現役証券アナリストの佐々木達也さんが、株式市場で注目度が高い銘柄の強みや業績、将来性を解説する本連載。第51回は、「リンゴ皮むき工法」で特許を取得するなど、プラント解体で独自の技術を持つベステラ(1433)を取り上げます。

  • ベステラは安全性に優れ、工期の短縮も実現できるプラント解体の工法を開発
  • 風力発電設備の解体技術にも強み。脱炭素による市場の広がりにも期待
  • 9月に業績を下方修正したが、悪材料は出尽くしたと見て安値圏で株を拾う局面か

ベステラ(1433)はどんな会社?

ベステラは、タンクや工場などのプラント解体に特化した企業です。電力や石油精製、製鉄、ガスなどの安全性が必要なプラントの解体工事で「美しく、壊す」ことを得意としています。
会社名のベステラは、ラテン語で大地と地球の意味を示す“BEST”と“TERRA”を合成したものです。

ベステラは施主から請け負った解体工事を外注先に発注し、施工管理などに特化します。工事用の重機や設備などを保有せず、材料などの仕入れも行わない「持たざる経営」のビジネスモデルです。

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ベステラ(1433)の強みは?

ベステラの強みは、特許による解体工法です。特に2004年に特許を取得した「リンゴ皮むき工法」が特徴的です。テレビや新聞でもリンゴの皮をむくようにガスタンクを解体する工法で目にしたこともある方もいらっしゃるのではないでしょうか?

従来、大型のガスタンクのような大型の球体の解体は、球体のホルダーに足場を溶接し、手作業で行う手間も掛かり、リスクの大きい工事でした。
しかし、リンゴ皮むき工法では、溶断ロボットの「りんご☆スター」を用いることにより、足場の設置が必要ありません。切断部分も重力に従ってリンゴの皮のように渦巻き状に解体できるため、地上への吊り降ろし作業が不要となり、安全性に優れつつ、工期を短縮できます。

ガスタンク
従来、ガスタンクの解体はリスクが大きく手間もかかっていたが、ベステラは安全かつ短納期での解体を実現できる工法を開発した(写真はイメージです)

そのほか、脱炭素による新たな解体の市場の広がりも予想されます。同社は陸上型の風力発電設備の解体工事で保有する特許の実施許諾契約を日立パワーソリューションズと締結しました。

国内で風力発電の黎明期に設置された陸上型の風力発電設備は、建設から15~20年の耐用年数を迎えており、今後も台風や落雷などによって解体が必要な機体も今後増えてくるとみられます。
ベステラは、安全や工期短縮に優れた転倒工法により、風車やタワーなどの機体を安全に転倒させる技術を強みとしています。

ベステラ(1433)の業績や株価は?

ベステラは9月8日に今期2024年1月期連結決算の業績予想を下方修正しました。

今期は売上高が前期比40%増の80億円、営業利益が2億1000万円の黒字(前期は2億円の赤字)を見込んでいます。
プラント解体工事の豊富な需要を背景に大型の解体工事を受注しており、 売上高は受注残高を背景として下半期以降伸びる前提です。
しかし現状先行している大型工事の利益率が、戦略的な値下げもあり、他の工事よりも低かったことが影響しています。

【図表】ベステラ(1433)の株価(2022年9月~直近、週足)
ベステラ(1433)の株価(2022年9月~直近、週足)

9月22日の終値は1001円で投資単位は100株単位となり、最低投資金額は約10万円です。採算の悪化や人件費などのコスト増加による影響で前期は営業赤字だったこともあり、株価は2020年1月高値2020円から下落トレンドが続き、半値以下となりました。直近の業績下方修正を受けて、株価は安値圏となっています。

しかし、足元では元請けからの直接受注を増やし、採算の良い元請け工事や公共工事の比率を高める取り組みの効果が出つつあります。工事監督の採用も積極的に進めており、受注体制の強化も進んでいます。
また、脱炭素の機運の広がりや国内のプラントや設備についても建設後50年を経過し老朽化しているものが多く、解体市場ではさらなる拡大が予想されます。

新型コロナの5類移行で、工事についても前期に比べて進行しやすくなっていることもあり、今後も受注環境は好調に推移するとみられます。

株価は、年足ベースでは2017年の高値2799円からみても4割以下の水準と長期での安値水準となっています。直近の業績下方修正で当面の悪材料はいったん出尽くしたと考えて、安値圏で株を拾う局面に入ったとみています。

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