「預金なら安心」って本当なの? 「元本保証」って、実際に何を保障してくれるの? 実は、現金にもリスクが潜んでいるのです。本連載ではそんな「現金のリスク」を切り口に、お金のほんとうの価値を守るための資産運用について考えていきます。

「額面」の元本と「価値」の元本

投資にはリスクが付きもので、時には元本割れをすることもあり得ます。
そのため、投資をなさらない理由として「増えないまでも、減らない定期預金で十分」とか、「銀行よりもタンス預金の方が安全」というお声をお聞きすることがあります。
このお声は本当でしょうか?

読者のみなさまの中には、銀行などの窓口でアンケートを書いたご記憶をお持ちの方もいらっしゃると思います。
そのアンケートの選択肢の一つに、「元本割れは避けたい」とか「元本保証を希望する」という趣旨の項目があったのではないでしょうか?

投資の世界では「元本」とは、まさに「投資した金額」というイメージになろうかと思います。ところで、銀行の預金やタンス預金は、本当に元本割れがないのでしょうか?

筆者は、お金には2つの元本があると考えています。

元本の一つ目は「額面」の元本です。
銀行の預金であれ、タンス預金であれ、「額面」の元本が割れてしまうことは(銀行の破たんやご自宅の盗難・被災など、よほどのことが起きない限りは)ないと思います。「増えないまでも、減らなければ良い」という願いはかなえられるでしょう。

もう一つの元本は、「価値」の元本です。こちらはどうでしょうか?

実は、銀行の預金もタンスの預金も「価値」の元本までは守ってくれません。


現金のまま置いておけばお金の額面は減らないけれど、お金の価値が守られるとは限らない

定期預金でも元本割れはある?

「定期預金でも元本割れの可能性がありますよ」と言うと、多くの方は「それって、銀行が破たんした場合のことでしょう」と返すでしょう(もっとも元本1,000万円+利息までなら預金保険もあるのですが)。
実はこの「価値」の元本というのは、そうした「アクシデント」による元本割れの話ではないのです。
もっとハッキリ言うと、実は定期預金はすでに元本割れを起こしているんです。

定期預金100万円を想定してみてください

アナタは昨年、つまり2018年の1月に定期預金100万円を組むことにしました。
1年後、2019年の1月に満期を迎えました。
イマドキの定期預金の利率は、年利0.01%という金融機関がほとんどです。

ということは、元本100万円で得ることができる利息は100円、と言いたいところですが、利息にも所得税と住民税がかかります。この税金を引くと、元本にプラスされる利息の額は80円です。
つまり、満期時に受け取ることできるのは1,000,080円ということになります。
確かに、大きくは増えていませんが、減ってもいません。「額面」の元本は確保されました。

が、残念ながら「価値」の元本は割れてしまいました。
どういうことでしょうか?

定期預金では元本割れを起こしてしまう

2018年の1年間の消費者物価指数は「プラス1.0%」です。
消費者物価指数とは、物の値段やサービスの価格の平均の推移、つまり、「物価の変動」の幅を見るための指標です。

2018年は1年間で物価の変動幅が「平均1.0%アップした」という意味なのです。

つまり、2018年の1月と2019年の1月に、全く同じ質と全く同じ価値を保っている品物を買おうとすると、値段が1%上がっているのです。

ある品物に、2018年1月に100万円の値札が付いていたとしましょう。
2019年1月に全く同じ質の品物を買おうとすると、101万円の値札になっているということです。

先述の定期預金と比較していただいて、いかがでしょうか?
定期預金の利率と物価の変動の幅を比べると、明らかに定期預金の利率の負けなのが、ご理解いただけると思います。

  定期預金 物価
2018年1月 ① 1,000,000円 ② 1,000,000円
2019年1月 ③ 1,000,080円 ④ 1,010,000円

「額面」の元本 ③ - ① = プラス80円
「価値」の元本 ③ - ④ = マイナス9,920円

おわかりいただけましたか?これが筆者の言う「価値」の元本割れです。

1%なら、我慢できる?

ところで現役世代の読者のみなさん、お給料は前年と比べて、何パーセントUPしましたか?
額面じゃないですよ。手取り額は意外と伸びていないのではないでしょうか?
お給料の手取り額の伸びは、ひょっとしたら、物価の変動幅に負けているかもしれませんね。

年金世代の皆さんは、受給額が前年から0.1%UPしました。ということは、物価の変動幅には追いついていません。つまり、年金も物価の変動幅に負けてしまっています。

プラス1%の物価の変動幅なら、我慢して、何とかしちゃいますか? まあ、今年だけの一時的な出来事なら、それも我慢の範囲なのかも知れません。
しかし、もし「物価の変動幅がプラス」という状態が、今後、毎年、続いていくとしたら、いかがでしょうか?

実は投資が必要なのは、何も投資によって「お金を増やす」ことだけが目的ではないのです。投資には、実は「お金の価値を守る」という目的もあるのです。

「ひょっとしたら、今後、物価の変動幅がプラスということが毎年続くかもしれない」という前提で、「お金の価値を守る」投資についてこの連載で書いていきたいと思います。

(次回は10月7日(月)の公開を予定しています)