最近IFAという言葉を耳にする機会が増えました。IFAとは、Independent Financial Adviserの略で、特定の金融機関に所属しない金融アドバイザーのことです。中立的な立場で顧客一人ひとりのお金や資産運用の相談に応じてくれる頼れる存在です。今回のMonJaインタビューでは、元野村證券のエリート社員で3年前に独立、現在はIFA会社の社長として活躍するInnovation IFA Consultingの馬場勝寛さんに、個人がIFAを活用するメリットや同社の強みなどについて話を聞きました。(聞き手・文=しらこしらお 取材日:2020年12月1日)
Innovation IFA Consulting
代表取締役社長
馬場 勝寛氏
2013年筑波大学体育専門学群卒業後、野村證券に入社。静岡支店を経て海外修練4期生として中国の北京へ。帰国後は、超富裕層含む延べ1000人の資産管理に携わる。2018年にIFAとして独立。2019年2月Horse IFA Partners(現株式会社Innovation IFA Consulting)を創業。高校時代にはサッカーのインターハイで全国制覇。個人では大会優秀選手に選出される。
中立的な立場だからこそ顧客本位になれる
まずは貴社の設立の経緯について教えてください。
馬場 2018年3月に5年間在籍した野村證券を退職し、IFAとして独立しました。当社とは別のIFA会社の設立に参画した後、2019年2月に当社の前身となるHorse IFA Partnersを創業しました。その後、2019年6月にBtoBマーケティングや営業支援などを行うイノベーション社からの資本を受け入れ、Innovation IFA Consultingとなり現在に至ります。
野村證券時代には、延べ1000名以上のお客さまの資産運用や資産管理のお手伝いをしてきました。そうした中で、もっとお客さま一人ひとりに寄り添った提案をできるような環境を自分自身で作りたいという思いが強くなり、それには特定の証券会社に属さないIFAになるのが一番だと思い、独立を決断しました。
日本におけるIFAへの注目度は徐々に高まっていますが、広く普及しているというにはほど遠い状況です。そもそも個人がIFAを活用するメリットって何でしょうか。
馬場 中立的な立場だからこそ、真に顧客本位の提案を実践できる点がIFAの特徴であり、活用する最大のメリットだと思います。というのも、銀行や証券会社など特定の金融機関に属していると、どうしても会社の営業方針に沿った商品を優先したり、系列会社の投資信託を提案したりせざるを得ない状況に直面するものです。そうした商品がお客さまのニーズやマネープランと一致していれば問題ありませんが、そうでないケースも少なくありません。
一方でIFAにとって証券会社は、業務委託契約を結んでいる取引先という位置づけです。証券会社の営業方針やノルマなどに従う必要はなく、その方にふさわしい商品やサービスを提携する複数の証券会社の中から取捨選択し、提案することができます。
なるほど。それは個人投資家の利益に資する業態といえそうですね。いわゆるファイナンシャルプランナー(FP)との違いは何でしょうか。
馬場 FPさんの場合は、取引の仲介や具体的な銘柄の推奨などは行いません。ライフプランニングやポートフォリオ提案などが主な業務です。IFAは銘柄推奨も取引仲介も行えるので、その点が大きな違いといえるでしょう。
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コロナで将来不安を持つ人が増えている?
