高い成長を遂げ、米国に次ぐ経済大国となった中国。今後の成長も期待できるため、これから中国株へ投資をしたいと考えている人も多いと思います。しかし、中国株には政治リスクや米国との対立関係、中国恒大集団の問題など、さまざまなリスク要因があるため注意が必要です。本記事では中国株にはどのようなリスクがあるのか解説します。

  • テクノロジー系企業が今の中国経済を牽引。一方で独特なリスクもある
  • 中国政府による企業への統制が強いため、政策による大きな変動もありうる
  • 米中関係の悪化や中国恒大集団問題もリスク要因。不動産バブル崩壊にも警戒

中国株投資の魅力は「高い成長力」

中国株投資の魅力はなんといっても高い成長力でしょう。かつては世界一の人口と豊富な労働力を背景とした巨大マーケットに世界中から投資マネーが集まり、GDPが年率8%を超える高い成長を誇りました。中国経済は農村部の労働人口を都市部に集めたことにより、安価な労働力を確保し、「世界の工場」として輸出を伸ばしたことで大きな成長を遂げました。

近年ではIT・テクノロジー系企業が中国経済を牽引し、高い経済成長が続いています。特に太陽電池やEV(電気自動車)といった今後の成長が期待できる分野において、中国は高い技術力を誇る点が特徴です。太陽電池は国内自給率100%、EVも国内自給率95%と、巨大な消費市場を支えられる技術力を持ち合わせています。

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スマートフォンも国内自給率が85%となっており、高い技術力を持つ中国企業のファーウェイ社は米国のアップル社とも戦える存在です。ただし、米中の貿易摩擦や、不動産バブル、人口の高齢化、さらには中国政府の企業への介入などリスク要因も多く、中国経済や中国の株式市場はこれまでのような高成長を維持し続けることは難しいともいわれています。

中国株式市場ならではのリスク

中国株式市場には他国とは異なる、独特のリスクがあります。中国へ投資をする際には、中国株のリスクについて十分に注意する必要があるでしょう。

政策リスク

中国は共産党による一党体制で、政府による株式市場や企業への統制も強いため、政府の介入が経済に大きく影響します。最近でも、ニューヨーク市場に上場する中国企業に対して、中国の規制当局が上場廃止を迫ったというニュースがありました。
今後もエネルギーや電力、通信、金融などの規制業種では、過当競争を防ぐために業界再編が政府主導で行われる可能性があるなど、思いがけない変動が起こる場合もあるでしょう。

人民大会堂
習近平体制の中国では、企業に対する政府の規制や介入が強まっている

日本やアメリカでは、政治主導でここまで大きな市場の変化が起こることはありません。日本株や米国株の投資経験が豊富な投資家も、中国株投資では政府の動向に注意を払う必要があります。

流動性が低い

中国株は日本や米国の株式に比べて流動性が低い、つまり「売却したいときにできない」という可能性が比較的高いことが特徴です。

中国株は発行会社や取引所の意向で売買が停止されることがあります。その理由は株価の急激な変動を避けるためですが、取引停止によって売買ができなくなれば、急に現金が必要になったときも中国株を現金化できなくなります。投資家にとって、売却したいときにできない可能性は、極めて大きなリスクといえるでしょう。

米中関係や中国恒大集団問題の影響は?

中国株を巡る目先の問題として特に投資家が注目しているものが、米中関係と中国恒大集団の問題です。二つの問題について確認しておきましょう。

米中関係

アメリカは世界1位の経済大国ですが、中国もアメリカに次ぐ経済大国へと成長したことによって、アメリカと中国の関係は大きく変わりました。

米中の関係は2018年頃、当時のトランプ大統領が中国の輸出に対して関税をかけ始めたころから悪化し始めました。中国から輸出される製品に対して、アメリカが関税をかけたことに、中国政府が反発しました。
その後、アメリカ経済が停滞したこともあり両者は歩み寄りをみせましたが、米中の貿易問題が根本的に解決したわけではありません。今後も米中の経済的な対立が継続する可能性は高いでしょう。

米中貿易摩擦
米中の経済的な対立は中国株市場だけでなく、世界経済全体に大きな影響を及ぼす

米中は経済だけでなく、安全保障の面でも対立しています。安全保障面での対立が経済へ波及した事例が、中国企業のNY証券取引所の上場廃止問題です。2020年11月、トランプ大統領は中国軍に資金供給する可能性があるとして、チャイナテレコム、チャイナモバイル、チャイナユニコムの3社を上場廃止にしました。

安全保障面での対立は経済にも悪影響を及ぼしており、今後の両国の関係に注目が集まる状況です。

中国恒大集団

中国恒大集団は1996年に創業し、不動産ブームに乗ったことで、急激な成長を遂げた企業です。中国恒大集団は多額の融資を受けることによって、レバレッジを効かせた不動産投資を可能にしたことで急成長を遂げました。しかし、中国政府が2020年に「3つのレッドライン」と呼ばれる不動産融資規制を導入したことにより、経営環境が一気に苦しくなった状況です。

3つのレッドラインによって融資が受けられなくなった中国恒大集団は、債務不履行に陥り、経営破たんの危機に瀕しています。ただし、中国恒大集団向けの中国の銀行融資は融資総額の0.3%程といわれており、中国恒大集団の破たんが直接、リーマン・ショックのような大規模な経済危機に発展する可能性は低いといわれています。

一方で、不動産融資規制により、経営が苦しくなる企業が他に現れるリスクもあります。債務不履行や利払いの停止といった信用リスクの広がりや、さらには不動産バブル崩壊による中国経済の低迷という可能性も考えておいた方がいいでしょう。

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