現役証券アナリストの佐々木達也さんが、株式市場で注目度が高い銘柄の強みや業績、将来性を解説する本連載。第50回は、超高速回転技術に強みを持ち、歯科医療用製品などの精密機器を手がける、栃木県鹿沼市に本社を置くナカニシ(7716)を取り上げます。

  • ナカニシはハンドピースで世界シェア1位。技術だけでなくデザインにもこだわる
  • 海外売上高比率が80%を超えるグローバルニッチトップ企業。欧米で高い支持
  • ナカニシは今期の業績予想を上方修正。9月8日には上場来高値を付ける

ナカニシ(7716)はどんな会社?

ナカニシは高速回転機器のメーカーで、東証スタンダード市場に上場しています。

超高速回転技術をコアとし、ハンドピースと呼ばれる歯科医療用の切削器具では、世界シェアナンバーワンです。
その他にも外科手術に使用されるドリルや、歯石を取るための超音波スケーラー、インプラント治療用のマイクロモーターなどの医療機器、自動車・飛行機のエンジン部品などの精密加工部品も手がけています。

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同社の前身は、1930年に創業者の中西敬一氏が歯科用のハンドピース製造を手がける「中西製作所」でした。戦後、1953年に社名を「中西歯科機械製作所」とし、58年には、NSK(NAKANISHI Shika Kikai)マークを冠した製品を自社ブランドとして販売を始めます。

その後は全世界に拠点をつくり販売力を強化しました。また、デザインにもこだわることで見た目の美しさと機能の高さを融合することでブランドとしての価値を高めることに成功しました。

さらに海外ではその技術力が評価され、現在では世界140カ国に製品を輸出し、海外売上高比率が80%を超えるグローバルニッチトップ企業となっています。中でも欧州や北米向けの売上高比率はそれぞれ3割、2割程度と欧米圏で高い支持を受けています。

歯医者
ナカニシの祖業は歯科用のハンドピース製造。現在では歯科医療用製品にとどまらず、エンジン部品なども手がけている(写真はイメージです)

ナカニシ(7716)の強みは?

ナカニシの強みは、超高速回転技術や超音波技術など技術力への徹底したこだわりです。
歯科用のハンドピースなどの製品は、ミクロン単位まで考慮して組み上げた製品を、熟練した職人の研ぎ澄まされた耳と手でチェックするというこだわりにより、高付加価値の製品を生み出しています。

トラリピインタビュー

特徴的なこととして、部品などのほとんどを自社で内製しています。部品を作るための専用の道具や加工装置なども内製することにより、コスト面だけでなく高い品質を担保しています。

ナカニシ(7716)の業績や株価は?

ナカニシは8月21日に今期2023年12月期連結決算の予想を上方修正しました。
今期は売上高が前期比30%増の631億円、営業利益が8%増の166億円を見込んでいます。米国のデンタルチェアメーカーに追加出資し、完全子会社化することによるものです。

8月7日に発表した2023年1~6月期の上半期決算は、売上高が前年同期比16%増の282億円、営業利益が1%増の82億円と増収増益でした。歯科事業や外科事業で国内やアジア向けが好調だったことが背景となりました。
同時に中間配当と期末の配当予想も増額するとともに、25億円、100万株を上限とした自社株買いを発表し、株主還元も強化しています。

足元では、コロナ禍やサプライチェーンの混乱による部品不足の影響が後退、生産体制を強化し、製品の増産に取り組んでいます。
下半期にかけては、従来品よりも切削パワーを強化し、歯科治療の時間を大幅短縮で来る新製品の歯科用ハンドピースを市場投入し、世界の各市場で拡販攻勢に出る構えです。

【図表】ナカニシ(7716)の株価(2022年9月~直近、週足)
ナカニシ(7716)の株価

9月8日の終値は3720円で投資単位は100株単位となり、最低投資金額は約38万円です。

世界的なインフレや中国の景気不安で他の精密機器株の株価が伸び悩む中でも、ナカニシの株価は底堅く推移しています。日足、週足、月足ともに右肩上がりのきれいな株価チャートとなっており、8日に上場来高値3780円を付けています。
足元のドル円の為替レートも円安基調が続いており、海外売上高比率の高い同社にとって追い風となっています。

日経平均株価が3万2000円~3000円のレンジで推移する中でも、相場全体の基調に左右されず上昇基調を保っているのは、技術力や稼ぐ力が国内外の投資家に評価されているとみられます。引き続きの高値更新を期待しています。

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