投資家が投資信託(ファンド)を購入した時の基準価額を「個別元本」といいます。今回は、個別元本が変動する要因について「ファンドの購入方法」と「基準価額や分配金との関係」の2つの点からみていきます。
- 基準価額はファンドの時価を表す価額。個別元本は投資家が購入した時の基準価額
- 複数回に分けて購入の場合、購入時点の基準価額が異なることから個別元本も変わる
- 個別元本が分配金支払い後の基準価額より高いと、個別元本は下がる
投資信託の基準価額と個別元本とは
最初に、投資信託(ファンド)の基準価額と個別元本について説明します。
基準価額とは
基準価額はそのファンドの時価を表した価額です。例えば、株式で運用するファンドでは、日々そのファンドが投資している銘柄の価格が変動し、それに応じて基準価額も変動します。また、投資先の銘柄が配当金を出すと、その分基準価額は上昇します。海外企業に投資するファンドでは為替の変動(円高・円安)による影響でも基準価額は上下します。(為替ヘッジ有のファンドは除きます)
個別元本とは
個別元本は、投資家が購入した時の基準価額です。基準価額は日々変動しますので、購入時期により個別元本は変わります。同じファンドでも、基準価額が10,000円の時に購入すれば個別元本も10,000円ですし、基準価額が15,000円の時に購入すれば個別元本も15,000円になります。
個別元本が変動する2つの要因
個別元本が変動する要因として、購入方法によるものと、基準価額や分配金に起因するものの2
つがあります。
最初に、購入方法による要因についてみていきます。
1.購入方法による要因
複数回に分けて同じファンドを購入した場合、個々の購入時点の基準価額が異なることから個別元本も変わってきます。
例えば、1回の購入金額を30,000円として基準価額10,000円(1口)のファンドを購入すると3口購入できます。2回目の基準価額が15,000円の場合は2口の購入になります。2回購入後の個別元本は、合計購入金額を合計購入口数で除して求めます。
上記の場合、12,000円(60,000円÷5口)が個別元本です。つみたてNISAなどを利用して毎月購入すると、個別元本は毎月再計算され、その都度変動します。
2.基準価額や分配金に起因する要因
基準価額や分配金に起因する要因は、1回だけの購入でも個別元本を変動させる要因になります。ただし、複数回購入することによる変動と異なり、この要因は個別元本を下げる方向にだけ作用します。
以下、個別元本が変わらないケースを1つ、個別元本が変わるケースを2つ、計3つのケースについてみていきます。各ケースとも分配金の支払い以外に基準価額の変動要因がないものとして説明しています。
■ケース1:個別元本が変わらないケース
個別元本が10,000円、基準価額が12,000円の時、分配金を1,000円支払った場合。
基準価額12,000円から分配金1,000円分差し引かれ、分配後の基準価額は11,000円になります。しかし、個別元本が分配金支払い後の基準価額より低い(11,000円>10,000円)ため、個別元本は分配金支払い前の10,000円で変わりません。受け取った分配金1,000円は普通分配金となり、課税対象になります。
■ケース2:個別元本が変わるケース(元本払戻金が発生)
個別元本が10,000円、基準価額9,000円の時、分配金を1,000円支払った場合。
基準価額9,000円から分配金1,000円分差し引かれ、基準価額が8,000円に引き下げられます。個別元本が分配金支払い後の基準価額より高い(8,000円<10,000円)ため、元本払戻金(特別分配金)となり、個別元本は分配金支払い前の10,000円から1,000円分下がり9,000円になります。この場合の分配金は元本の払い戻し(元本払戻金)にあたるので課税対象になりません。
■ケース3:個別元本が変わるケース(元本払戻金と普通分配金が発生)
個別元本が10,000円、基準価額が11,000円の時、分配金を2,000円支払った場合。
ケース3では、分配金を支払う前の基準価額は11,000円、個別元本が10,000円と基準価額が個別元本を1,000円上回っています。このため、分配金2,000円は普通分配金1,000円、元本払戻金1,000円に分かれます。普通分配金の部分は分配金支払い前の個別元本を上回っていますので課税対象です。元本払戻金の1,000円が個別元本を下げ、分配金支払い後の個別元本は9,000円になります。ケース2より少し複雑です。
以上、個別元本が変動する要因について「ファンドの購入方法」と「基準価額や分配金との関係」の2つの視点からみてきました。個別元本の変動要因を確認する際、参考にしていただければ幸いです。