株式投資にはさまざまな戦略があります。中でも、株価の下げ相場でも利益を狙える「ロング・ショート戦略」をご存知でしょうか。ロング・ショート戦略は複雑な仕組みを使って行う高度な戦略です。しかし、近年ではロング・ショート戦略を採用する投資信託もあり、個人投資家でも利用しやすくなっています。

景気変動などによる市場全体の値動きの影響を抑える

通常の株式投資では株式が上昇するときは利益が出ますが、株価が下落する局面では損失が出てしまいます。詳細な企業分析を行って優秀な企業を見つけたとしても、景気後退により市場全体が下落するときには、その影響を受けて株価が下落してしまうこともあるでしょう。

市場全体の値動きの影響を排して、相対的に成績が良い企業のリターンを狙う手法がロング・ショート戦略です。

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株式の信用取引や為替取引、先物取引などの世界では、買いから入ることを「ロング」、売りから入ることを「ショート」と呼ぶことがあります。ロング・ショート戦略とは、買いから入る銘柄と売りから入る銘柄を分けて運用することで、株式市場の下げ相場でも利益を狙う、高度な投資戦略です。

以下、ロング・ショート戦略の手法について具体的に解説します。

「買い」と「売り」を組み合わせる高度な投資手法

ロング・ショート戦略は複数の株式の「売り」と「買い」を組み合わせることで、市場全体の値動きに関わらず、相対的に成績が良い銘柄の値上がりや、逆に成績が悪い銘柄の値下がりに着目して利益を狙うという、高度な投資手法です。

具体的には、まず割安な株価で放置されていると判断した銘柄を購入します。このときに購入した株は「ロングポジション」と呼ばれます。

さらに、市場全体の影響を排除するために、株価が割高だと考えられる企業の株式の空売りを実施します。空売りとは株式を売りから入り、後で買い戻す際、株式が下落すると利益が上がる運用手法です。空売りした株は「ショートポジション」と呼ばれます。

ロング・ショート戦略では、割安であると判断して購入した株と、割高であると判断して空売りした株価の値動きの差額が大きいほど多くの利益が得られます。上げ相場では、割安な株の株価は大きく上がり、割高な株は少ししか上がらないと考えられるため、この差額分が利益として期待できます。逆に下げ相場では、割高な株が大きく下落するほど利益が生じることになります。

しかし、割高であると判断して空売りした株価が大きく値上がりし、割安であると判断して購入した株価が少ししか上がらない、あるいは値下がりしてしまった場合は、相場全体が上昇しても損失を抱えることになります。下げ相場においても、投資対象の割高・割安の判断を見誤ってしまうと、利益を出すことはできません。

そのため、ロング・ショート戦略で利益を得るためには、市場全体の流れを読むのではなく各企業の分析が非常に重要です。

銘柄選択
ロング・ショート戦略では「割安」と「割高」の両方の銘柄を適切に選ぶ必要があるため、通常のアクティブ型投資信託以上に銘柄選択の質が問われるといえる

ロング・ショート戦略を採用した投資信託

ロング・ショート戦略は仕組みが複雑なため、個人の投資家にはハードルが高いものですが、近年はロング・ショート戦略をとった投資信託が多く提供されており、初心者でも簡単に利用することが可能です。

ただし、ロング・ショート戦略をとる投資信託が、必ずしも他の投資信託よりも有利なわけではありません。運用期間中の管理費用である信託報酬は、通常の投資信託よりもロング・ショート戦略をとる投資信託の方が高い傾向があります。

ロング・ショート戦略をとる投資信託は、通常の投資信託よりもさらに運用会社の運用能力が重要になるため、過去の実績や運用内容をしっかりと調べて購入する必要があるでしょう。また、ロング・ショート戦略は、世界経済全体の成長による恩恵が通常の株式投資より小さくなるため、資産運用の主役というよりは、下げ相場で損失を抑えるための分散投資の一環として考える方がよいでしょう。

ロング・ショート戦略の代表的な投資信託として、「スパークス・日本株・ロング・ショート・ファンド(愛称:ベスト・アルファ)」が挙げられます。2002年3月の設定以来、2021年7月末時点での運用実績は累計でTOPIXを上回っています。

【図表】『ベスト・アルファ』の運用実績(%)
ベスト・アルファ TOPIX配当込み
過去1カ月間 -1.3 -2.18
過去3カ月間 0.33 0.35
過去6カ月間 4.07 6.28
過去1年間 13.19 29.79
過去3年間 20.07 16.34
設定来 187.39 144.85

出所:スパークス・アセット・マネジメント(2021年7月末時点の月次レポート)
※投資信託の運用実績は分配金(税金控除前)を再投資したものとして算出した収益率

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