テレビ、ラジオ、動画配信も含めて様々なコンテンツの台本や脚本を執筆する放送作家&脚本家が700人以上所属する日本放送作家協会(放作協)がお送りする豪華リレーエッセイ。ヒット番組を担当する売れっ子作家から放送業界の裏を知り尽くす重鎮作家、目覚ましい活躍をみせる若手作家まで顔ぶれも多彩。この受難の時代に力強く生き抜く放送作家&脚本家たちのユニークかつリアルな処世術はきっと皆様の参考になるはず!
連載第168回は、前回に引き続きボーカリスト、DJとしても活動する鮫肌文殊さんが登場。地上波のテレビ番組からYouTubeの世界まで、その制作現場のお金事情を鮫肌さんが解説する。
「……弁償してくれるかな?」
芸人の宮迫博之さんがYouTubeで、番組のセットにかかる費用についてこう話していたことがある。
YouTubeをやり始めて気がついたのは「階段の4段と7段、たった3段の差で階段ってそんなに高いのって。ウン百万の違い」「なぜかと言うと、上げると全部底上げしなくちゃいけないから、その分お金がかかる」。
地上波のテレビに出ていた頃は「新番組を立ち上げる時にセットの話になったら、ここをこうして欲しいとワガママ言うてた。(かかる費用を)知らんから」と。
地上波のテレビってセットひとつ建て込むのにも百万単位のお金がかかっているのだ。いくら制作費が削られてもそこは変わらない。
その昔、担当したゴールデンのレギュラー番組で私が企画したゲームコーナーが、収録はしたもののイマイチ跳ねなくて1回限りで打ち切りになった際、ディレクターに半ばキレ気味に言われた。
「サメちゃんの考えたこのコーナーのスタジオセット代に1,000万円かかったんだよねー……弁償してくれるかな?」
冗談めかした口調ながら、目は1ミリも笑っていなかった。今でもトラウマになっている。
サブスク1年やって、総印税が2,000円
とかく番組制作にはお金がかかる。
最近、某局で看板女性アナウンサーを起用したいと構成会議で提案した時もプロデューサーに面と向かってこう言われた。
「鮫肌さん、簡単におっしゃいますけど、あのひとのスタイリスト代だけでいくらか知ってますか? 1回20万円ですよ!」
浮いたお金で若手タレントを呼べるのであった。
実は私、高校で組んだパンクバンドを未だにやっている。バンド名は捕虜収容所。今年で結成42周年。インディーズながらアルバム3枚、7インチアナログシングル1枚を発表、コンピレーション盤にも何枚か参加している。先ごろ、新宿ロフトで開催されたパンクフェスにも出場した。
そんなうちのバンド、配信全盛の時代、CDを作っても全く売れないので1年ほど前に音源をサブスクで解禁してみた。
皆さんも聞いたことがあると思うが配信でミュージシャンに入るお金、プラットフォームで差はあるものの1再生あたり0.1円から0.3円の間。10億再生とかいくYOASOBIや米津玄師クラスじゃなければ、月に数百回の再生数だと印税なんてほぼゼロに等しいうえ配信へのエントリー費用に年間2000円少々取られる。中には聴いて気に入ったのかダウンロード購入してくださる殊勝な方もいて、それが1曲あたり90円。昨年1年やってみての総印税がちょうど2,000円ほどでトントンの結果に。
いったいミュージシャンが本職の方々はどうやって暮らしているのか? 1年配信をやってみてあまりの儲からなさに愕然とした次第。
「お金が無い、お金が無い」が口癖になっている昨今のテレビ業界ながら、なんやかんや言ってテレビ(特に地上波)は恵まれている。
今一度原点に立ち返り、褌締め直してもっと面白い番組を作らねばと思う。
次回は山名宏和さんへ、バトンタッチ!
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放送作家の地位向上を目指し、昭和34年(1959)に創立された文化団体。初代会長は久保田万太郎、初代理事長は内村直也。毎年NHKと共催で新人コンクール「創作テレビドラマ大賞」「創作ラジオドラマ大賞」で未来を担う若手を発掘。作家養成スクール「市川森一・藤本義一記念 東京作家大学」、宮崎県美郷町主催の「西の正倉院 みさと文学賞」、国際会議「アジアドラマカンファレンス」、脚本の保存「日本脚本アーカイブズ」などさまざまな事業の運営を担う。