やむを得ない事情や、自身のキャリアチェンジのために仕事を辞める、という経験をする人もいるでしょう。そんな時にも慌てないで済むように、もしもの時に公的な制度から受け取れるお金について把握しておきましょう。
- 失業時の生活の安定や職探しのために、雇用保険では基本手当(失業保険)がある
- 資格取得でキャリアチェンジしたい人は、教育訓練給付金を活用したい
- 再就職や就業をした後には、就職促進給付も受け取れる可能性がある
離職者の生活のために雇用保険には基本手当が用意されている
会社勤めなどで雇用保険に加入している人が離職をした場合、基本手当を受け取ることができます。
基本手当は、失職した人の生活を安定させることで再就職を支援するための給付金です。失業保険や失業手当と呼ばれることもあります。
- 1. ハローワークで求職の申し込みをしており、積極的に求職活動を行っていること
- 2. 離職日以前の2年間、雇用保険の被保険者期間が通算12カ月以上あること(特定受給資格者又は特定理由離職者の場合は、離職日以前の1年間、被保険者期間が通算して6カ月以上)
の2つの条件を満たしている人が対象となります。
基本手当の日額は原則として、離職日前の6カ月間に支払われていた賃金の合計÷180のおよそ50~80%、60歳から64歳の人の場合は45~80%となっています。この日額は年齢ごとに上限額が定められており、2024年8月1日現在は次の金額になっています。
30歳未満 | 7,065円 |
30歳以上45歳未満 | 7,845円 |
45歳以上60歳未満 | 8,635円 |
60歳以上65歳未満 | 7,420円 |
出所:ハローワークインターネットサービス「基本手当について」
基本手当の給付日数は90日~360日で、離職理由や年齢、雇用保険の被保険者期間で異なります。
雇用保険の加入期間が1年未満の場合は、原則、基本手当の給付は受けられません。
しかし、会社の倒産や解雇、契約期間の満了・心身の障害・転居や事業所移転で通勤が困難になった、そのほか障害などの理由があっての離職は、雇用保険の加入期間が1年未満でも基本手当の給付を受けられる可能性があります。
また、2025年4月からは自己都合での退職時の要件も緩和され、基本手当を受け取れない給付制限期間が1カ月に短縮。また、教育訓練などを受ける(受けていた)場合は給付制限なしで基本手当を受け取れるようになりました。
資格取得などをしてキャリアチェンジをしたい時に活用できる教育訓練給付金
再就職を目指す中で、キャリアチェンジやキャリアアップのための取り組みに挑戦する人は、ぜひ教育訓練給付金も活用してください。
教育訓練給付金は、厚生労働大臣指定の教育訓練を受講または修了した時に、その費用の一部が支給される制度です。大きく分けて、専門実践教育訓練給付金・特定一般教育訓練給付金・一般教育訓練給付金の3種類があります。
専門実践教育訓練給付金
中長期的なキャリア形成支援を目的としています。介護福祉士や看護師などの資格取得のための講座や、専門学校・大学・大学院の課程などを対象に、最大で受講費用の80%(年間上限64万円)を最長4年受けられます。
特定一般教育訓練給付金
早期のキャリア形成のための教育訓練支援を目的としています。大型自動車第一種・第二種免許や税理士などの資格取得などを目標とする講座を対象に、受講費用の50%(上限25万円)を訓練修了後に受けられます。
一般教育訓練給付金
上記2つには該当しない、就職に有利となる教育訓練が対象となります。英語検定や簿記検定などの資格取得のための講座や、大学院などの修士・博士の学位取得課程が一例として挙げられます。受講費用の20%(上限10万円)を、訓練修了後に受けられます。

さらに、2024年10月1日以降に受講を開始し、資格取得・就職をした人は、教育訓練経費の10%(年間上限5万円)も追加で支給されるように制度拡充が行われました。
支給には、受講修了後1カ月以内にハローワークへの各種書類提出が必要です。また、専門実践教育訓練給付金と特定一般教育訓練給付金の場合は、訓練対応キャリアコンサルタントのコンサルティング後、受講開始日の1カ月前までに事前手続きをしなくてはいけません。
対象となる講座は、「教育訓練給付制度検索システム」から検索できます。雇用保険の加入期間などの条件を満たしていれば、正社員だけでなくパート・アルバイト・派遣労働者の人も対象になります。
再就職が決まった時は就職促進給付の申請も忘れずに!
離職中だけでなく、再就職や就業をした後に、就職促進給付も受け取れる可能性があります。
基本手当の受給資格のある人が、安定した職業に就いた場合や事業を開始した場合に受け取れるのが、再就職手当です。再就職手当は、基本手当の支給残日数により給付率が変わります。また、再就職手当の支給対象にならない雇用形態の場合は、就業手当を受けられる可能性があります。
再就職での雇用が6カ月以上継続し、その間の賃金の日額が離職前の日額より低い場合は、就業促進定着手当の給付を受けられます。こちらも、基本手当の支給残日数が一定以上の場合に支給されます。

再就職後は何かとドタバタして忙しいかもしれませんが、生活を安定させてより早く新しい環境に馴染むためにも、忘れずにチェックしてみてくださいね。
参考URL
- ハローワークインターネットサービス「基本手当について」
- ハローワークインターネットサービス「教育訓練給付制度」
- ハローワークインターネットサービス「就職促進給付」
- 厚生労働省「教育訓練給付制度」
- 厚生労働省「令和7年4月以降に教育訓練等を受ける場合、給付制限が解除され、基本手当を受給できます」
- 厚生労働省「令和6年10月から教育訓練給付金を拡充します」