「働かないで収入を得たい!」と夢見る方は多いと思います。不労所得を得られるようになると、時間のゆとりができるだけでなく、会社員のように勤務先の倒産や急な減給を心配する必要がなくなります。でも、本当に働かないで収入を得ることはできるのでしょうか? よく例に挙げられる不労所得の方法について、実現可能性を検証してみました。
- ネットで検索するとさまざまな不労所得の方法が見つかるが、詐欺や犯罪には注意
- 不動産投資、アフィリエイト、転売、YouTuberなどの実現可能性は?
- 株式や投資信託、FXなどの投資が、現実的な不労所得の方法
ネットで調べると出てくる「不労所得」
「なるべく働く時間を減らしたい。でも、収入はほしい」と考えたことはないでしょうか。もし本当に、働く時間を大幅に減らしてもある程度の収入が確保されていれば、仕事に追われる生活から脱却できるようになります。会社などで働いている場合も、ほとんど働かずに得られる副収入があれば、たとえ勤め先の収入が不安定でも、安心して生活を送れるでしょう。
働かずに得られる収入のことを「不労所得」と呼びます。ネットで不労所得について調べると、さまざまな方法が出てきます。例えば、何もしなくても定期的に口座にお金が振り込まれるような完全な不労所得もあれば、会社などに勤務する必要はないものの、お金を得るためにはある程度の労力が求められるものもあります。
また、不労所得を得るために元手となる資金が必要かどうかも、その方法によって異なります。ほとんどお金をかけずに始められるものもあれば、多額の資金が必要なものも少なくありません。
そして、何より気をつけなければならないことは、「不労所得」として挙げられている手法の中には、詐欺や犯罪につながるものも少なからず混ざっていることです。世の中には「おいしいもうけ話」はありません。いくら不労所得といっても、それなりに頭や体を使ったり、お金が減るリスクを負ったりすることは必要になります。
以下では、詐欺や犯罪ではない「不労所得」の中で、ネットでよく紹介されている代表的な方法について、それぞれのメリットやデメリット、実現可能性について考察していきます。
不動産投資
不動産投資のメリット
- 経営が軌道に乗れば、安定した収入が得られる
- インフレ対策や節税対策にも活用できる
不動産投資のデメリット
- 不動産を所有していない場合には、まとまったお金が必要。場合によっては多額の借金を背負うことも
- 物件選びに失敗すると、予想を下回る収入しか得られない
- 最初のうちは物件の管理が大変。管理会社を利用する場合は慎重に選ぶ必要がある
不動産投資で不労所得を得られる実現可能性……△
不動産投資とは、不動産を運用して利益を得るという投資手法のひとつです。ひとくちに不動産投資といっても、どのような不動産を利用するか、どのような方法で収益を上げるかなどによって、さまざまなパターンに分けられます。例として、以下のような方法があります。
所有する土地でアパートやコインパーキングなどを運営
例えば、すでに土地を所有している場合であれば、自分の土地でコインパーキングを運営したり、自動販売機を設置したりすることで収益を得ることができます。さらに広い土地を持っていれば、アパートやテナントビルを建てて、家賃収入を得るという方法もあります。コインランドリーなどのように、日頃から管理人を置かなくてもよい施設も検討できるでしょう。
ただし、繰り返しになりますが、この方法は自分で土地を所有していることが条件になります。該当する方は多くはないでしょう。さらに、コインパーキングやコインランドリーは、人口が多く人通りも多いところでなければ成り立たず、利用者が少なければ赤字を増やすことになります。「どの地域に土地を所有しているか」も重要なポイントとなります。
施設の運営は管理やメンテナンスが必要です。本業が忙しくないのであれば、自分でも管理業務をすることで管理費用を節約して、利益率を高めるのもひとつの方法です。
マンションの1室を購入して貸し出す
また、土地や建物などを自分で所有していなくても、ワンルームマンションなどを1室、あるいは1棟購入し、それを貸し出して家賃収入を得る方法もあります。この手法は一般的に「マンション投資」と呼ばれます。もちろん、マンションを買うためには多額の初期費用が必要で、ローンを利用するのが一般的です。マンションの運営が軌道に乗れば、家賃収入で初期費用を回収でき、それ以降の収入はまさに不労所得になります。
