界で一番お金が好きなんじゃないか?」と思ったりする。1000円の金券を落として、この世の終わりのように落ち込んだ夜もあった。でも、そんなのを人にバレたくない為、「金じゃねぇんだ」的な姿勢で生き続けてきた。しかし、僕は今、ようやく「金じゃないんだ」の本当の意味を知り、2つの宝物を手にした。

一体なぜ、そうなるに至ったのか? それは放送作家の副業として行ってきた僕の散々たるビジネスの失敗の歴史を紐解くしかない。心苦しい黒歴史だが、それを公開しよう。

まずは、NYで見たキッズディスコのイベントにアイデアを貰い放送作家の仲間とスタートしたダンスイベント事業。親子がダンスする超スーパー素敵なイベントに、オリジナルキャラクターやオリジナルソングまで作って、キャラクター印税とかチケット収入とかでウハウハだと思ったが、イベントを開催する度に大赤字。最後は大金持ちになる夢を語り合った仲間と、打ち上げ代を使いすぎだと揉める始末。新車一台分ぐらいがっつり損失を出した。

その後、メイク動画が儲かると聞き、普通じゃつまらないし子どもたちのためにコンテンツを作りたいと「キッズメイク動画」事業にも挑戦。ちょっぴり話題になるが、継続不能の赤字額を計上しガックリと肩を落とした。

「売り上げ=利益」の放送作家とは違い働いても赤字になる恐怖を知ると同時に、放送作家がいかに美味しい仕事か? いかに素敵な仕事か? を学び続けた。「本業頑張れ俺!」と、何度、自分を殴りたいと思ったことか……。それでも僕は、周りの人達に「金じゃねぇんだ」と強がった。

落胆するイメージ画像
散々たる副業ビジネス失敗の歴史に、「本業頑張れ俺!」と何度、自分を殴りたいと思ったか。

黒歴史が教えてくれた2つの宝物

これだけビジネスのセンスがないのなら、もう本業に特化すべきなのだが、僕の黒歴史は終わらない。今では、中国向けにVTuber事業をスタートしたり、出版社さんと漫画動画を作ったり、新しいアプリを使ったイベントをしたり。

そのほとんどが赤字だが、お金の神様があまりに哀れに思ってくれたのか、ようやく黒字の事業も出てきた。そして、この長~~い長~~~い黒歴史の果てに、僕は2つの宝物を手にしたのだ。

その1つは、事業失敗の赤字補填のために、めちゃくちゃ放送作家を頑張るようになったことだ。もともと企画を考えるのが大好きだったが、赤字補填のための崖っぷち感が拍車をかけて、色んな素敵な番組の立ち上げに参加できた!

そして、もう1つの宝物。それは「人との出会い」だ。キッズディスコでダンスをして「楽しかった」と言ってくれた男の子。イベントで一緒になって仲良くなった芸人さん。キッズ動画で「メイクは魔法と教えてくれた」メイクさん。

1つの企画を立ち上げて形になれば、これまで決して出会えなかった人と出会える。そんな出会いの中で僕はまた新しい着想を得て、それを時にはテレビ企画に、それを時には新規事業に。今では中国人のインテリとも出会って刺激を受ける毎日だ。

で、僕は今、堂々と実感として辻仁成さんが中山美穂さんに会った時のような圧で、こう言える。「金じゃねぇんだ」「やっと会えたね」と。でも、めっちゃお金は欲しいです(笑)。誰かください。

トンネルの先の希望のイメージ画像
長い長い黒歴史の果てに、僕は2つの宝物を手にした。

次回は脚本家の岡崎由紀子さんへ、バトンタッチ!

是非、ご参加ください!

企画やアイデアを養成する「A-FLAG放送作家サロン」をやっています。
放送作家に興味がある方、是非、ご参加ください!

A-FLAG放送作家サロン

一般社団法人 日本放送作家協会
放送作家の地位向上を目指し、昭和34年(1959)に創立された文化団体。初代会長は久保田万太郎、初代理事長は内村直也。毎年NHKと共催で新人コンクール「創作テレビドラマ大賞」「創作ラジオドラマ大賞」で未来を担う若手を発掘。作家養成スクール「市川森一・藤本義一記念 東京作家大学」、宮崎県美郷町主催の「西の正倉院 みさと文学賞」、国際会議「アジアドラマカンファレンス」、脚本の保存「日本脚本アーカイズ」などさまざまな事業の運営を担う。

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