「預金なら安心」って本当なの? 「元本保証」って、実際に何を保障してくれるの? 実は、現金にもリスクが潜んでいるのです。本連載ではそんな「現金のリスク」を切り口に、お金のほんとうの価値を守るための資産運用について考えていきます。今回は、NISAの対象外ではあるものの、利率の上昇で注目が集まる「個人向け国債」の活用法を考えます。

  • 個人向け国債の利率は0.9%超に。価格変動も為替変動も手数料もないのが魅力
  • 利率は消費者物価指数の数字に劣るため、実質ベースで資金の目減りが避けられない
  • 個人向け国債の利息を元本としてNISAで投資する方法も考えられる

世界という視点では、いわゆるトランプ関税は終わりが見えません。本稿執筆時では、ロシアとウクライナの戦争は未だ続いています。一方、国内では物価高騰、中でもお米の値上がりに歯止めがかかりません。同じく本稿執筆時では、やや円高の傾向にあり、原油1バレル当たり57ドルですので、電気代の値下がりに期待してしまいます。

このような状況では、「もはやNISAどころではない」とお考えの読者もいらっしゃるかも知れません。ではNISA以外に、どのような選択肢が考えられるのでしょうか? 本稿では、個人向け国債を考えることにします。

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個人向け国債の特徴

個人向け国債は885の金融機関や証券会社で取扱いがあります。もっともネット証券やネット銀行では取扱いのない場合もありますので、確認が必要です。個人向け国債の利率は、4月の数字ではありますが、変動10年や固定5年ではそれぞれ0.9%を超えており、食指が動く利率になっていますね。

【図表1】個人向け国債の利率(税引き前)
2025年 5月 4月 3月 2月 1月
変動10年 0.84% 0.93% 0.92% 0.83% 0.75%
固定5年 0.83% 0.95% 1.03% 0.89% 0.77%
固定3年 0.66% 0.78% 0.87% 0.74% 0.62%

最新の個人向け国債の利率はこちら

個人向け国債には価格変動も為替変動もありませんし、売買に伴う手数料もありません。つまりリスクをとることなく、また手数料を払うこともなく、元本(=投資資金)と時間を指し出すだけで0.9%超の利息を得ることができるのです。これらがNISA口座を活用した株式や投資信託にはあり得ない魅力です。

これからも「金利が上がるかも知れない」と思えば、10年変動の個人向け国債という選択肢もあります。
10年変動は、半年ごとに利率が見直されます。では「将来、金利が上がるかもしれないが、下がる可能性も否めない」という方は、どうすれば良いでしょうか? 個人向け国債は「1万円以上、1万円単位」での投資が可能ですから、10年変動と5年固定の両方に投資する、という選択肢もあり得ます。

個人向け国債の留意点

しかし、この0.9%超の利息ですが、これは税込みの数字です。個人向け国債はNISAの対象外ですから、利息という利益に対する課税を考えなければなりません。
2025年4月に募集した個人向け国債の、20.315%の税金を指し引いた利率は、変動10年で0.7410705%、固定5年で0.7570075%です。

次いで考えなくてはならないのは、個人向け国債は預金と異なり「複利しない」という点です。つまり、得た利息が「いつの間にかなくなってしまう」ということもありうるのです。

最大の留意点は、個人向け国債の利率が消費者物価指数の数字には及ばないことです。では消費者物価指数の数字に及ばないことの何が問題なのでしょうか?
消費者物価指数の数字は、そのまま「物価の変動」の目安と考えても良いでしょう。消費者物価指数の数字がプラスであれば、物価の平均がその分上昇したと考えられます。つまり「個人向け国債のみ」の運用を続けると、額面はともかく、実質では「資産の目減り」が避けられないことになります。

【図表2】2025年3月の消費者物価指数(対前年)
総合指数 3.6%
生鮮食品を除く 3.2%
生鮮食品及びエネルギーを除く 2.9%

個人向け国債から得る利息でNISAの活用を

さて、個人向け国債への投資を検討される方の多くが魅力を感じるのは「発行元が日本政府」という安心感です。ですので、個人向け国債への投資というと、まとまった金額での投資に躊躇がないようです。
例えば個人向け国債への投資額が2000万円ですと、税引き後の利率が0.7%であれば、年間14万円の利息を受け取ることができます。

先述のとおり、個人向け国債は複利しませんから、この利息でNISAを活用するのは、いかがでしょうか? つまりNISAの投資元本を「個人向け国債の利息」とするのです。

ちなみに、個人向け国債の利息は1年分の利息を2回に分けて、つまり半年ごとに利息を受け取ることもできます。つまり、発行月の異なる個人向け国債を6本投資すれば、毎月、利息を受け取ることも可能なのです。ということは、個人向け国債の利息で「NISAのつみたて枠」への投資も可能です。

なお、個人向け国債の利息で積立投資を検討される方への留意点ですが、個人向け国債は発行月が異なれば、利率も異なります。つまり、毎月「同じ利子の額」ではないことに留意しましょう。