「預金なら安心」って本当なの? 「元本保証」って、実際に何を保障してくれるの? 実は、現金にもリスクが潜んでいるのです。本連載ではそんな「現金のリスク」を切り口に、お金のほんとうの価値を守るための資産運用について考えていきます。今回は、新NISAで大人気の投資信託の「オルカン」を題材に、分散投資とアメリカへの集中投資について考えます。
- オルカンは徹底した分散投資を行う一方、アメリカの比率が6割という偏りがある
- アメリカは人口が増え続けており、デジタルデバイスなどに強い企業も多い
- 一方で大統領選挙などの不確実な要素もあり、「アメリカ一択」にも不安がある
大型連休の初日でしょうか、1ドルが158円になりました。筆者が20年ほど前に100,000円で始めた外貨預金も、本稿執筆時点(2024年4月26日)150,000円になっています。時間がかかったとは言え、1.5倍になったのだから喜びたいところです。しかし、逆の見方をすれば、日本円の価値が3分の2になったという表現もできそうです。円の価値は大きく下落していますね。
さてNISAの活用についてです。いわゆる「オルカン一択」は妥当な選択なのでしょうか?
「卵を一つのカゴに盛るな」を具現化
運用商品は株式や債券、外貨建て生命保険、それに外貨建て預金など様々あります。中でも投資信託(=本稿では、以下ファンド)の最大のアドバンテージは分散投資です。
オルカンこと『eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)』は、日本や新興国を含む47の国と地域の企業に分散投資していますので、分散が徹底したファンドと言えるかもしれません。しかし投資先の国と地域の内訳を粒さに見ていくと、アメリカだけで62.3%を占めています(2024年3月29日時点。以下同じ)。また新興国は24の国と地域にも投資していますが、その割合は10.7%に過ぎません。ちなみに日本への投資の割合は5.6%です。
オルカンは「卵を一つのカゴに盛るな」を具現化した、徹底した分散投資を行っているという評価は間違いないのですが、国や地域別の投資の割合はずいぶんと偏ったものだといえるでしょう。あえて言うなら、「偏った分散投資」です。
偏りを是正せよという声は正しくない
さて、「オルカンの国や地域別の投資の割合を是正せよ」「偏りを改めよ」という声は、正しくありません。なぜなら、そもそもオルカンはインデックスファンドだからです。
インデックスファンドは、インデックスに連動する投資成果を目指すファンドです。オルカンのインデックスは「MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス(配当込み、円換算ベース)」ですので、オルカンに投資の割合の是正を意見するのは妥当ではありません。
やはりアメリカ一択?
偏った分散投資をするくらいなら、やはり「アメリカ一択」の方が効率が良いのでしょうか?
アメリカは移民の受け入れなどもあり、先進国でありながら人口が増え続けています。また、スマートフォンを筆頭に、アマゾンなどの通信販売、飲食運送代行を担うウーバーイーツ、WEBオンライン会議システムのZoomなど、私たちの暮らしや仕事に欠かせないデバイスやデジタルツールを開発し、提供している企業の多くはアメリカが発祥です。
それに何といっても、世界に190前後の国がある中で、アメリカ一国で世界のGDPの4分の1を占めます。資産を増やすなら「アメリカ一択でしょ」というのも有りかも知れません。
下図はeMAXISシリーズ(オルカンを含む三菱UFJアセットマネジメントのインデックスファンドシリーズ)の一部の、直近1年間の騰落率です。アメリカの占める割合が多いほど、プラスの数字が多いことが分かります。
投資対象 | 騰落率 | アメリカの 占める割合 |
---|---|---|
オルカン | 38.99% | 62.3% |
S&P500 | 45.85% | 100.0% |
先進国 | 39.94% | 73.8% |
TOPIX | 35.19% | 0% |
新興国 | 26.42% | 0% |
盛者必衰の理
中学校で親しまれている(?)平家物語の序には「盛者必衰の理を表す」という文言があります。日本の平氏の繁栄は、わずか一代で終わった儚いもの、ということです。「アメリカもいつかは……」という思いがよぎります。
その不安の一つが「もしトラ」でしょうか? 「もしトランプ氏が大統領に返り咲いたら」、アメリカは、世界は、どのように変化し、株価にはどのような影響があるのでしょうか? アメリカの人口増加の理由でもある移民政策や為替政策など、「どのようになるのか」不安は尽きません。
不安が尽きないなら、アメリカ一択という投資は避けた方が良いでしょう。