新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。
2025年最初の記事は、日本取引所グループ(JPX)が策定・改定を行っている「コーポレートガバナンス・コード」について取り上げていきます。上場企業の企業統治に影響を与えるものなので、日本株に投資をしている方、投資を検討されている方は、ご一読ください。

  • 上場企業は、コーポレートガバナンス・コードに沿った企業統治を行う必要がある
  • 具体的な行動として株主優待廃止、政策投資株の縮減、低PBRの改善が挙げられる
  • コーポレートガバナンス・コードは近々改訂がありうるため、投資家は注目したい

コーポレートガバナンス・コードとは

企業の経営に関するガバナンス(統治)の基準や指針を定めたものがコーポレートガバナンス・コードです。日本では、東京証券取引所や大阪取引所を傘下に持つ日本取引所グループが「コートレートガバナンス・コード」を2015年6月に策定し、その後、2018年、2021年と2回、改定が行われました。

日本取引所グループは、プライム市場・スタンダード市場に上場している会社に対してはコードの全原則について、グロース市場の上場会社に対しては基本原則について、実施していない項目がある場合にはその理由を説明するよう求めています。そのため上場企業は、コーポレートガバナンス・コードに沿った企業統治を行う必要があります。

コーポレートガバナンス・コードの基本原則

コーポレートガバナンス・コードの基本原則は以下の5つです。

原則1:株主の権利・平等性の確保
原則2:株式以外のステークホルダーとの適切な協働
原則3:適切な情報開示と透明性の確保
原則4:取締役会等の責務
原則5:株主との対話

また、基本原則の下には【原則1-1】、【原則1-2】と細分化された原則があり、細分化された原則に対してさらに補充原則が設けられています。
投資家の方が特に関心を持っておくべき原則は、1の「株主の権利・平等性の確保」5の「株主との対話」になります。

詳しい内容については下記のサイトを参照ください。

トラリピインタビュー

東京証券取引所 コーポレートガバナンス・コード(2021年6月11日)PDF

コーポレートガバナンス・コードに沿った企業行動の例

ここでは、コーポレートガバナンス・コードに沿った企業行動の例を3つ挙げて見ていきます。

  1. 株主優待の廃止
  2. 政策投資株の縮減
  3. 低PBR(株価純資産倍率)の改善へ

1. 株主優待の廃止

株主優待は、一定の株数を保有しているなどの株主に対して自社製品や自社サービスの割引券などを提供する制度です。

個人株主を増やす目的で株主優待を始める企業もありますが、逆に株主優待を廃止する企業も増えてきています。そのような企業の「株主優待廃止に関するお知らせ」を見ますと、株主への公平な利益還元をその理由として挙げています。

これは、コーポレートガバナンス・コードの「原則1:株主の権利・平等性の確保」に書かれている内容に沿った行動といえます。
ただし、株主優待の具体的なことに関しては、コーポレートガバナンス・コードに特に記載はありません。

以下は、「原則1:株主の権利・平等性の確保」の抜粋です。

上場企業は、株主の実質的な平等性を確保すべきである。少数株主や外国人株主については、株主の権利の実質的な確保、権利行使に係る環境や実質的な平等性の確保に課題や懸念が生じやすい面があることから、十分に配慮を行うべきである。

出典:東京証券取引所 コーポレートガバナンス・コード(2021年6月11日)PDF

2. 政策保有株式の減縮

政策保有株は、企業が買収防止や取引会社との関係維持などを目的に保有している株式のことです。
コーポレートガバナンス・コードでは、「原則1-4:政策保有株式」の箇所で以下のように書かれています。

上場会社が政策保有株式として上場株式を保有する場合には、政策保有株式の減縮に関する方針・考え方など、政策保有に関する方針を開示すべきである。また、毎年、取締役会で、個別の政策保有株式について、保有目的が適切か、保有に伴う便益やリスクが資本コストに見合っているか等を具体的に精査し、保有の適否を検証するとともに、そうした検証内容について開示すべきである。

出典:東京証券取引所 コーポレートガバナンス・コード(2021年6月11日)PDF

この原則により、政策保有株の縮減が近年促されています。

3. 低PBR(株価純資産倍率)の改善へ

低PBRの改善についても株主優待同様、コーポレートガバナンス・コードでは、直接記載がありません。しかし、2023年3月31日の「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」(リンク先のPDFはこちら)の中で、コーポレートガバナンス・コードの「原則5-2:経営戦略や経営計画の策定・公表」が資本コストを意識した経営について示しているとしています。

以下、原則5-2の内容を引用します。

経営計画や経営計画の策定・公表に当たっては、自社の資本コストを的確に把握した上で、収益計画や資本政策の基本的な方針を示すとともに、収益力・資本効率等に関する目標を提示し、その実現のために、事業ポートフォリオの見直しや、設備投資・研究開発費・人的資本への投資等を含む経営資源の配分等に関し具体的に何を行動するかについて、株主にわかりやすい言葉・論理で明確に説明を行うべきである。

出典:東京証券取引所 コーポレートガバナンス・コード(2021年6月11日)PDF

「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」の中では、資本コストを意識していない経営の具体例として低PBR(1倍以下)を取り上げています。
そのため、低PBRの改善策が目的化して、自社株買いや増配などで純資産を減らしてPBRを改善する方法が多くの企業で行われるようになったようです。

まとめ

以上で見てきましたように、日本の上場企業は日本取引所グループが策定・改定している「コーポレートガバナンス・コード」に沿うような企業統治や行動を行っています。日本株に投資をしている方や、今後投資を考えている方はコーポレートガバナンス・コードに関心を持っておきましょう。

コーポレートガバナンス・コードは、2015年6月策定後、今まで2回(2018年、2021年)改定が行われました。過去の改定のタイミングから考えると、そろそろ改定の時期かと思われます。