現役証券アナリストの佐々木達也さんが、株式市場で注目度が高い銘柄の強みや業績、将来性を解説する本連載。第2回は、ヘルスケア事業を中心とした成長が期待される富士フイルムホールディングス(4901)を取り上げます。

  • 富士フイルムホールディングスの強みは写真フィルムで培った高い技術力
  • 「ヘルスケア&マテリアルズソリューション」の売上高がおよそ5割を占める
  • 2022年3月期は業績拡大を見込み、株価は上場来の高値更新が続く

富士フイルムホールディングスはどんな会社?

富士フイルムホールディングスが現在の持株会社に移行したのは2006年です。前身の富士フイルムは1934年ダイセル化学工業(当時は大日本セルロイド)の写真フィルム部門が分離独立して発足しました。

社名のフイルムが示すとおりかつては米国のイーストマン・コダックと並ぶ写真フィルムの世界大手企業でした。しかしデジタルカメラの台頭やカメラ付き携帯電話の出現により写真フィルム業界は大きく縮小しました。現在は一部に「写ルンです」などのレンズ付きカラーフィルムを手掛けるだけとなり、業態を大きく転換することに成功しました。

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現在の富士フイルムHDの事業分野は大きく分けて3つに分類されています。

1つ目は、「写ルンです」などのカラーフィルム、デジタルカメラなど映像に関する「イメージングソリューション」です。

2つ目は、レーザープリンターや複合機などのオフィス・印刷機器の「ドキュメントソリューション」です。

最後の3つ目は、医薬品や医療システムなどのヘルスケア、そしてディスプレイや電子機器などに使われる電子材料の高機能材料などの成長分野の「ヘルスケア&マテリアルズソリューション」です。この事業の売上高は前期の21年3月期で富士フイルムHDのおよそ5割を占めており、成長分野と位置づけています。

富士フイルムホールディングスの強みは?

富士フイルムホールディングスの強みは写真フィルムで培った高い技術力です。

もともと写真フィルムは有機材料の合成や薄膜加工などの高い技術力がないと製造することが出来ません。また100種類もの化合物を毛髪の5分の1程度の厚みの中に20種類の材料層を作り出すことが必要とされるなど難度が高く、写真フィルムは「化学の芸術品」と呼ばれていました。大量生産にも技術と大掛かりな製造設備が必要なためかつてフィルム業界で生産出来たのは世界でわずか4社しかありませんでした。

この写真フィルムの技術は富士フイルムHDのさまざまな製品で生かされています。例えばフィルムの原料はコラーゲンが主に用いられており、技術を転用し機能性の化粧品を生産しています。

またヘルスケア部門で成長が見込まれているのはバイオCDMO(医薬品の開発・製造受託)事業です。バイオ医薬品とはタンパク質など有機物からなる医薬品です。低分子医薬品に比べて副作用が少なく、効能も高いとされることから製薬企業が注力している分野です。富士フイルムHDはフィルムの製造設備などをバイオ医薬品の製造設備に転用し製薬企業から生産・開発を受託しています。

富士フイルムのデジタルカメラ
デジタルカメラやプリンターの印象が強い富士フイルムホールディングスだが、現在は「ヘルスケア領域」を成長分野と位置づける
Akmenra / Shutterstock.com

富士フイルムホールディングスの業績や株価は?

富士フイルムホールディングスの今期2022年3月期は、売上高が前期比で14%増の2兆5000億円、営業利益が21%増の2000億円と業績拡大を見込んでいます

各事業で業績の伸びを見込みますが、前述のバイオCDMO事業で新たに900億円を投じて欧米の生産工場への大型投資を決定しています。これは新型コロナウイルスのワクチンや最先端の遺伝子治療薬などの需要増加に対応したもので業界トップクラスの生産効率となっています。

株価は日本株全体が新型コロナウイルスの感染拡大などを受け上値が重くなる中、上場来の高値更新が続いています

富士フイルムホールディングス(4901)の株価(週足、終値)
富士フイルムホールディングスの株価チャート 期間:2021年1月4日~2021年8月16日

ヘルスケア事業を中心とした成長戦略が評価されているほか、コロナで落ち込んでいたプリンターなどのドキュメントソリューション事業の業績回復などを評価した買いが続いています

8月19日の終値は8901円で、投資単位は100株単位となり、最低投資金額は約90万円弱です。今後もヘルスケアの需要はさらに伸びると考えられることから、順調な株価推移も期待できそうです。

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