今年(2024年)1月に新NISAがスタートし、長期・積立・分散投資により資産形成に励む人が多くなりました。将来に向けて長期的に資産形成を行うことは必要ですが、短期、中期でも資金が必要になるケースは多々あります。
今回は、NISAによる長期投資を行う前に考えておくべき短期・中期の資金需要と、それに適した金融商品について見ていきます。

  • NISAは株式中心の運用になり、短期・中期の投資ではリスクが高くなりやすい
  • 短期的な支出には流動性。教育資金は期間により安全性・収益性のいずれかを重視
  • 老後資金はNISAで非課税効果を享受したい。短期・中期の資金需要にも目を配る

新NISAの投資対象商品は?

新NISAの投資対象商品は、公募型株式投資信託、上場株式、ETF(上場投資信託)、REIT(不動産投資信託)などになり、つみたて投資枠、成長投資枠ごとに金融庁がそれぞれ対象要件を定めています。

たとえば、つみたて投資枠では長期・積立・分散投資に適した投資信託やETFが対象商品になり、株式を投資対象にしていない投資信託への投資はできません(2024年11月時点)。また、成長投資枠でも個別の債券(国債や社債など)へ投資はできません。そのため、NISAは株式中心の運用になりやすく、投資期間が短期や中期の場合にはリスクが高くなる可能性があります。

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世論調査に見る金融資産の保有目的

ここでは金融資産の保有目的について、金融広報中央委員会が行った「家計の金融動向に関する世論調査」(2023年)を参考に見ていきます。
下の表は、調査時点で金融資産を保有している人を対象に、金融資産の保有目的(3つまでの複数回答)について調査した集計結果です。

【図表】金融資産保有世帯の金融資産の保有目的(3つまでの複数回答、単位=%)
保有目的 2人以上世帯
(n=5,000)
単身世帯
(n=1,600)
病気や不時の災害への備え 48.0 47.6
こどもの教育資金 22.0 2.0
こどもの結婚資金 4.4 1.1
住宅の取得または増改築などの資金 8.3 5.6
老後の生活資金 67.4 62.5
耐久消費財の購入資金 12.5 10.7
旅行、レジャーの資金 19.5 20.6
納税資金 2.5 2.5
遺産として子孫に残す 7.6 4.6
とくに目的はないが、金融資産を保有していれば安心 15.1 25.1
その他 4.0 6.7

出所:金融広報中央委員会が行った「家計の金融動向に関する世論調査」(2023年)を参考に筆者作成

表を見ますと、2人以上世帯、単身世帯とも「老後の生活資金」の比率が最も高く、次が「病気や不時の災害への備え」、3番目は2人以上世帯が「こどもの教育資金」、単身世帯が「特に目的はないが、金融資産を保有していれば安心」になります。また、「特に目的はないが、金融資産を保有していれば安心」は、2人以上世帯でも高い比率を占めています。

保有目的により選択する金融商品は変わる

金融資産は「流動性」「安全性」「収益性」で分類することができます。それぞれの代表的な金融商品は以下の通りです。

「流動性」が高い(お金を引き出しやすい)……預貯金
「安全性」が高い……預貯金、国債などの円建て債券
「収益性」が期待できる……個別株式、株式を投資対象にした投資信託など

以下では「流動性」「安全性」「収益性」の観点から、上の表の保有目的に適した金融商品について考えていきます。

病気や不時の災害への備え・耐久消費財の購入資金

資金が必要な時期が読めなく、短期に支出が発生する可能性があるものとしては「病気や不時の災害への備え」や、壊れる時期がわからない「耐久消費財の購入資金」があります。

病気や不時の災害への備えには通常、保険(医療保険、火災保険など)で備えますが、預貯金など流動性の高い商品で備えることもできます。

耐久消費財の購入に関しては、預貯金で備えることが一般的です。

こどもの教育資金

次に、必要な時期をずらすことが難しい項目として「こどもの教育資金」があります。教育資金は、子どもの年齢やその家庭の教育方針により必要な時期が異なります。

たとえば、大学入学まで5年程度とあまり期間がない場合には、株式や投資信託などに比べて安全性が高い国債など債券が選択肢になります。ただし、価格変動リスクを避けるため、支出が発生する前に満期になるものを選ぶ必要があります。

支出が発生するまで10年以上ある場合は、長期な運用が可能となるため、収益性を期待して、NISAなどを利用しての資産運用も選択肢に入ります。ただしこちらも、目標金額に達したら必要額を換金し預貯金などに移すなどの工夫が必要です。

老後の生活資金・とくに目的はないが、金融資産を保有していれば安心

「老後の生活資金」や「とくに目的はないが、金融資産を保有していれば安心」という保有目的の場合、自身の年齢や投資期間にもよりますが、収益性を重視した商品選びをすることができます。

一般的にNISAを利用した効果(非課税)も最も期待できるのが、これらの保有目的になります。

最後に

この記事では、短期・中期の資金需要に適した金融商品を中心に見てきました。

NISAへの投資を優先して、短期の支出を借入で賄っているといったケースを耳にすることがあります。そうならないように、上記の金融資産の保有目的を参考に短期・中期の資金需要にも目配りするようにしましょう。それが、ひいては安定したNISA運用の継続につながるかと思います。

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