高校の教育カリキュラムに投資教育が取り入れられることが話題になっています。子どもにお金の話をするのは、抵抗があるという大人も多いのではないでしょうか。しかし、これからの時代を生きていく子どもには「自分の判断で資産形成する」力が欠かせません。本記事では、子どもの投資教育に関する現状と基本的な心構えについてまとめました。
- 欧米と違って、日本では子どもが投資やマネープランを学ぶ機会が少なかった
- お金の仕組みを知らないと、社会に出て適切な資産運用ができなくなる
- 高校で資産形成の授業がスタート。家庭でもお金や投資の話をできるようにしたい
なぜ、投資教育や金融教育が必要なのか?
日本ではこの十数年の間に、「貯蓄から投資へ」「資産は自分で運用して増やすもの」という言葉を耳にする機会が増えました。しかし、いまだに資産運用に積極的な人は、多数派といえません。これには、日本の投資教育が関係しているといわれています。
欧米諸国では幼少期からお金の教育が行われていますが、日本では義務教育でマネープランについて教わる機会がほとんどありません。ようやく2022年から、高校の新指導要領に金融教育が組み込まれましたが、カリキュラムとしてはまだ不十分だといわざるを得ないでしょう。
お金の仕組みや投資について知らないまま社会人になると、自分で稼いで、使って、守って増やすという流れが分からないままです。その結果として、お金をあるだけ使ってしまったり、適切な資産運用ができなくなったりするのでしょう。投資の知識がないと、高配当をうたう悪質な金融商品の勧誘に引っかかってしまうなど、詐欺の被害に遭う場合もあります。
金融教育の不足は、日本経済全体にも悪影響を及ぼすかもしれません。日本では個人の金融資産が今も預金に極端に偏っており、アメリカなどと比べてお金の巡りが悪い状態です。個人資産が投資に回れば企業の活動が盛んになり、好景気への循環が生まれます。好景気から「良いインフレ」への流れを作るためには、個人が適切に投資に取り組むことが欠かせません。
欧米と比べて「金融教育が遅れている」といわれる日本
皆さんは、何となく「お金は汚いもの」というイメージを持っていないでしょうか。汚いものといわないまでも「お金儲けを考えるのは卑しいこと」だと考える人も一部にいます。実は、この感覚は日本人特有のものといわれています。
欧米では家庭でもお金の話をすることが普通ですが、日本では「お金は汚いもの」といったイメージが強いせいか、そういった機会を持つ家庭はまれです。子どもに投資教育を始めるときには、まずはこの意識をなくすことから始めましょう。
家庭内のお金の使い方を子ども自身に考えさせるのもひとつの方法です。具体的には、家族みんなで乗る車を、金額やメリット・デメリットを提示したうえで、どれにするか考えてもらうといった事例が考えられます。
自分の生活に直接結びついた事例であれば、子どもが興味をもって議論に参加できます。家庭で使うお金の話をするのは、お金について考える姿勢を養うために役立ってくれることでしょう。
高校で資産運用を教える時代。投資は常識になる
最近話題になっているので知っている方も多いと思いますが、学習指導要領の改訂で2022年4月から、高校で資産形成に関する授業が行われるようになります。家庭科の授業における「家計管理」の一部として、投資や運用の話が組み込まれるということです。
従来の家計管理では「長期的に収入と支出のバランスを取ること」というふうに、消費生活にポイントを置いて授業が行われていました。それが新学習指導要領では、預金や保険、株式、債券、投資信託など、金融資産の特徴や資産形成の方法まで言及される予定だそうです。
改正民法で、2022年4月からは成人年齢が18歳に引き下げられます。高校卒業後すぐに資産運用ができるようになるわけですから、高校生のうちに資産運用の正しい知識を得るのは賢明だといえるでしょう。これにあわせて、金融庁なども子ども向けの投資教育コンテンツの発信に力を入れています。
親としては、子どもをお金の話から遠ざけるのではなく、家庭でもお金や資産形成の話を当たり前にできるようにしていきたいものです。