マンション投資のリスクは、マンションに誰も入居せず、空室になってしまうことです。空室を避けるために賃料を下げれば、その分だけ利益は減り、不労所得は遠のいてしまいます。マンション投資では物件選びが非常に重要であり、立地が悪い物件を買ってしまったら不労所得どころか、借金返済すらままならなくなります。
マンション投資で成功するためには、管理会社を慎重に選ぶことも必要です。信頼できる管理会社と契約すれば、清掃などのビル管理から、入居者の募集までをすべて任せられるため、自分の時間を使わなくてすむのがメリットです。マンションの管理状態に問題があると退去者が増え、入居者も決まりにくくなります。費用対効果を考えながら、適切な管理を行うことが大切です。
資金計画と運営計画をしっかりと立ててから、不動産投資に踏み出すようにしましょう。
アフィリエイト
アフィリエイトのメリット
- 軌道に乗れば、ほとんど手間をかけずに収入が得られる
アフィリエイトのデメリット
- ウェブサイトを作るのに手間がかかる
- 単価が低いため、生活費をまかなえるほどの収入を得るのは難しい
- 検索エンジンのアルゴリズムにも左右されやすく、収益が安定しない
アフィリエイトで不労所得を得られる実現可能性……×
アフィリエイトとは、運営するウェブサイトやブログに広告を載せたり、商品を紹介したりすることによって報酬を受け取るビジネスモデルのことです。ユーザーが広告をクリックするだけで報酬が発生する「クリック型」や、ユーザーが広告を経由して商品やサービスを購入したら報酬を受け取れる「成果報酬型」などの種類があります。それぞれの仕組みや報酬額をしっかりと把握しておきましょう。
ユーザーが多いウェブサイト・ブログを運営し、なおかつユーザーが広告にも興味を持ってくれるなら、ほとんど何もしなくても収入が得られるというメリットがあります。しかし、なかなかユーザーがつかない場合もあるので、安定した収入が得られるとは限りません。検索エンジンのアルゴリズムといった、自分ではどうにもならない外部要因に左右されやすいのもデメリットです。
そもそも、固定ユーザーが増えたとしても、報酬の単価が低いことがほとんどのため、生活費をまかなえるほどの収入を得ることは困難です。こまめにチェックしたくなるような面白い話題を提供することはもちろんのこと、広告に興味を持たせるような文章力も必要になるでしょう。しかし、そこまで手間暇をかけるようになったらもはや「不労所得」とは呼べず、本業や副業と呼ぶべきかもしれません。
転売・せどり
転売・せどりのメリット
- 扱う商品によっては大きな利益も期待できる
- 優良な仕入れ先が見つかれば、手間をかけずに収益を得られる
転売・せどりのデメリット
- 商品を仕入れるのに手間がかかる
- 商品点数が多くなると発送作業にも手間がかかる
- 商材や売り方によっては法に触れる可能性もある
転売・せどりで不労所得を得られる実現可能性……△
転売・せどりの基本は、安く買って高く買うことです。相場よりも安いものを見つけて購入し、フリマサイトなどで販売して差額を利益とします。ニーズのある商品を安価に仕入れるルートをすでに持っているのであれば、手間をかけずに安定した収入を得ることが可能です。
しかし、実際のところは、ニーズの高い商品を安価に仕入れるルートを見つけることは簡単ではありません。仮に見つかったところでユーザーのニーズはすぐに変わるため、売れずに在庫を抱えることにもなりかねません。
売れる商品をたくさん仕入れられた場合も、その分だけ仕入れや発送の作業量は多くなります。得られた利益を作業時間で割って時給を計算したら、「普通に働いた方がよかった」という本末転倒な事態にもなりかねません。
また、家庭にある不用品を除き、営利目的で中古品を販売するときは「古物商許可証」が必要です。許可証なしに中古品を販売するのは違法行為に該当する可能性があるため注意しましょう。新品であっても、家電製品などについては、小売店で一度販売されたら中古品として扱われるのが一般的のようです。
