最近よく目にするFIRE(経済的独立と早期リタイア)という言葉。会社に縛られない自由な生活に憧れる人は多いですが、その道のりは決して平坦ではありません。FIREを実現するには、何から始めればいいのでしょうか? 会社員生活から独立して、自由な生活を手にした投資家の遠藤洋さんに教えていただきます。

第3回テーマ

自由な生活を手に入れたいと願う一方で、将来どうなりたいかが漠然としていて、「FIREを達成したら何がしたいのか」という目的が見つからない。FIREを目指すモチベーションを高めるには、どうすればいいのか?

「やりたいこと」が最初から決まっている人は少ない

遠藤洋
遠藤 洋
投資家
投資コミュニティixi主宰

FIREでも株式投資でも何でもそうですが、具体的な目的がないと身が入らないのは確かです。遠い未来の目標でも、あるいは目先のことでもいいので、自分の人生にひとつのゴールを設定するとはとても大事なことです。

とはいえ、みんなが「やりたいこと」を持っているわけではありません。たとえば就職活動のときに、「私は絶対に○○になるんだ!」という強い意志で挑む人もいると思いますが、多くの人は「とりあえずどこかに就職しなきゃ」ということで、いろいろな会社に書類を送って面接をしたのではないでしょうか。僕も最初から、明確にやりたいことがあったわけではありませんでした。

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それでも、誰しもが「これだけはやりたくない」ということがあるはずです。

行動を起こすためのきっかけは、「何をやりたいか」という具体的な目的やゴールだけではありません。「何をやりたくないか」を明確にすることも強い動機になります。

やりたくないことをやらないために、何をやればいいか

僕の場合は、朝が弱くて、「朝に目覚ましをかけて起きたくない」という思いが、会社を辞めて独立したいという動機のひとつになりました。

このように言うと、まるで社会不適合者のように聞こえてしまうかもしれませんが、僕はそれでもいいと思っています。前回、生活の優先順位を「他人軸」から「自分軸」に変えるというお話をしました。自分の人生ですから、自分にとって快適な生き方を選ぶのは自然なことです。

生活の優先順位を「他人軸」から「自分軸」に変える

毎日同じ場所に行くのがつらいとか、満員電車に乗りたくないとか、人によっては誰かと会って話すのが苦痛だから、テキストだけでやりとりをしたい場合もあるでしょう。

このように「やりたくないこと」を挙げてみると、「やりたくないことをやらないために、何をやればいいか」が絞れてきます。満員電車や対面での仕事がつらければ、普通の会社員として働くことは難しい。でも生きていくためには、何かをして稼がなければいけません。それが次のステップを考えるきっかけになります。たとえば在宅でできる仕事を選んだり、オンラインで完結するビジネスを自分で立ち上げたりすることが視野に入りますし、そのための勉強やスキルアップを始める理由にもなります。

眠る人
「早起きをしたくない」という一見すると後ろ向きな感情も、行動を良い方向に変えるきっかけになる

適性がないこと、嫌いなことをがまんしない

次のステップに進むためには、「がまんしないこと」も大事かもしれません。「がまんすることも仕事のうちだ」と言う人もいるかもしれませんが、僕は必ずしもそうは思いません。

僕みたいに朝起きるのが苦手な人もいれば、早朝に起きてジムへ行ってから出社する人もいます。人とのコミュニケーションが好きな人、嫌いな人。ひとりでシステムを開発するのが得意な人、苦手な人。何が得意で、何が難しいかは人それぞれなのに、わざわざ適性がないことや嫌いなことを、ストレスを抱えながらがまんして続けるのは自分にとってもマイナスですし、会社にとっても生産性が下がります。自分のパフォーマンスを生かせる仕事を選んだ方がいいに決まっています。

今の仕事をがんばった延長線上に「自分の望む未来」があるかどうか、そこを見極めることが大事で、望む未来がないからつらい思いをするわけです。今がんばるべきことは会社から与えられた仕事ではなく、独立するためにスキルを磨くこと、副業でビジネスを始めてみることかもしれません。がんばった先に、毎日出社しなくてもいい未来、会いたくない人に会わなくてもいい未来があるからがんばれるのです。

プログラミング
人と会う仕事よりひとりで作業する仕事の方が合うのなら、そのような仕事で副業や起業をがんばった方が「自分が望む未来」に近づける

モチベーションがなくても、行動してみることが大切

「モチベーションが上がらなくて困っています。どうやってモチベーションを高めればいいんですか?」という質問をよく受けます。僕はいつも、「モチベーションがなくてもいいから、『やる仕組み』を作ってみよう」と答えています。

行動の動機をモチベーションのみに頼ると、調子がいいときはやるけれど、悪い時はやらないようになります。その日の気分に頼るのはよくありません。そもそも、モチベーションは「やりながら高まっていく」ものだと思っています。

投資コミュニティを主宰している僕も、当初はあまりモチベーションがなく、「投資を教えてほしい」と言われても正直「めんどくさい」と思っていました。でも実際にやってみたら、僕が教えると喜んでくれて、その人にとって自分の知識が役に立っていることを実感して、それがモチベーションになっていきました。

こうして文字にしてみると簡単なことのようですが、実際に行動に移せる人は多くありません。会社などで働いていると、どうしても周りの人と同じ動きをしてしまい、自分だけ違うことをやるのを恐れてしまいます。

だからこそ「やる仕組み」を作ることが大切で、やらざるを得ない環境に自分から飛び込むとか、同じことに挑戦する仲間がいる環境に身を置くのもいいと思います。僕が主宰する投資コミュニティも同じで、ひとりで投資を始めるのは精神的にたいへんでも、仲間がいるから投資を続けられるのです。

モチベーションに関係なく、行動を始めてみることが大切です。ひとりで踏み出すのが難しいのであれば、環境を変えてみることをおすすめします。

遠藤洋今回のポイント

  • 「やりたくないこと」を明確にすると、「やりたくないことをやらないために、何をやればいいか」が見えてくる
  • 今の仕事をがんばった延長線上に「自分の望む未来」があるかどうかを考える
  • モチベーションに頼らずに行動を始めることと、そのための仕組み作りが大切

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