日本の製造業が直面する人手不足。少子高齢化と若い世代の製造業離れが進む中、現場を支える人材の確保は年々難しくなっています。そんな課題に対し、製造業に特化した人材派遣事業を展開するエヌエス・テックは、独自のアプローチで解決策を示しています。同社取締役の高橋広也さんに、製造業の現場で働くことの可能性と、同社が目指す「続けられるキャリア」についてお話をうかがいました。
単純作業が減り、技術力が求められる製造現場

高橋 広也さん
エヌエス・テック 取締役
まず、御社のビジネスおよびサービスについて教えていただけますでしょうか。
高橋さん 弊社は1973年の創業以来、52年にわたって一貫して「ものづくりで社会に貢献する」という思いを持ち続けてきました。私自身51歳なので、会社より1年後輩になりますが、自分が小さい頃のものづくりといえば、ラインを引いてテーブルを並べて、工具を持って組み立てて次の人に渡してという人海戦術でした。そこに労働力を提供するサービスを50数年続けてきました。
ただ、この半世紀の間に製造業を取り巻く環境は大きく変わりました。高度成長期以降、円の価値が上がり、日本で物を作るコストが高くなったことや、世界に販路を求めたいということで、多くの製造メーカーさんが海外に出ていったんですね。30年、40年前からの流れです。
環境の変化が、御社のビジネスにも影響を与えたのでしょうか。
高橋さん そうですね。製造現場の単純作業がどんどん中国や東南アジアに移っていきました。さらに国内の製造現場では、単純作業はロボットなどの生産設備に取って代わられています。とはいえ、その設備を24時間安定して稼働させるためのメンテナンスだけは、どうしても人がやらないといけない仕事です。そしてそれは、きのうまで別の業界で働いていた人には簡単に任せられない、難しい仕事でもあります。
御社の転機となった出来事はありますか。
高橋さん 1番の転機はリーマン・ショックでした。あそこで、私たちの会社自体も規模としては4分の1ぐらいになってしまったんです。そこから現在に至るまで、メーカーさんの工場では構造改革やリストラがあって、特に間接部門と呼ばれる人たちを一定程度リストラした会社さんが多いんですよ。
リーマン・ショックから立ち上がろうとした時に、工場はどんどん生産量を増やしていく。でも設備をメンテナンスする人たちを削減してしまったために、そこの人員が足りない。定期メンテはできるけれども、何かトラブルが起きると設備を買った商社やメーカーに連絡を取って直しに来てもらわなきゃいけない。その間、設備は動いていないので物も作れないんですよね。
それが大きな課題になったわけですね。
高橋さん 当時、リーマン・ショックから3~4年後ぐらいに営業していてよく言われたのが「設備保全の経験者いない?」というものでした。でもそういう人たちは、もう転職しちゃってるんですよ。求人を出しても、希望する賃金が年収で300万円ぐらいずれるんです。そういう技術を持ってる人は、それなりの年収を求めますから。
じゃあ私たちの方で未経験者を、ある一定程度の経験のところまで引き上げて、それで派遣をして働いてもらおう。企業の設備保全の一翼を担ってもらおうと考えたんです。同業の派遣会社さんでもそういうことをやり始めたところがあって、この考えは間違ってないなと思いました。

未経験者を育成する「トレーニングセンター」
そうした取り組みの具体策として、名古屋市に「東海トレーニングセンター」を開設されました。
高橋さん 構想自体は5年前からあったんですが、コロナ禍で様子を見ざるを得なくて、オープンさせたのが2年前です。
工場で働くとなると、未経験の人は「自分にできるんだろうか」と二の足を踏んでしまう。建築土木でも、工具の使い方、道具の使い方、呼び名、安全に関することなど、勉強しないと勤められません。工場もいっしょです。
東海トレーニングセンターでは、自動車の完成工場で働く人たちに対して3日間、安全衛生から工具の説明、実際にインパクトレンチを持ってビス止めの練習までやったうえで配属しています。未経験でも大丈夫ですよ、という体制を作っているんです。


2024年3月に開所した東海トレーニングセンター。自動車工場で働くための実技を学べる
昨年11月には仙台に「東北トレーニングセンター」を開所しました。名古屋では自動車関連、仙台では半導体やデバイス関連のスキル取得を目指せるカリキュラムも組む予定です。
「保全技術者」の育成にも力を入れているとうかがいました。
高橋さん はい。トレーニングセンターでは、国家資格「機械保全技能士」の取得も全面的に支援しています。現在3級取得が4名、2級取得が4名と、少しずつ実績が出ています。今後もさらに取得者が増えるように取り組んでいます。
研修でスキルを身につけて、さらに国家資格の2級、3級を取ることで、さらに付加価値がつきます。それによって派遣料金を高くできれば、その分、派遣社員に対して支払える給料も増えますし、会社としての1人あたりの売り上げも増えます。



















