現役証券アナリストの佐々木達也さんが、株式市場で注目度が高い銘柄の強みや業績、将来性を解説する本連載。第62回は、連載第9回でも取り上げた、プラチナグループメタルと呼ばれる貴金属の加工技術に強みを持つフルヤ金属(7826)について、再び掘り下げていきます。

  • フルヤ金属はイリジウムやルテニウムなどプラチナグループメタルの加工技術に強み
  • 使用済み製品をリサイクルできる特殊技術を有し、高収益を実現している
  • 12月にはプライム市場に指定替え。インデックスファンドなどの資金流入に期待

フルヤ金属(7826)はどんな会社?

フルヤ金属は工業用の貴金属メーカーです。イリジウムやルテニウムなどの、プラチナグループメタルと呼ばれる稀少性が高く加工が困難な貴金属の取り扱いに強みを持っています。これらの貴金属は酸に強く、融点も高く腐食しにくい特性があるなど化学的に安定していることから、主にハイテク製品などに使われます。

イリジウムは、有機ELの発光材料、自動車の点火プラグ、高級万年筆のペン先、単結晶育成用るつぼなどで活用されています。また、ルテニウムは、データを記憶するHDDの塗布材料などでも用いられています。

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同社は1968年に設立され、その後工業用貴金属事業に参入しました。1981年には、国産第1号のイリジウムるつぼの開発に成功、事業を拡大していきました。現在でもイリジウムなどの加工生産を手がけるメーカーは数社しかなく、事業の独自性が評価され、2014年と20年には経済産業省からグローバルニッチトップ企業100選に認定されています。

スパークプラグ
イリジウムは、身近なところでは自動車の点火プラグに使用されている(写真はイメージです)

独自の加工技術とリサイクルまで手がける一気通貫の体制

フルヤ金属の強みは、イリジウムなどの加工技術です。プラズマ溶解炉を用いて、約5000度の高温・減圧の環境化で不純物を揮発させて高純度のインゴット(延べ棒)を生成します。さらに専用の圧延機、ワイヤー放電装置などの加工設備により、多様な貴金属製品を加工し、生産しています。

イリジウムやルテニウムは、世界の生産量の8~9割がほぼ南アフリカに集中しています。同社は南アフリカの鉱山企業と直接契約し、主原料を安定調達しています。

また、使用済み製品についてもリサイクルできる特殊技術を持っています。回収し再加工し、製品化することでリサイクルによる高収益を実現しました。生産から加工、回収までを一気通貫を手がけていることも同社の強みの1つとなっています。

フルヤ金属(7826)の業績や株価は?

フルヤ金属の今期2024年6月期は売上高が前期比11%増の536億円、営業利益が11%減の102億円を見込んでいます。

2月9日に発表した2023年7月~12月期(上半期)は売上高が前年同期比13%減の211億円、営業利益が39%減の45億円と、やや通期計画に対して出遅れ気味の決算でした。しかし株価は決算発表後も堅調に推移しており、上半期の減速よりも下半期以降の業績拡大への期待が大きいとみられます。

下半期からデータセンター向けの投資復調でHDD向けのルテニウム薄膜材料の販売回復が期待されます。また、半導体の製造装置向け温度センサーや有機EL用発光材料なども伸びが予想されます。足元ではイリジウムの単結晶育成用るつぼは医療用の受注も好調です。

【図表1】フルヤ金属の株価(週足、2022年3月~直近)
フルヤ金属の株価(週足)

3月8日の終値は10580円で、投資単位は100株単位となり最低投資金額は約106万円、予想配当利回りは約2.4%です。

2023年11月には公募増資により、約108億円を資金調達し、設備投資に充てると発表しました。需要の伸びる半導体温度センサーなど各種生産設備を増強します。排ガス浄化触媒、グリーン水素の製造装置用に水電解触媒の薄膜材料など、将来の事業成長の種となる研究開発も進めています。

12月には、東証スタンダード市場からプライム市場に上場市場区分が変更されました。これまでよりもインデックスファンドなどの大きな資金の流入も見込まれます。

【図表2】フルヤ金属の株価(月足、2014年1月~直近)
フルヤ金属の株価(月足)

直近の予想PERは約11倍、PBR(株価純資産倍率)1.48倍と、株価指標からみた割高感はありません。株価は2023年にかけてはボックス圏のレンジ内で推移しており、昨今の大型株相場からは出遅れ感があります。長期の月足チャートではまだ上昇基調は崩れておらず、再度の株価上昇に期待しています。

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