テレビ、ラジオ、動画配信も含めて様々なコンテンツの台本や脚本を執筆する放送作家&脚本家が700人以上所属する日本放送作家協会がお送りする豪華リレーエッセイ。ヒット番組を担当する売れっ子作家から放送業界の裏を知り尽くす重鎮作家、目覚ましい活躍をみせる若手作家まで顔ぶれも多彩。この受難の時代に力強く生き抜く放送作家&脚本家たちのユニークかつリアルな処世術はきっと皆様の参考になるはず!
連載第87回は、ドラマ作家・劇作家・演出家でおなじみの吉村ゆうさん。
とは言っても日本の話じゃないのが、悲しい!
そうなんです。日本の脚本家の現状はあまりに悲しすぎるのです。
世界で一番稼いでる脚本家のジャンル知っていますか?
舞台の劇作家なのです。舞台と言っても、ミュージカルです。世界でロングランを続けている作品が一杯ありますよね?
ステージごとに、ロイヤリティが脚本家に支払われるのです。
ブロードウェイだけでの上演回数(2020年の時点)が、「オペラ座の怪人」(約13000回・ギネス記録)、シカゴ(再演・約9500回)、「ライオンキング」(約9200回)、「CATS」(約7500回)がベスト3で、6000回超えているのが、「ウィキッド」「レ・ミゼラブル」「コーラスライン」「マンマ・ミーヤ」「美女と野獣」と、ロングラン公演が沢山あるのです。
ブロードウェイのミュージカルとなると、もっともっと高いとは思いますが、例えばワンステージ3万円脚本家に入るとして、5000回だと、軽く1億円を超えてしまいます。
これはミュージカルに限った事ではありません。ストレイトプレイでもロングラン回数が1000回を超える公演がかなりあるのです。
ブロードウェイを例えにとりましたが、ロンドン、韓国の大学路(テハンノ)でも、ロングラン公演は存在しています。
日本でも劇団四季がロングラン公演してますが、そのロイヤリティは日本の作品ではないので、原作者(劇作家)の元へと行ってしまいます。
じゃ、どうしたら日本の脚本家は稼げるのか?
分かりません。
随分前の話になりますが、韓国ドラマのストーリーを書いた事があります。軽く本1冊(小説)になる位の分量で、まるまる2~3カ月かけて16話分提出しました。韓国ではそうやってドラマ作りをするのが当たり前だという事でした。しかし、実現化せず、僕には一銭も支払われませんでした。シノプシスとは違います。ストーリーにも関わらず!です。
ところが同時期に別の企画で同じ様にストーリーを書いて、やはり実現化しなかった韓国の作家には、日本円で約800万程度、支払われたと聞きました。
違いはなんだったのか?
契約書でした。
事前にそういう契約書を制作会社と交わしてから書き始めていたのです。
日本の制作会社は韓国作家と仕事をする時には、韓国の習慣に則って契約者を交わさざるを得なかったという事です。
しかし、僕は日本の作家なので契約者は交わしませんでした。
日本も最近、脚本契約書を交わす事が多くなりました。ただストーリー作りにおいて契約書を交わすという事はあまり聞きません。
長くなってしまいましたが、どうしたら日本の作家や役者(特に舞台の)が、その仕事だけで暮らして行ける様になるのか?
日本でも、どうにかしてロングランシステムが定着しないか?
試みてみたりはしましたが、資金力も乏しく、ましてや日本人は普段芝居を観る習慣がないので(デートで舞台ってあまり聞きませんよね?)難しいのかもしれません。
文化(作家や創造者)に優しい国……文化にお金をかける国……に、どうかなって欲しいと切に願っています……。
きっと死ぬまで僕たちの戦いは続く気がします……。
次回は脚本家のいとう斗士八さんへ、バトンタッチ!
是非、お越しください!
私の主宰する東京ハイビームが10月21日~30日 @シアター風姿花伝『黄金のコメディフェスティバル2022』に参加致します。
コメディ劇団が6つの作品を競います。コメディを上演し続けて来た劇団の真価が問われるフェスティバルです。
皆さま、お時間ありましたら、是非、劇場に足をお運びください。濃密な45分の短編作品をどうぞお楽しみください。
以下サイトへのリンクです。↓
https://www.come-fes.net/
放送作家の地位向上を目指し、昭和34年(1959)に創立された文化団体。初代会長は久保田万太郎、初代理事長は内村直也。毎年NHKと共催で新人コンクール「創作テレビドラマ大賞」「創作ラジオドラマ大賞」で未来を担う若手を発掘。作家養成スクール「市川森一・藤本義一記念 東京作家大学」、宮崎県美郷町主催の「西の正倉院 みさと文学賞」、国際会議「アジアドラマカンファレンス」、脚本の保存「日本脚本アーカイブズ」などさまざまな事業の運営を担う。