労働者が仕事や通勤で病気・ケガをした場合に、様々な補償を受けられる労災保険。労働者のための制度のため、事業主や自営業者などは補償対象外となっています。しかし、業務内容などによっては、労災保険への特別加入が可能な場合もあります。
- フリーランスの増加で労災保険の特別加入の対象範囲が拡大された
- 新たにフードデリバリー業者やITフリーランサーなどが追加された
- 対象外の人はもしもの時の備えとして、民間保険の加入を検討する
労災保険の特別加入とは?
労災保険の特別加入とは、労働者ではなくても、労働者と同様の保護が必要であると判断された職業の人が、労災保険へ任意で加入をできる制度です。労災保険へ特別加入をすることで、仕事中や通勤中の病気・ケガや障害などの補償を受けられるようになります(労災保険の補償内容についてはこちらの記事で詳しくご説明しています)。
特別加入ができるのは、大きく下記の4種類に該当する範囲の人です。
- 中小事業者等
- 一人親方等の自営業者
- 特定作業従事者
- 海外派遣者
特別加入をした場合、加入者は3,500円~25,000円の範囲で給付基礎日額を設定することができ、この給付基礎日額を基に補償額と保険料が決まります。保険料は、事業ごとに定められた保険料率×給付基礎日額で算出されます。給付基礎日額が少なければ保険料は安くなりますが、補償額もその分低くなります。反対に給付基礎日額を多くすれば補償額は大きくできますが、保険料は高くなります。
2021年4月・9月、特別加入の対象範囲が拡大
2021年に入り、フリーランスとして働く人が増えたことなどを鑑みて、特別加入の対象範囲が拡大されています。拡大は4月と9月の2回にわたって行われており、新たに以下の人たちが対象になりました。
【2021年4月1日追加】
- 芸能関係作業従事者
芸能実演家:俳優、声優、舞踊家、音楽家、演芸家、スタントなど
芸能製作作業従事者:監督、撮影、照明、音響、大道具、美術装飾、衣装、メイク、アシスタントなど - アニメーション制作作業従事者
キャラクターデザイナー、作画、絵コンテ、原画、背景、監督、演出家、脚本家、編集など - 柔道整復師
- 創業支援等措置に基づき事業を行う方
【2021年9月1日追加】
- 自転車を使用して貨物運送事業を行う者
フードデリバリーの自転車配達員など - ITフリーランス
ITコンサルタント、システムエンジニア、プログラマ、社内SE、Webデザイナー、Webディレクターなど
加入を希望する場合、特別加入団体として承認されている団体を経由して、申し込みを行います。特別加入団体とは、対象となる事業者を構成員とした窓口団体です。どんな特別加入団体があるかについては、労働基準監督署で確認ができます。最寄りの労働基準監督署に問合せをしてみてください。
特別加入団体が指定する方法で申請を行い、所轄の労働基準監督署および各自治体の労働局の承認が得られれば、手続きは完了です。なお、特別加入団体によっては加入費などがかかることもあるようですので、忘れずに確認しておきましょう。
特別加入後は、会社勤めの方と同様、仕事中・通勤中のケガや病気について保険給付を受けられるようになります。給付の手続きは基本的に自身で行うことになりますが、団体によってはその申請や書類準備についてもサポートを受けられる場合もあります。これもあらかじめ確認しておくことをおすすめします。
対象外の人は民間保険での自助も検討を
フリーランスなどで働いている人の場合、ケガなどで療養が必要になると、生活への影響も大きくなってしまいがちです。そうした不安を軽減できるように、もしもの時の備えとして労災保険への特別加入も視野に入れておくと良いでしょう。
ただし、特別加入の対象範囲に該当しない場合は、労災保険への特別加入ができません。そうした場合には、民間保険での自助も備えとして考えておきたいところです。フリーランスの保険選びについては、こちらの記事で解説していますので、参考にしてみてください。