2024年はNISA(少額投資非課税制度)で大きな制度改正がありました。今年(2025年)は、iDeCo(個人型確定拠出年金)でも拠出限度額の引き上げなどの改正が国会で審議されます。この記事では、2024年12月以降の変更点と、2025年度税制大綱の概要を参考にiDeCoの制度改正点について見ていきます。(記事の執筆は2025年1月7日)

  • DBなどに加入する人のiDeCoの拠出限度額が月額最大2万円に引き上げられた
  • 他制度の評価が2.75万円を超えた場合はiDeCoの掛金の減額などもありうる
  • 今後の改正案として、第1号・第2号被保険者掛金の引き上げが挙げられている

iDeCoの2024年12月以降の変更点

iDeCoの2024年12月以降の変更点は、DB(確定給付企業年金)など(*1)他の制度に加入している人(公務員含む)のiDeCoの拠出限度額が、月額最大1.2万円から、最大2万円に引き上げられた点です。
下図は、2024年12月以前と2024年12月以降の制度の違いになります。

【図表】DBなど他制度に加入している方のiDeCoの拠出限度額の変更点
DBなど他制度に加入している方のiDeCoの拠出限度額の変更点
出典:厚生労働省「制度改正に関するチラシ DB等の他制度に加入している方へ(公務員を含む)」

2024年12月以前は、全体の月額限度額(*2)2の5.5万円(月額)のうち、DBなど他の制度の掛け金相当額を一律で2.75万円として評価し、残りの2.75万円から企業型DC(確定拠出年金)の事業主掛金を引いた金額か、もしくは1.2万円がiDeCoの拠出限度額でした。ですから、企業型DCの事業主掛金額が1.55万円(2.75万円-1.2万円)より多い場合は、iDeCoの拠出限度額は、1.2万円を下回ることになっていました。

制度変更により、2024年12月以降はDBなどの他の制度掛金相当額が一律ではなくなり、個別評価になりました。そのためiDeCoの拠出限度額は、上図のように全体の月額限度額5.5万円からDBなど他の制度掛金相当額と企業型DCの事業主掛金の合計を差し引いた金額と、2万円のどちらか少ない方になりました。

これにより、DBなど他の制度掛金相当額の評価が従来の2.75万円を下回った場合、企業型DCの事業主掛金額にもよりますが、iDeCoの拠出額を最大で月額2万円に増やすことが可能となりました。

逆に、DBなど他の制度掛金相当額の評価が従来の2.75万円を超えた金額で評価された場合は、現在のiDeCoに拠出している掛金が減額調整されるケースや、iDeCoが利用できないケース(iDeCoで利用できる金額が掛金最低額の5,000円を下回る場合)が発生することもあります。

DBなど他の制度掛金相当額については、事業主(人事部などの担当部署)へ確認しましょう。

トラリピインタビュー

*1 確定給付企業年金(DB)、厚生年金基金、私立学校教職員共済制度、公務員の退職等年金給付(共済)、石炭鉱業年金基金
*2 iDeCoの拠出限度額+企業型DCの事業主掛金+DBなどの他の制度掛金相当額

iDeCoの拠出限度額引き上げに関する注意点

上記で説明した、DBなど他の制度掛金相当額の評価額を確認することも注意点の1つですが、それ以外の注意点として、今回の制度変更により掛金の拠出方法が毎月定額拠出のみとなった点があります。今まで年単位拠出を利用している人は、毎月定額拠出へ変更しないと2024年12月以降、拠出停止になってしまいます。変更の手続きを忘れずに行いましょう。

以上、DBなど他の制度に加入している人に関係するiDeCoの制度変更について見てきました。
次に今後国会で審議されるiDeCoの改正案について見ていきます。

iDeCoの今後の制度改正点(案)

以下の改正点(案)は、令和7年(2025年)度税制改正の大綱の概要(2024年12月27日閣議決定)の内容です。2025年1月7日現在、国会(衆議院・参議院)での審議および可決はされていません。

改正点(案)

  • 第2号被保険者(会社員、公務員など)の拠出限度額を、月額5.5万円から6.2万円へ引き上げ。
  • 第1号被保険者(自営業・フリーランスなど)の拠出限度額を、月額6.8万円から7.5万円へ引き上げ。

第2号被保険者に関する拠出限度額の引き上げ(月額5.5万円から6.2万円へ)は、2024年12月以降の改正で拠出額が減額調整されてしまった人には朗報といえます。
また、第1号被保険者の拠出限度額引き上げも含めて所得控除できる上限額が引き上げられるため、課税所得のある人は減税効果をより高めることができるようになります。

まとめ

以上、DBなどの他の制度に加入している人の拠出額が引き上げられるiDeCoの制度変更と、2025年度の税制改正の大綱から、iDeCoの今後の流れ(変更点)に見てきました。
この記事が、老後資金の確保を目的に資産形成をしている人の参考になれば幸いです。