創業からもうすぐ丸2年経つわけですが、顧客層はどんな方が中心ですか。
馬場 現状は富裕層が大半ですが、最近は資産形成層からの相談が増えていることを受けて、そうした方々を専門に担当するチームを社内に設けました。お客さまの数は公表していませんが、提携証券会社の口座ベースで約200口座に達します。
新規の方は、既存のお客さまからの紹介というパターンがほとんどです。質の高い提案がお客さまとの信頼関係につながり、それが別のお客さまの紹介につながるという好循環が生まれています。
それはいいですね。最近特に増えている相談にはどのようなものがありますか。
馬場 2つあります。1つ目がこれまで資産運用に関心のなかった方からの相談です。新型コロナの影響で在宅勤務が増えたことによって自分の将来について考える時間が多くなったり、中には収入が減少したりした方もいるでしょう。そうした人たちが将来の漠然とした不安を抱え、いまから備えたいけど何をすればいいのかわからないという相談です。
もう1つが富裕層からの問い合わせです。おかげさまでメディアなどでもIFAについて取り上げていただく機会が増えたことで、我々の存在を認知してくれる方が増加しています。そこですでに取引している証券会社や外資系のプライベートバンキングサービスなどとの比較対象として、IFAを検討していただいています。
多くの金融機関と付き合いのある富裕層ほど、中立的なアドバイスを期待できるIFAという存在に魅力を感じていただけるようです。その一方でIFAは属人的な付き合いになりやすく、もし担当のIFAに万一のことがあった場合にどうなってしまうのか、と不安を持つ方も少なくありません。
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確かに富裕層だと相続や資産承継などの相談も必要になってくるでしょうから、50年、100年レベルの付き合いが必要かもしれません。あまり属人的すぎると不安になるかも知れませんね。
馬場 おっしゃる通りです。そこで当社は担当者を二人体制にしたり、チームでの対応を徹底したりすることで、何かあっても必ず誰かがスムーズに引き継げる体制を構築すべく取り組んでいます。
「何もわからないけど、将来が心配」でも相談OK!
昨今、日本ではIFAの会社が増えていますが、他社との差別化のポイントはどこにありますか。
馬場 まずは資本がしっかりしている点です。当社の親会社であるイノベーションは、東証マザーズに上場する企業です。資産運用の相談をする相手は安心感が何より重要ですから、上場企業のグループに属するIFA会社というのは、他社との大きな差別化になると自負します。
また大手の銀行や証券、保険会社などで実務を積んできたメンバーが多数在籍しているのも当社の強みです。各人の豊富な経験や知見を皆で共有し、個別の提案に生かしています。
今後注力していきたい戦略はありますか。
馬場 まずデジタル化の推進です。お客さまの中には、当社が提携している証券会社すべてに口座を持っている方もいます。その場合、資産状況の確認をするとなると、各社の口座にそれぞれアクセスする必要があります。それを一元管理するためのシステムを当社で構築したいと思います。あとは、中立的な金融の情報などを学べるコンテンツの提供にも力を入れていきたいですね。
お客さまがお金を預けるうえで、安心感は絶対に必要です。そのためにも業界のリーディングカンパニーになるべく、規模を拡大するため採用活動を積極的に行っています。そして10年以内にIFAが銀行・証券・保険に並ぶ第4の金融チャネルとして定着することを目指しています。
MonJaの読者は、資産形成の初心者が少なくありません。全く投資経験がなく、何もわからないけど、何となく将来が心配で……というような人でも相談していいものでしょうか。
馬場 もちろん大歓迎です! そういう方の金融リテラシーを高めることが日本の将来にとってとても必要だと思います。しかも資産形成層の方は、ITリテラシーの高い世代が多いので、ウェブ面談でも十分コミュニケーションが図れます。気軽にご相談してほしいですね
ちなみにそういう「何もわからないけど、将来が心配で……」という相談にはどんなアドバイスや提案をしますか。
馬場 う~ん、それは実際にその方と面談してみないと何とも言えません……。でも資産形成は、とにかく「始める」ことが大事なので、毎月1,000円の積み立て投資でいいので、始めてみることを提案すると思います。続けられそうなら、少しずつ金額をアップしてみたり。反対に値動きが気になって気になって仕方がない、ちょっとでも減ってしまうともう心配で…という方であれば、無理に運用する必要はないと思います。それを見極めるためにも、まず少額で始めてみるというのがいいかもしれませんね。
わかりました。我々も「資産形成は特別なことではない」という認識が広まればいいと思っていますし、そのためには米国のようにIFAが定着することも重要だと思います。IFAが日本に根づくよう期待しています。今日はありがとうございました。