ほかにも、チケット類や偽ブランド、海賊版のDVD、コピーしたデータなどの転売は法に触れるため、決して手出ししないようにしましょう。
YouTuber・VTuber
YouTuber・VTuberのメリット
- 人気が出れば広告収入が加速度的に増えていく
YouTuber・VTuberのデメリット
- 動画の編集には手間がかかるため、よほど人気が出なければ費用対効果は低い
- クオリティの高い動画をコンスタントに作成するのは困難
- 広告料を決めるプラットフォーマーの方針によって収入が激減する可能性もある
YouTuber・VTuberで不労所得を得られる実現可能性……×
YouTuberやVTuberは、家に居ながらにして動画配信の広告収入で稼ぐことが可能です。動画の作成や編集に多大な手間はかかりますが、人気が出れば広告収入が加速度的に増えていく可能性があるため、うまくいけば効率良くお金を稼ぐこともできます。
ただし、YouTuberやVTuberが世の中で注目され始めてから何年も経っており、以前から活躍している人も多く、動画の本数は数え切れないほどあります。そのような超激戦区に今から参入して、ユーザーに選んでもらえる動画を作成するのは非常に難しいことです。ターゲットやコンセプトをていねいに決めることはもちろんのこと、今までになかった独創性や、当然のことながら内容や企画のクオリティの高さなども求められるでしょう。
また、広告を設定するためには一定の基準がある点にも注意が必要です。例えば、YouTubeでは登録者数が1,000人を超えていることや、直近12カ月での総再生時間が4,000時間を超えているといった条件を満たさなければ、収益を得られるパートナープログラムに登録できません。そこをクリアするだけでもたいへんです。
なお、広告料を決めるプラットフォーマーの方針はひんぱんに変わるため、これまでコンスタントに収益が上がっていたとしても、運営側の方向変換により収入が減ってしまう可能性もあります。実際に2023年1月には「YouTuberの広告収入が激減」という報道がありました。
以上の理由から、YouTuberやVTuberとして稼ぐことは、そもそも実現可能性が低いといえるでしょう。不労所得のためというよりは、趣味の一環として、採算を考えずにやるのがいいかもしれません。
株式や投資信託、FXなどの投資
投資のメリット
- 商品選びと売買の手続きだけで収入を得られる
- 保有しているだけで収入を得られるものもある
- 少額で始められる金融商品も多い
投資のデメリット
- 金融商品によっては短期間で大きな損失を抱えることもある
投資で不労所得を得られる実現可能性……○
株式や投資信託、FXなどの投資は、利益を期待できる金融商品を売買することや保有することによって収益を得る仕組みです。例えば株式であれば、株価が高くなったタイミングで売却すれば、手数料などを除いた差額を利益として得られます。また、保有しているだけでも配当金や株主優待を得られることもあるので、手間をかけずに収入を得たい方にも適しています。
ただし、金融商品によっては短期間で値上がりできる可能性がある半面、値下がりの可能性も大きく、短期間で大きな損失が生じることもあるため、投資手法や金融商品を選ぶときは注意が必要です。複数の金融商品を保有したり、少額ずつ積み立てたりするなど、値下がりのリスクを低減する工夫も忘れずに実施しましょう。
不労所得の王道は「投資」
今まで説明した不労所得の方法の中でも、実現可能性が高いのは、株式に代表される金融商品への投資だといえます。自分が働く代わりにお金に働いてもらい、うまくいけば「お金がお金を生む」という好循環になるのが投資のメリットです。ほかの不労所得の方法と比べて手間や時間がかからず、必ずしも初期費用がかからないため、本業が忙しくても、手元にまとまったお金がなくても、すぐに取り組めます。
ただし、投資といってもいろいろな手法や金融商品があるため、その中から自分に合うやり方を選ぶことが大切です。ここからは、代表的な投資の手法および金融商品について説明します。ぜひ参考にしてください。
株式の個別銘柄
株式の個別銘柄のメリット
- 短期的に大きく増やす、長期的にコツコツ増やすなど、自分のスタイルに合わせた投資ができる
- 経営が安定している企業に投資をすれば、比較的安定した配当収入が得られる
