社会保障に関する変更が続く現在、これまで以上に制度への注目度は高まっています。一般の方が気になるのは「いざというときに自分はいくら受け取れるんだろう」「もしも受け取れる額が少なかったらどうしたらいいんだろう」ということですよね。今回は、老後に受け取れる老齢年金額の決まり方について解説していきます。
- 公的年金の受取額は物価や賃金の変動率などを踏まえるため年度によって異なる
- 年金受取額の概算を知りたい場合は厚労省の「公的年金シミュレーター」を活用
- 必要に応じて公的年金と私的年金を掛け合わせて備えることを検討したい
公的年金の受取額は毎年度変更される
「年金をいくら受け取れるのか」――。この答えは「その年度によって違う」となります。
公的年金の受取額は毎年、物価や賃金の変動率を踏まえて改定が行われています。
令和7年度の場合は、物価変動率が2.7%、名目手取り賃金変動率が2.3%と上昇しており、そこに社会情勢に合わせて給付水準を調整するマクロ経済スライド調整が入り、前年度比1.9%の引き上げになります。
ここからさらに、加入していた年金が国民年金の場合は「保険料を納付した月数」、厚生年金の場合は「現役時代の収入額と保険料を納付した月数」によって変動していきます。
令和7年度から多様な年金額例の提示がスタート
では、その改定を踏まえるといくらもらえるのかというと、厚生労働省が毎年公表しているモデル年金額が参考になります。令和7年度の金額と前年比は、以下の通りです。
令和7年度 (月額) | |
---|---|
国民年金 (老齢基礎年金(満額):1人分) |
69,308円 (前年度比+1,308円) |
厚生年金※ (夫婦2人分の老齢基礎年金を含む 標準的な年金額) |
232,784 円 (前年度比+4,412円) |
※男性の平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)45.5万円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準
出典:厚生労働省「令和7年度の年金額改定について」より一部抜粋
しかし、例えば会社勤めの単身の人などは、この金額を見てもイメージが付きづらいかもしれません。そこで、今年度から厚生省が提示している「多様なライフコースに応じた年金額」も参照してみましょう。
令和7年度 (月額) | |
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厚生年金期間中心 (20年以上)の男性※1 |
173,457円 (前年度比+3,234円) |
厚生年金期間中心 (20年以上)の女性※2 |
132,117 円 (前年度比+2,463円) |
※1 平均厚生年金期間:39.8年 平均収入:50.9万円(賞与含む月額換算。以降同じ。)基礎年金:68,671円 厚生年金:104,786円
※2 平均厚生年金期間:33.4年 平均収入:35.6万円 基礎年金:70,566円 厚生年金:61,551円
出所:厚生労働省「令和7年度の年金額改定について」より一部抜粋
このケースを見ると、どちらも現役時代の平均収入の30%程度が年金受取額の水準になっています(あくまでモデルケースのため、実際の金額や割合とは異なります)。
人によって多いとも少ないとも感じるかもしれません。どちらにしろ、具体的な金額が出てくるとイメージがしやすくなるのではないでしょうか。
加入期間が上記より長かったり収入が多かったりすれば、上記よりも受け取れる年金額は増える可能性もあります。
ただし、それは逆もしかりです。「厚生年金への加入期間が短い」「収入が少ない状態が続いていた」「フリーランスなどのために国民年金にしか入っていなかった」などの場合には、受け取れる年金額が上記より少なくなることもあり得ます。
先に書いた通り、将来もらえる年金額は、年金の保険料納付月数と現役時代の収入が影響します。老後の生活を考えるのであれば、健康で長く働くこと自体が老後の備えにもつながる、という意識を持つことから始めるのが良いかもしれませんね。
より自分のケースに近い場合の受取額を知りたいのであれば、毎年届く「ねんきん定期便」の内容を基に厚生労働省が用意している「公的年金シミュレーター」で試算ができます。
公的年金制度についてはいろいろな議論がありますが、現時点では老後の生活費の土台になるものであることは変わらないと考えて、まずは自分の現状とそこからわかる将来のことに焦点を当ててみましょう。
公的年金・私的年金の掛け合わせも考える
収入を増やしたり厚生年金への切り替えが難しかったりする状況の人もいるでしょう。
そうした場合には、公的年金と私的年金の掛け合わせで備えるのも方法の一つです。
私的年金には、「確定給付企業年金(DB)」「企業型確定拠出年金(企業型DC)」「国民年金基金」「個人型確定拠出年金(iDeCo)」など、いくつかの種類があります。
DBと企業型DCは、制度を利用できる会社に所属している社員向けのもの、国民年金基金はフリーランスなどの人向けのもの、そしてiDeCoは会社員・フリーランスどちらも原則加入できます。
どのような手段を取るにしろ、老後の備えはコツコツと積み上げていくことが基本になります。
早いうちから考えることが将来の自分を助けることにもなりますので、自分のライフスタイルや家計状況にあった方法を検討していってくださいね。