2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻した「ウクライナ危機」や、2023年10月7日にイスラエルに対するハマスの奇襲攻撃に端を発した、ガザへのイスラエル軍の侵攻など地政学リスクの高まりにより、「有事の金」といわれる金(ゴールド)の価格が上昇しています。この記事では、金投資の方法と、金と他の投資商品(株式・債券・REIT)のそれぞれの期待できる収益の違い、投資信託やETF(上場投資信託)を利用した金投資について説明します。

  • 金投資で期待できるのは値上がり益のみ。株式や債券などと違って配当や利子はない
  • 金の投資信託の実質的な投資対象はETF。金鉱企業を対象とした投資信託もある
  • 金ETFの中には現物の金への交換ができるものもある

金(ゴールド)投資とは

「金(ゴールド)投資」といわれると、インゴット(金の延べ棒)やコイン、純金積立などの現物投資を思い浮かべる方が多いかと思います。金投資には、上記の現物投資以外にも、金先物取引や投資信託、ETFを利用した取引方法もあります。

【図表1】『純金上場信託(現物国内保管型)』の価格推移(2022年1月~2024年4月11日、週足)
『純金上場信託(現物国内保管型)』の価格推移(2022年1月~2024年4月11日、週足)

以下では、金と他の投資商品(株式・債券・REIT)の期待できる収益の違いについて、簡単に説明します。

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金(ゴールド)と株式・債券・REITの期待できる収益

金と株式、債券、REIT(不動産投資信託)のそれぞれの期待できる収益は、以下のようになります。

金(ゴールド)投資で期待できる収益

金(ゴールド)は、需給関係によって価格が変動します。需要が供給を上回れば金価格は上昇し、需要が供給を下回れば金価格は下落します。ただし、金自体に価値があるので、下落しても無価値になるリスクはありません。

金投資で期待できる収益は、値上がり益(キャピタルゲイン)のみです。株式や債券、REITで期待できる配当や利子、分配金による「インカムゲイン」は期待できません。

金投資
金は需給関係で価格が変動するが、株式や債券と違って無価値になるリスクはない

株式投資で期待できる収益

株式投資は、値上がり益(キャピタルゲイン)と、企業の業績に応じて定期的に配当を支払われる配当(インカムゲイン)の両方が期待できる投資商品です。ただし、企業の業績などにより、値下がるリスクや、無配(配当金0円)になるリスクがあります。また、銘柄によっては、株数や保有期間によって株主優待として受け取ることも期待できます。

その中でもっとも期待される収益は、値上がり益(キャピタルゲイン)になります。

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債券投資で期待できる収益

債券(利付債)は、定期的の利子の支払い(インカムゲイン)があり、満期(償還)には額面金額で元本が受取れます。また、途中(満期前)に売却する場合には値上がり益(キャピタルゲイン)が期待できます。ただし、値下がりにより損失が発生するリスクがあります。

通常、債券投資投資家が期待する収益は、安定した利子(インカムゲイン)です。

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REIT(不動産投資信託)で期待できる収益

REITは、保有するビルなどの賃料収入や売却益などの利益を、投資家へ分配金として支払います。

J―REITの場合は、収益の90%以上を分配金として支払うことで法人税がかからない税制(リート税制)があり、比較的高い分配金利回りが期待できます。また、REIT価格の上昇によるキャピタルゲインも期待できます。反面、価格下落によるキャピタルロスのリスクや、分配金0円になるリスクがあります。

REIT投資で、多くの投資家が期待する収益は、値上がり益より分配金(インカムゲイン)です。

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【図表2】金・株式・債券・REITのそれぞれに期待できる収益
キャピタル
ゲイン
インカムゲイン
(配当・利子・分配金)
株主優待
サービス
金(現物) × ×
株式
(銘柄による)
債券 ×
REIT ×

投資信託を利用した金投資

金を投資対象にした投資信託の運用形態は、「ファミリーファンド形式」のものがほとんどです。マザーファンド(投資信託の実際の運用先)が直接金に投資をせず、ETFを通じて金へ投資が行われます。

投資信託の実質的な運用先となるETFが連動を目指している指数は「LBMAの円換算ベース」や、後に説明する『純金上場信託(現物国内保管型)』などです。LBMAはロンドン貴金属協会の略称です。

また、それ以外に金の採掘や精製を行う金鉱企業を投資対象にしたファンドもあります。金関連の企業への投資ができるのが投資信託の特徴の1つです。

ETF(上場投資信託)を利用した金投資

ETF(上場投資信託)では、現物の金価格に連動する指数と、先物取引の価格を用いる指標に連動するものがあります。金ETFの銘柄の1つである『純金上場信託(現物国内保管型)』(1540)は、一定数の受益権口数を保有していた場合、受益権口数と現物の金との交換が可能です。

現物の金への交換ができるETFがある点が、投資信託にない特徴です。

まとめ

この記事では、金投資の概要や他の投資商品(株式・債券・REIT)との期待できる収益の違いや、投資信託やETFを利用した金投資について見ていきました。金に投資する投資信託やETFの中には、新NISAの成長投資枠の対象商品となっているものがあります。

金投資に興味のある方は、一般社団法人投資信託協会のホームページで確認してみてください。

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