テレビ、ラジオ、動画配信も含めて様々なコンテンツの台本や脚本を執筆する放送作家&脚本家が700人以上所属する日本放送作家協会がお送りする豪華リレーエッセイ。ヒット番組を担当する売れっ子作家から放送業界の裏を知り尽くす重鎮作家、目覚ましい活躍をみせる若手作家まで顔ぶれも多彩。この受難の時代に力強く生き抜く放送作家&脚本家たちのユニークかつリアルな処世術はきっと皆様の参考になるはず! 
連載第102回は、「めざましテレビ」や「グッド!モーニング」など人気番組を数多く手掛ける、放送作家の安野智彦さん。

日本放送作家協会リレーエッセイ一覧はこちらから

「組織の息苦しさ」

安野智彦さんの写真
安野智彦
放送作家
日本放送作家協会会員

僕は放送作家に向いているのか?」30年前、業界に足を踏み入れて以来、ずーっと考えていることです。それを痛感したのが事務所に入ってすぐ、ニッポン放送のタモリさんの番組に見習いとして放り込まれたときのこと。先輩作家たちのプレゼン能力の高さ、企画の発想力に圧倒され、ただただ呆然。バラエティー番組の作家としての能力がないことをいきなり思い知らされました。

新しいNISAの“裏技”教えます! ニッセイアセットマネジメントの情報発信&資産運用アプリ

幸い、所属していた事務所にはスポーツ番組を中心に活躍している先輩作家がいて、その方のコバンザメとなり、ナレーションの書き方、ドキュメンタリーの構成、会議での振る舞いなどを勝手に学ばせてもらいました。その方のマネをしてきたおかげで、現在も仕事が途切れることなく続いています。

ただし、常に引っ掛かっているのが、「番組は組織で作る」ということ。作家はその番組の駒のひとつにすぎません。自信満々に出した企画をボツにされたり、ナレーションの書き直しを命じられたり、組織で働いている以上、自分の思い通りになったことなんて一度もなし。組織の息苦しさを感じながら、自分の思い通りになる「何か」を探していたのです。

組織の歯車やパズルのピースのイメージ
番組は組織でつくられ、自分の思い通りにならない息苦しさを感じていた

「個として生きる」

その頃、「報道ステーション」のスポーツコーナーを月~金で担当していました。スタッフの多い番組ゆえに歯車感がハンパありません。「自分はこの組織に必要なのか?」と思い悩む日々。そんな精神状態を正常に戻すのが、週末の餃子店巡りと餃子づくりでした。そもそも餃子が大好きで、調味料の配分、肉と野菜の比率、皮の包み方などを徹底研究し、徐々に理想の味に近づけていったのです。

手作り餃子をご近所さんに試食してもらったところ評判も上々。調子に乗って餃子店を開くことを考え始めました。実はこれこそ、自分が探していた「何か」だったのです。

2016年春、JR神田駅から徒歩1分の場所に5坪の店舗を借りました。しかしながら、そこは2階。予算が少なかったため「好立地・悪条件」の物件。飲食店にとって2階は絶対的に不利です。そこで餃子だけではない、もう一つの軸が必要になりました。

手作り餃子のイメージ
手作り餃子を褒められて、調子に乗って店づくりに乗り出した

思いついたのが、80年代カルチャーを全面に押し出した店作りです。現在53歳の私が青春時代を過ごした80年代、当時のレコードジャケット、ポスター、グッズなどを詰め込み、店内を博物館のようにしてみました。店名もわかりやすく「80年代酒場 部室」。部室のように狭い店なのでそう名付け、コンセプトは「餃子とハイボールと歌謡曲」。ターゲットは同世代のサラリーマンに絞りました。

開店当初、1週間誰も来ない……なんてこともありましたが、2年目、3年目と個性的な店を面白がってくれる客が増加。店を経営していく中で生きたのが放送作家として培ってきた「客(視聴者)を楽しませる」ことでした。イントロクイズ大会、80年代クイズ大会など、客が主役になれるイベントを開催すると大好評。週末は予約なしでは入れない店となってしまいました。

店作りは、番組作りと似ていて、私はお金を管理するプロデューサーであり、イベントを考えるディレクター&放送作家でもあり、店内を彩る美術、音響、照明さんでもあるのです。まさにたった一人でできる「番組」を作ってしまいました。

この春で8年目。放送作家の仕事もしながら、二刀流の生活は続きます。

次回は、紅藤季音さんにバトンタッチ!

ぜひ、お越しください

こんな店です!

「80年代酒場 部室」店内写真1
「80年代酒場 部室」店内写真2

店名:80年代酒場 部室
住所:東京都千代田区内神田3丁目21-6 森山ビル 2F
電話:070-3138-1980
営業:月~金 19:00~23:00
※詳しくはFacebookをご覧ください

『生餃子持ち帰り店「平井餃子研究所」』店写真

さらに2021年11月、もう1店舗、増えました。生餃子持ち帰り店「平井餃子研究所」です。

住所:東京都江戸川区平井5-21-5
電話:080-3155-1980
営業:水~日 11:00~19:00(月・火は自動販売機で冷凍生餃子を販売)
※冷凍餃子の通販もやっています。詳しくはインスタグラムをご覧ください

一般社団法人 日本放送作家協会
放送作家の地位向上を目指し、昭和34年(1959)に創立された文化団体。初代会長は久保田万太郎、初代理事長は内村直也。毎年NHKと共催で新人コンクール「創作テレビドラマ大賞」「創作ラジオドラマ大賞」で未来を担う若手を発掘。作家養成スクール「市川森一・藤本義一記念 東京作家大学」、宮崎県美郷町主催の「西の正倉院 みさと文学賞」、国際会議「アジアドラマカンファレンス」、脚本の保存「日本脚本アーカイブズ」などさまざまな事業の運営を担う。

メルマガ会員募集中

ESG特集