「預金なら安心」って本当なの? 「元本保証」って、実際に何を保障してくれるの? 実は、現金にもリスクが潜んでいるのです。本連載ではそんな「現金のリスク」を切り口に、お金のほんとうの価値を守るための資産運用について考えていきます。今回は、NISA口座で投資信託を運用する際に、時折チェックしておきたい「純資産残高」について解説します。

  • 投資信託で積立投資をする場合、基準価額以上に気にしたいのが「純資産残高」
  • 純資産残高が減ると「繰上償還」が行われ、ファンドの運用が終わってしまうことも
  • 純資産残高は投資信託の情報サイトで確認できる。2~3カ月に一度は確認したい

5月でクーラーを利用するのは、もう当たり前の時代になったのでしょうか? 今年の夏も暑くなりそうです。

さて、暑さではなく「熱さ」は、もう冷めてしまったのでしょうか? テレビなどで「新NISA」が話題になることが減ったような気がします。一方、3週間ほど前に書店を訪れると、「新NISA特集」と銘打った雑誌が平積みになっていました。新NISAが始まって、間もなく半年が経とうとしています。

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「投資って、時々刻々、見なきゃいけないんでしょ?」

「投資の経験がない」という方から、よく聞く言葉です。国内の上場株式ですと、平日の昼休みを除く9:00~15:00の間、株価はそれこそ時々刻々と変わります。ところが、アメリカの上場株式は(日本時間の)真夜中に株価は時々刻々と動きますし、為替にいたっては24時間、時々刻々と変わります。

ですが、これは株価や為替レートが変動しているということであっても、「変動している間、株価や為替レートをずっと注視しなければならない」ということではありません。「時々刻々と注視しなくても良い株式投資」をすれば良いのです。

なお、投資信託(本稿では、以下、ファンドとします)の基準価額(ファンドの価格のこと。株価と同じイメージ)は、1日に一回だけの変動です。しかも、最新の基準価額は前営業日のものになります。例えば、今日が2024年6月3日(月)だったとしましょう。今日、公表されているファンドの基準価額は前営業日の5月31日(金)のものになります。ですので、ファンドに投資をするのでしたら、「基準価額の動きを注視する」のは全くの無意味です。

ファンドで最も気になるのは……基準価額ではなく○○

特に積立投資(NISAではつみたて投資枠)で最も気にしなくてはならないのは、ファンドの純資産残高です。純資産残高とは文字通り、そのファンドの残高です。なぜ気にしなくてはならないかというと、純資産残高が少ないと、運用会社がそのファンドの運用を止めてしまうからです。運用会社がファンドの運用を止めることを「繰上償還」と言います。

純資産残高が増える理由は2つあります。1つは運用の成果です。ファンドに組み込まれている株式・債券・不動産などの価値が上がれば純資産残高は増えます。が、ファンドを解約する額が大きければ、今度はファンドに組み込まれている株式・債券・不動産などを売却して現金化し、その現金が流出しますので、純資産残高が減少します。

オルカン』のように、ファンドに組み込まれている株価(とドルの価値)が上昇し、なおかつ投資資金の流入が続いていれば、純資産残高は、何ら問題ありません……と言い切れるのは「今のところ」です。将来までを保証しているわけではありません。『オルカン』の交付目論見書の9ページには「繰り上げ償還」の条項が載っています(下記参照)。おそらく、ほとんどのファンドには「繰上償還」の条項が設けられているはずです。

以下の場合等には、信託期間を繰上げて償還となることがあります。
・受益権の口数が10億口を下回ることとなった場合
・対象インデックスが改廃されたとき
・ファンドを償還させることが受益者のため有利であると認めるとき
・やむを得ない事情が発生したとき

筆者はここ2年間で繰上償還を3度経験

筆者は2022年に1度、2023年に2度、それぞれ繰上償還を経験しています。まあ、これだけ短期間に、しかもコロナ禍明けで株価が順調な時に、3度も繰上償還を経験する人は滅多にいないと思います。うち、2022年の繰上償還は「元本割れ」、つまり損失を確定することになりました。2023年は、その前年の教訓が活きたのか、利益を出し、税金を源泉徴収されて終えることができました。

「繰上償還」は突然、行われるわけではなく、少なくとも半年くらいの周知期間を設けているようです。ところで、ネット証券などの「資産状況」の画面には、自身が保有するファンドの基準価額や損益の状況などが載っています。しかし、ファンドの純資産残高は載っていません。

2022年の繰上償還の時のお話です。ネット証券の画面を毎日、チェックしているわけではありませんが、少なくとも「全く見ない」週はありません。あるファンドの基準価額を見ると、ずっと変わらない日が続いていました。ファンドに組み込まれている株価は変動しています。「妙だな」と思って、そのファンドの運用会社のサイトを見ると、「しまった、やられた!」と叫んでしまいました。基準価額の折れ線グラフはずっと横ばい、純資産残高はみるみる減り続けています。

そして、サイトの上欄には「当ファンドは募集を停止しております」の文字。あらためて、ネット証券の「お客様へのご案内」の欄を見ると、「繰上げ償還のお知らせ」と書いてありました。

純資産残高はどうやって確認するのか?

【図表】投資信託の基準価額と純資産残高のグラフ
投資信託の基準価額と純資産残高のグラフ

ファンドのグラフをご覧になることはあるでしょうか? 上図のようなグラフは、ファンドを紹介する情報サイトに載っています。たいてい、どのサイトも折れ線グラフは基準価額(2本=分配金再投資あり・分配金再投資なし)を、塗りつぶしの面グラフは純資産残高を表している場合がほとんどです。

図のグラフで、点線で囲んだところは、基準価額の動きと無関係に純資産残高が大きく減っています。これは解約などにより投資資金が流出することで、純資産残高が減ったと考えられます。ちなみに、このファンドは繰上償還は行われていません。

まとめに代えて

ファンドの目論見書に書いてある「繰上償還」の条項は「10億口を下回ったら」とか「30億口を下回ったら」など、ファンドの「口数」で書かれていることが多いようです。しかし、ファンドのグラフの純資産残高は「額」で表示されています。ですので、「純資産残高が○○億円を下回ったら償還」と言い切ることはできません。また、純資産残高が「○○億円なら安心です」とも言えません。しかし、純資産残高の動向は繰上償還の有無についての目安にはなると思われます。

なお、純資産残高のチェックの頻度ですが、2~3カ月に1回くらいの割合で十分だと思っています……これは経験によるものです。

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