- NISAを利用して、一定の金額まで非課税で投資できる
株式の個別銘柄のデメリット
- 投資先が倒産すると株式の価値がなくなる
- 株価が下落し続ける可能性もある
成長を期待できる株式を購入し、株価が大きく値上がりしたタイミングで売却すれば、大きな利益を手にできる可能性があります。例えば、将来性が高い業種・企業の銘柄の中には、「テンバガー」と呼ばれる株価が10倍以上になるものもあるかもしれません。
一方、経営が安定している大企業の銘柄を買うことで、配当収入で手堅く、年率5%程度の利益を積み上げていく投資方法も可能です。短期的に大きく増やしたい人も、長期的にコツコツ増やしていきたい人も、適切な銘柄を選ぶことによってどちらにも使える点が株式投資のメリットです。
ただし、投資先の会社が倒産したら、株式の価値がなくなってしまうことがある点には注意しておきましょう。倒産まで行かなくても、会社の業績が悪ければ株価が下落し続けることや、配当金が支払われないこともあります。
金融商品には、今回紹介しないものも含めてさまざまな種類がありますが、その中でも株式の個別銘柄は値動きが大きい傾向があります。株価が下がれば損をしてしまうため、銘柄選びや売買のタイミングには慎重な判断が不可欠です。
投資信託
投資信託のメリット
- 急激な価格上昇・下落が比較的少ない
- 少額でも購入できる
- NISA、つみたてNISAを利用できる
投資信託のデメリット
- 短期間で多額の利益を得ることは難しい
- 商品の中には価格変動が激しくリスクが高いものもある
投資信託とは、複数の株式や債券などをひとまとめにした金融商品です。1つの投資信託で数多くの銘柄へ一度に投資できるため、株式の個別銘柄と比べて、値動きのリスクが軽減される点はメリットです。ただし、短期的に大きく値上がりすることも期待しにくいため、どちらかというと投資信託は長期的にコツコツ増やしていきたい人向けといえます。今の経済動向の中では、年率2~5%ほどの利益を目指すのが現実的といえるでしょう。
証券会社によっては100円ほどから購入できるため、まとまったお金がなくても始められる点もメリットです。毎月同じ金額で、同じ投資信託を少しずつ買い続ける「積立投信」なら、割高なタイミングで一気に購入してしまう事態を避けられるため、よりリスクを抑えた投資が可能になります。
また、株式の個別銘柄や投資信託では、NISAという投資の利益が非課税になる制度を利用できるのもメリットです。投資信託の中には、積立投資に特化したつみたてNISAの対象になっているものもあります。
FX
FXのメリット
- 少額で始められる
- レバレッジを利用すれば、少ない元本で大きく増やすことも可能
FXのデメリット
- 短時間で多額の損失が生じることもある
- 投資した資金以上の損失が生じる可能性もある
FXは為替変動によって利益を狙う金融商品です。外貨預金と似ていますが、円高になっても利益を狙えるのが大きな特徴といえます。「レバレッジ」と呼ばれる効果により、少ない元本でも、大きな利益を生み出すことが可能です。
しかし、為替相場が狙いと反対の方向に動くと、レバレッジ効果も狙いと反対側に働くことになり、大きな損失を抱えてしまいます。場合によっては、FXの口座に入れたお金を超える損失が発生してしまい、「追証」と呼ばれる追加の支払いが必要になることもあります。
慣れないうちはレバレッジを低く設定するなど、慎重に投資を進めるようにしましょう。
投資にはリスクが付きもの。自分が働くことも大切
投資は不労所得を得るための有効な方法ですが、2008年に起きた「リーマン・ショック」のように、世界経済の影響によって、ほぼすべての金融商品が値下がりすることもあります。生活に必要なお金は銀行に預けておいて、余裕資金を投資に回すことが大切です。余裕資金であれば、持っている金融商品が一時的に値下がりしても、価格が戻るまで待ち続けることができます。それとあわせて、金融商品や購入時期などを分散させるなど、値下がりのリスクを軽減することも検討しましょう。
また、投資と同様に、収入を得る方法も分散することが大切です。投資などの不労所得のみに頼るのではなく、できれば定期的に給与をもらえるような仕事をするなど、いくつかの収入手段を確保しておくと安心です。