雇用安定化の施策で離職率低下と給与増を実現
早期退職率が5%程度と低く抑えられているということですが、それを実現できる御社の強みはどこにあるのでしょうか。
高橋さん 5年前から取り組んできた雇用安定化の施策が大きいですね。2020年の時点では、働いていただいてる派遣社員のうち、雇用契約に期限のある有期契約の人たちが全体の73%を占めていたんです。1カ月の退職率が7.7%でした。1000人いたら、1ヶ月で77人辞めてしまうという状態です。
そこで、1年以上勤務歴がある人たちに対して「製造キャリア正社員」という正社員への雇用転換を進めました。時給ではなく月給で働き、賞与も出る、60歳まで働けば退職金も出る、そういう制度です。
その結果はいかがでしたか。
高橋さん 2025年12月時点で、有期契約の人たちの割合が73%から43%に減りました。逆に無期雇用の人たちが27%から57%に増えたんです。退職率も7.7%から5.4%に下がりました。
有期で3カ月ごとの契約だと、働いている人には「もしかしたら次の3カ月で終わるかもしれない」という不安があります。正社員、無期雇用に転換していくことで、派遣先での勤務は終わるかもしれないけれども、雇用が切れることはないという安心感が生まれます。
待遇面での変化はいかがでしょうか。
高橋さん 給料も大事ですよね。2020年時点で、派遣社員の実際に支払われた給料の平均が22万5874円でした。これが2025年11月の実績では、26万5025円になっています。5年前から月額で3万9151円、率にして17.3%増えたんです。
一方で、厚生労働省の毎月勤労統計調査を見ると、全労働者の総支給額平均は2020年が31万8299円、2024年速報値が34万600円で、増加額は2万2301円、増加率は7.0%でした。弊社の派遣社員の給料は、全労働者平均と比べてもだいぶ改善されていると言えます。
ただし、給料の金額としてはまだまだ低いというのが実情です。だからこそ、知識やスキルをつけることで従業員の付加価値が増し、給料も上がっていくという仕組みを作っていきたいんです。

製造業に特化した人材派遣事業を行うエヌエス・テック
製造業でキャリアを形成できる環境を
生成AIの登場などで、いわゆるホワイトカラーの労働環境が今後変わっていく可能性があります。一方で、海外では「ブルーカラービリオネア」という言葉も生まれているように、製造業などの現場で必要となる技能や、そうした技能を持つ人たちの価値が、現場における人手不足や高齢化も手伝って相対的に高まっているようです。このような時流の変化と、御社のビジネスとの親和性をどのように考えていますでしょうか。
高橋さん まさにその通りだと思います。昔は生産設備と言っていたものが、今はロボットになってきています。そうすると、その設備なりロボットなりが24時間安定して稼働するということを保守、メンテナンスする仕事は、どうしても人がやらなきゃいけない。設備が進化すればするほど、それをメンテナンスできる教育の内容も整備していく必要があります。
AIやIoTの進展によって従来の働き方や技術は大きく変化していくでしょうけど、私たちはその変化を恐れることなく、進化する産業を支えるパートナーとして挑戦を続けていきたいと思っています。
製造業の持続可能性を確保するには、現場で働く人たちの長期的なキャリア形成が欠かせないかと思います。正社員登用からさらに先を見据えたキャリア形成、ワークライフバランスの実現などに向けて、今後どのような取り組みを考えているのでしょうか。
高橋さん 私たちの会社の大きな特徴は、転職せずに社内でキャリアチェンジできることなんです。普通、一企業で行き詰まったら、我慢して勤め続けるか、辞めるかの選択になりますよね。でも、エヌエス・テックの雇用の中で、働く場所も違う、上司も違う、環境も違うところに移ることもできます。
例えば、今は車の製造をやっているけど、半導体をやってみたい、設備保全をやってみたい、営業や採用の仕事をしたい、本社の管理部門で経理や総務をやりたい……。従業員との面談を通じて、全員が希望通りとはいきませんが、そういう道を用意しています。
長く働き続けられる環境づくりという意味でも、キャリアの選択肢があるのは重要ですね。
高橋さん そうなんです。50歳になってまでラインの真ん中でインパクトレンチを持って腰曲げてやっていくかっていうと、しんどくなってくるわけですよ。だから保全などのスキルを身につけていくことで、60歳、65歳というところまで働いていける。
それから、3カ月の雇用契約を反復している人と、正社員で2年勤めてる人と、マンション買いましょう、車買い替えましょう、ローン組みましょうって時、どっちが通りやすいでしょうか。やっぱりそういうことも考えてあげて、雇用を安定させていくことで、その人の将来がいい方向になっていける。そういうことをもっと認知させていきたいんです。
働きやすさという面ではいかがでしょうか。
高橋さん 20年ぐらい前はワークライフバランスなんて言葉すらなくて、夜10時朝5時なんて普通だったような感じですけど、今は全国21拠点で働く従業員の時間外労働時間の平均が、月21~22時間なんですよ。ずいぶん変わったなって実感しています。

「製造業」と「派遣」のイメージを変えたい
地方での人材確保についてはいかがでしょうか。
高橋さん 都市部以外の地方では労働人口が右肩下がりで減っていて、例えば秋田県なんかは2050年に財政が持たないかもしれないとまで言われています。でも工場はそういう地域にあるんですよね。
そのような地域で、工場に通勤できる場所に住んでいて、今は仕事してない人を探そうとしても、過疎が進む地方であるほどいないんです。
そこで私たちが、1年間なら1年間、3年間なら3年間、工場の近隣にアパートを借りて、その地域外に住んでらっしゃる方を採用して、そこに住んでいただいて労働力を提供しています。
地方では高校生の数が圧倒的に少なくなっていて、進学率も高いので、高卒の人材を採用できません。大卒も、県内に大学が3つしかないという状況だと取れない。そういう背景があって、この5年ほど、私たちの派遣社員の中から「この人を雇いたい」と言われることがじわじわ増えてきています。
最後に、これから製造業の現場で働くことを考えている方々にメッセージをお願いします。
高橋さん 大学生の就職人気ランキングを見ると、20年ぐらい前は製造メーカーが上位に入っていましたが、直近ではベスト10になかなか入ってこなくなっています。転職先としても、製造の現場、建築土木、トラックの運転手などは不人気です。
でも、こういう仕事をする人がいないと、私たちの生活は豊かになっていかないと思うんです。道路ができない、建物が建たない、車がつくれない、バスが動かない、物が運べない。そういう根底を支える仕事です。一方で、製造業経験者の数も減ってきており経験者の確保が難しく、それが労働力不足の一因になっています。
だから、私たちは未経験でも安心して現場で働けるように初期の研修をきちっとやって、工場に派遣していく。そして転職活動をせずとも、うちの会社の中でキャリアチェンジできる。そういう会社があることを、もっと知ってもらいたいんです。
「派遣」という言葉自体が、イメージの悪いワードとしてとらえられることもありますが、私たちが考える派遣業のあり方は決して「3カ月経ったらやめてください」というものではありません。長く働くことも可能だし、期間を決めて働くこともできる。私たちがそういう場をつくっていることを、もっと世の中に伝えていきたいですね。



















