テレビ、ラジオ、動画配信も含めて様々なコンテンツの台本や脚本を執筆する放送作家&脚本家が700人以上所属する日本放送作家協会がお送りする豪華リレーエッセイ。ヒット番組を担当する売れっ子作家から放送業界の裏を知り尽くす重鎮作家、目覚ましい活躍をみせる若手作家まで顔ぶれも多彩。この受難の時代に力強く生き抜く放送作家&脚本家たちのユニークかつリアルな処世術はきっと皆様の参考になるはず!
連載第66回は、同じ放送作家に友人、知人がほとんどいないという、自称「ぼっち作家」の今浪祐介さん。
誰も気にしてないのに、つい
はじめまして。放送作家・構成作家の今浪祐介と申します。今回、大変光栄にもこのエッセイのご依頼を頂きました。私は元々はラジオ局でのアルバイト上がり。誰かの弟子だったこともなく、芸人さんの座付きと言った経験もなく、とにかく同業に知人・友人がほとんどいません。ぼっち作家です。それなのにお声がけ頂いたことに本当に驚きつつ、感謝しています。宜しくお願い致します。
「放送作家視点でのお金の話」、私は「放送作家のお金あるある」をテーマに書かせて頂きます。
①「お金にもならないのに文字の並びを考えがち」
「ラジオ」「テレビ」「イベント」「動画配信」など、
台本を書く仕事が発生する場合、そのポジションを担うのが放送作家です。
進行台本ですから、世にその「書いたもの」が出回ったり
映像として露出することはありません。
それでも、なぜか「改行」や「ページのまたぎ」などを気にして書いてしまいます。
例えば冒頭、
敢えてその辺りをまるっと無視した形での文章にしてみました。
個人的には、読み返すだけでもやっとした感情が芽生えます。
本来なら
はじめまして。
放送作家・構成作家の今浪祐介と申します。
今回、大変光栄にもこのエッセイのご依頼を頂きました。
私は元々は……
……と書くのが常。
それは台本だけでなく、人へのメール返信や日常も同じ。
別に改行など誰も気にしていないって分かっていながらつい、、です。
かつてドラマ「古畑任三郎」で、
笑福亭鶴瓶さんが小説家を生業とする犯人の役を演じた回がありました。
その際、古畑さんは犯人の残した文章を見て
「改行や句読点、非常に綺麗なんですねぇ。
これはぁ~犯人はぁ~作家など文章にこだわりがある方なのでは?
と思うんですはい~」と疑いました。
あの時、「あの三谷幸喜さんも同じなんだ」と
非常に嬉しく思ったのを覚えています。
②「過剰なお金持ち」にまぁまぁ会いがち
様々なジャンルの方にお会いする機会に恵まれた仕事だと思います。
有名人の方はもちろん、企業トップの方やスポーツ選手や政治家の方……
と様々な破格のお金持ち。お目にかかっては「いいなぁ」と思うことが常です。
「お金持ちは周りの金運も吸う」と言う話を聞いたことがあります。
私は、週に1、2度は「過剰なお金持ちの方」に会っています。
金運に恵まれていないのは、そのせいだと思っています。
③「値段」はあるようでないので嘆きがち
この放送作家のリレーブログ、諸先輩のエッセイにも書かれていましたが
「今回予算がなくて……ごめん」と
全ての仕事が終わった後に切り出されることが珍しくありません。
「予算ある時、多めに払うから今回はごめん」との言葉も
トッピングでついてきますが、
このワードを発する人からは、そんな「時」は来ません。
それゆえ、同様の仕事をしても相手によって報酬・ギャランティは
ビットコインよりも乱高下です。大体「下」です。
ちなみに……私の妻は雑誌編集をしているんですが、
雑誌ライターの方へのギャラの支払いに対して
「前回、予算なくて泣いてもらったから……今回は何とか多めに予算を回そう」
とやっていたりします。雑誌の世界では「別に普通だよ?」とのこと。
雑誌の記事、もっと書かせてほしいなと思います。
ちなみに現在は、競馬総合誌「優駿」で連載を持たせて頂いてます。
大好きな仕事です。
④放送終わりのエンドロール、
「構成」で流れる名前が多いと「予算あるなぁ。いいなぁ」と思いがち
テレビ番組のエンディング、
関わったスタッフの名前がつらつらと流れていくエンドロール、
仕事柄「構成」という方々の名前に目が行きがちなんですが、
そこに4人、5人と名前が並んでいると「お金あるなぁ」と羨望です。
私は、大人数の番組に入れたことはありません。
「BS11競馬中継」のエンドロールも「構成 今浪祐介」
ただ1人です。楽しいです。
⑤信じられないほど、ノーマネーの仕事を振られがち
車の商談など「お見積無料」と「査定無料」などよく目にしますが
放送作家も「無料サービス」が多々あります。
「企画相談無料」
「企画書構築無料」
「レギュラー番組、オプション企画無料」などなど……
こちらからすると、悲しい「なぁなぁ」が多々あります。残念!
⑥「一行も書かない人ほど稼ぐ」
面白い仕事だと思います。
大御所と言われる方々と何度かご一緒させて頂いたことがあるのですが、
その多くの方が「書かない」ことが珍しくありません。
アイデアだけを出す。
すると周りが「なるほど! では、あとはこちらで作っておきます!」
となる空気が出来上がっていたりします。
若い頃は、その流れが不思議で仕方ありませんでしたが、
いつしか「オーラ」がなしえる技なんだと理解させました。自分を。
ちなみに私は……めちゃめちゃ書いてます。オーラがないので仕方ありません。
以上、私のお金への熱い思いを
トピック縦読みに託してみました。お読み頂き、ありがとうございました。
次回は、一般社団法人放送人の会理事 千葉邦彦さんへ、バトンタッチ!
放送作家の地位向上を目指し、昭和34年(1959)に創立された文化団体。初代会長は久保田万太郎、初代理事長は内村直也。毎年NHKと共催で新人コンクール「創作テレビドラマ大賞」「創作ラジオドラマ大賞」で未来を担う若手を発掘。作家養成スクール「市川森一・藤本義一記念 東京作家大学」、宮崎県美郷町主催の「西の正倉院 みさと文学賞」、国際会議「アジアドラマカンファレンス」、脚本の保存「日本脚本アーカイブズ」などさまざまな事業の運営を担う。